12月の寒い夜、都内のイルミネーションスポット。 キラキラと輝く光の中、天彦と理解は2人で歩いていた。寒さで息が白く、光に照らされて幻想的な雰囲気を醸し出している。
「理解さん、今日は来ていただきありがとうございます」
「いえ、天彦さんから誘っていただいて嬉しかったです。あとすみません……結局何も思い浮かばず」
「お気になさらず。クリスマスに一緒に過ごせただけで天彦は幸せですよ」
そう、今日は12月25日、クリスマスの日だ。2人は今日、イルミネーションを見に来ていたのだ。
しかし、理解には何をプレゼントすればいいのか全く思い浮かばなかった。そこで天彦が『気分転換に』と理解を誘ってくれたのだ。
「そういえば、天彦さん。どうして今日だったんですか?クリスマスに誘うということは、何か特別な意味があるんじゃ……」
「……それは秘密です」
そう言って微笑む天彦の顔を見て、理解はドキッとした。そんな理解に気が付かないまま、天彦はふと足を止める。
「おや、綺麗ですね」
「これは……電球ですか?」
2人が見上げたのは、大きなモミの木に巻き付けられた電球だった。キラキラと光っていて、とても綺麗だ。
「理解さん、少し目を瞑ってください」
「え?」
天彦にそう言われ、理解は素直に目を瞑る。すると、何か布のようなもので目を覆われた。
「な、なんですかこれ!?」
「ふふ……驚いてますね?でもまだ目を開けないでください」
「……はい」
天彦に言われた通り、理解はそのままじっとするしかなかった。すると突然、唇に柔らかい感触がした。驚いて思わず目を開けると、そこには天彦の綺麗な顔があった。
「!?」
「理解さん、メリークリスマス」
理解が驚きで固まっていると、天彦は満足そうに微笑み、理解の唇に指を這わせた。その妖艶な仕草に理解の顔は赤く染まる。そして再び天彦の顔が近づいてきたところで、理解はやっと我に返り慌てて天彦を引き離した。
「な……なな…な何をするんですか!」
「……キスです」
「キ……キキ……そ、そそれはわかってます!なんで急に……」
「……すみません、つい」
「『つい』でキスしないでください!」
理解は、これ以上ない程真っ赤になって叫んだ。そんな理解を見て、天彦はクスクスと笑っている。
「ほら、理解さん。とても綺麗ですよ」
「……!!」
そう言って天彦が指さした先には、さっきよりも輝きを増したイルミネーションがあった。キラキラと輝く光に包まれ、2人はしばらく黙ってその景色を眺めていた。
「理解さん」
「……はい」
「来年も……いえ、これからもずっとクリスマスを共に過ごしましょう」
「……はい。こちらこそよろしくお願いします」
そう言葉を交わして、2人はまた歩き出した。その足取りは、心なしかいつもよりも軽やかだった。
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