第35章「闇の王の兆し」
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【穏やかな日常の中で】
エラ・ノア神殿での激闘から数日。
ゲズたちは静かな時間を過ごしていた。
ウカビルはまだ完全には回復していないものの、仲間たちとの再会を喜び、静かに神殿の庭で剣の型を振っていた。
ウカビル「……剣筋が、少し鈍ったか」
ゲズ「いや、俺なんて追いつくのも大変だよ。っていうか、もう師匠みたいなもんだな」
ウカビル「ふっ、光栄だ」
笑い合うふたりを、少し離れた場所でセレナが見つめていた。
彼女の表情には、どこか不安があった。
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【セレナの異変】
その夜。
セレナはひとり、夜空を見上げていた。
瞳に浮かぶのは、微かな闇。
セレナ(あの時……水晶の棺がひび割れる瞬間……何か、別の声が聞こえた気がする)
その声は優しくもあり、冷たくもあった。
まるで、遥か彼方から届いた“別の王の囁き”のように――
セレナ(まさか……ルシフェルじゃ、ない?)
ふと、彼女の耳元で風が囁く。
???「我は見ているぞ……セレナよ……光と影の間に揺れる、お前の魂を……」
セレナははっと振り返るが、そこには誰もいない。
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【ルシフェルの思惑】
一方そのころ、ルシフェルは玉座に座り、黒き星図を睨んでいた。
ルシフェル「英雄たちは目覚めた。だが……それで満足するような私ではない」
彼女の前に、膝をつく影の軍団が並ぶ。
ルシフェル「“闇の王”が目覚める前に、あの光の芽を摘み取らなければ――
その者たちは、光の王の“意思”に繋がってしまう」
配下「サタン様が……動かれるのですか?」
ルシフェル「まだだ。だが……呼応する者が現れ始めている」
ルシフェル「この宇宙は三つの王に支配される。
光の王アダム。闇の王サタン。そして私。
世界の均衡を壊すのは、いつだって――光だ」
彼女の唇が、妖しく微笑んだ。
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【最後の場面】
ゲズとウカビルは、神殿の屋上で話していた。
ウカビル「……ゲズ。君は“王”という存在を信じるか?」
ゲズ「……正直、信じたくない。けど……ルシフェルの存在を見た今、
きっと、他にもとんでもない存在がいる気がしてる」
ウカビル「この宇宙には、今も“目を開けていない王”がいる。
俺が眠っていた間、何度もその気配を感じた。……終わりは、まだ遠い」
ふたりが空を見上げたその時――
星空に一筋の黒い流星が走った。
それはまるで、宇宙に新たな“影”が走り抜けたような、異様な輝きだった。
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