テラーノベル
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僕はチャビー。海に囲まれた孤島に暮らしている。孤島と言ってもそこまで小さくはない。東京都ほどの大きさはあるだろう。
「今日も元気ね。長生きしなさいよ。お父さんみたいに早死しちゃダメよ」
そうご主人様は僕の顔を撫でる。ご主人様はいつも僕に言葉をかける。お父さんが亡くなってからずうっとずうっと。
ご主人様と僕が出会ったのは5年前。僕は元々野良猫で幼い頃から過酷な生活を強いられた。人は怖かった。僕のお母さんを殴ったから。僕のお母さんは何もしてないのに。僕ら兄妹に人間は怖いものだと植え付けたのはそれだ。お母さんは殴られた後すぐに息をしなくなった。まだ僕らは2ヶ月だった。そんなときにご主人様と出会った。警戒する僕らを簡単に抱き上げると僕らを家へと入れた。その時、妹や姉とは別れた。他の家へと引き取られたのだ。それからというもの僕の生活は一変した。食事もまともに取れない生活から毎日存分に取れるようになってふかふかのベットで寝れて。幸せだ。この家には元々二人いた。ご主人様とその旦那さん。旦那さんは去年突然いなくなってしまった。それから僕はご主人様と二人で暮らしている。
ある日のことだった。その時は暑くも寒くもなかった。まあ窓が開いていたからなのかも知れない。家は海に近いため窓を開ければ涼しい潮風が吹いてきて心地よいのだ。この日も僕は開いている窓の近くを陣取り心地よい潮風に当たっていた。ご主人様はいつものようにミシンで作業をしていた。去年頃だろうか僕にミシンで縫ったマフラーのような首に巻くものをプレゼントしてくれた時があった。それはとても暖かく気持ちよかった。
そんなとき。コトという音が聞こえ僕は家の中を走り回った。コトという音がなってからまもなくゴーーという音とともに大きな揺れを感じた。ミシンに夢中だったご主人様もその揺れを感じるとすぐにやめた。僕は怖くて怖くてたまらなかった。だから走り回った。家の中にある小物はどんどん床へ落ち大きな店もどんどん僕の方へ近づいているような気がした。揺れは収まらず僕は思わず開いている窓から家を飛び出した。そして、どんどん家から離れた。そんなのお構い無しだ。
だんだん揺れが収まり僕は足を止めた。そして周りを見渡す。僕はいつの間にか知らないところに来ていたのだ。近くにある家も見たことのない建物だった。
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