テラーノベル
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最終の仕事を終えた日、俺たちは俺の家に帰った。 俺は全く話さなかった。
「…後悔してる?」
「……後悔してないと言ったら嘘になる。けど舜太だけを置いていくのも、俺だけが置いていかれるのも嫌だった。」
そういうと、舜太は隣で微笑んだ。
脱退してからしばらくは、仕事に追われていた頃にはできなかったことが沢山できた。朝は遅く起きて、ふたりでゆっくりと朝食を食べる。夜は夜更かしをして映画を見ながら、寝落ちをする。それが俺たちにとってかけがえのない幸せで、この生活を気に入っていた。
こんな時間がずっと続けばいいのにな、と本気で思う。
そんな願いは裏腹に生活は少しずつ苦しくなっていく。仕事の連絡なんてグループを辞めてからほとんど来なくなった。今までは当たり前にあった毎週の予定も消えた。
俺も舜太も新しい仕事を探そうとするけれど、芸能界1つでやってきたものだからなかなか上手く行かなかった。
何も上手く行かなくって自分の部屋に篭もることが増えた。そして、俺か冷たい対応をしてしまうと謝ってくるのはいつも舜太のほうだった。舜太を嫌いになった訳ではない。ただ、何もかもうまくいかない自分を、いちばん大切な人に見られているのが苦しかった。
不安になる度、傍から離れられなくなって俺たちはどんどん世界が狭まっていった。
舜太は俺が何をしても、俺のことを責めないし、怒らない。自分が寂しくても悲しくてもそれを口に出さない。
俺はそれをわかった上で色々なことをしてしまうから、舜太は自分の気持ちを押し殺してしまったのだ。
「俺は、舜太のことを嫌いになった訳じゃないからね」
「そんなのわかっとるよ笑」
好きだから一緒にいたい。好きだから、1人の時間も欲しい。でも舜太はそれに耐えられないから、安心させるために少しずつ自分の自由を手放していく。相手を苦しめたい訳ではないけれど、苦しさだけどんどん増えていく。
誕生日から約半年、誕生日プレゼントの黒い薔薇とスグリは少しずつ枯れ始めていた。
「花そろそろ傷んできたな」
「……そうだね」
「もう捨てる?」
「まだいい、捨てない」
「でももう枯れ始めてるで?」
「分かってるから」
少し強い声になってしまった。そうすると舜太は何も言わなくなった。
なんとなく花束を見つめていると誕生日の事を思い出す。
100本も要らないと言った自分に、100本がよかったのだと言ってきたこと。
あの頃は、2人で居れば何とかなると思っていた。
今でも大好きな気持ちは揺るがないけれど、舜太がいなければとても苦しいはずなのに、一緒にいると苦しい日がある。
それを分かっているのにどうしたらいいのか分からない。
花びらに触れると、花びらが崩れ落ちた。
どうしようもないこの気持ちも、花束も捨てられなかった。
コメント
1件
うわ、これ…読んでて胸がぎゅってなった。 愛してるからこそ「一緒にいるのが苦しい」って感覚、すごくわかる気がする。 お互いを想ってるのに、すれ違って、押し♡♡♡て、距離がわからなくなっていく。 黒い薔薇とスグリが枯れていく描写がもう象徴的でさ…。 「捨てられない」って最後の一行に全部詰まってた。 yさんの空気感の描き方、めちゃくちゃ好きです。続き、めっちゃ気になる…!