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#バディーズ
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にこにこ
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続き待ってます
うわ、第16話めっちゃ泣けた……。愁斗が「自分を大事にするってどうすればいいのか分かんない」って言ったところでグッときた。今まで誰かを優先するのが当たり前だった子が、初めて「怖い」って言えたの、ひでとの約束がちゃんと生きてる証拠だよね。鼻血のシーンもめちゃくちゃリアルで、ひでの「俺がいるから」って自分に言い聞かせてる感じが伝わってきて胸が苦しかった。続きが気になる…!
隔離が解除されてからというもの。
ひでは以前と変わらず、毎日病院へ通った。
病室のドアを開けると、愁斗が笑っている。
その光景が、何より嬉しかった。
『今日の調子は?』
「今日はね。」
「中庭まで歩いた。」
『おっ、すごいじゃん。』
「あとね。」
「階段も少しだけ上った。」
『先生の許可は?』
「……あるよ。」
少し間があく。
『その”間”は怪しいな。』
「ばれた?」
二人で笑う。
その笑顔が増えていくたびに、ひでは安心していた。
もう少し。
もう 少しで退院できる。
そう信じていた。
数日後。
病室へ入ると、愁斗は長袖のパーカーを羽織っていた。
真夏だというのに。
『……暑くない?』
「平気。」
『病室、エアコン効いてるとはいえ、その格好は暑いだろ。』
「そんなことない。」
笑ってごまかす。
でも。
どこか無理をしている笑顔だった。
ひでは首をかしげる。
『顔、赤くない?』
「……そう?」
『熱ある?』
「ないよ。」
『ほんとに?』
「うん。」
そう言いながらも、愁斗は目を合わせようとしない。
その時だった。
コンコン。
「失礼します。」
看護師が点滴の交換にやって来た。
「愁斗くん、袖を少しまくりますね。」
「……はい。」
ゆっくり袖がまくられる。
そこで。
ひでの視線が止まった。
『……愁斗。』
腕には、小さな赤い発疹がいくつも広がっていた。
『それ……何?』
愁斗は反射的に腕を引っ込める。
「見ないで。」
『なんで隠すんだよ。』
「……別に。」
看護師が静かに説明する。
「昨日の夜から発疹が出始めて。」
「少し熱も上がっています。」
『熱……?』
「無理をしすぎたのかもしれませんね。」
その一言で、全部つながった。
毎日の歩行練習。
階段。
食事。
笑顔。
全部。
“早く元気になりたい”
その一心だった。
『なんで言わなかった。』
愁斗は俯く。
「……せっかく。」
『え?』
「せっかく。」
「また会えたから。」
「また会えなくなるのが嫌だった。」
『……。』
「だから。」
「これくらい平気だと思った。」
病室が静まり返る。
ひでは深く息を吸った。
怒鳴ることはしない。
でも。
その声は、今までで一番強かった。
『嬉しかったのは俺も一緒だ。』
『また話せるようになって。』
『また笑えるようになって。』
『俺だって嬉しかった。』
『でも。』
『無理して倒れたら意味ないだろ。』
『もっと自分を大事にしろ。』
愁斗は黙ったまま、シーツを見つめる。
長い沈黙。
そして、小さく口を開いた。
「……分かんない。」
『え?』
「自分を大事にするって。」
「どうすればいいのか。」
ひでは言葉を失った。
愁斗は続ける。
「今まで。」
「誰かを優先するのが普通だった。」
「下の子が泣いてたら、そっち。」
「先生が忙しそうなら、そっち。」
「俺は。」
「後でいいって思ってた。」
「だから。」
「自分を大事にするって言われても。」
「分かんない。」
その言葉を聞いた瞬間。
ひでは胸が締めつけられた。
この子は。
今まで一度も、自分を一番にしてこなかったんだ。
ひではベッドの横に腰を下ろす。
『じゃあ、一つだけ約束しよう。』
「……?」
『苦しい時は、苦しいって言う。』
『辛い時は、辛いって言う。』
『無理だと思ったら、無理って言う。』
『それだけでいい。』
『それが、自分を大事にする第一歩だから。』
愁斗はゆっくり頷いた。
「……うん。」
『約束。』
『約束。』
二人は小さく笑い合った。
その日の夜中。
今日は簡易ベッドで泊まれる許可をもらっている日。
静かな病室。
安心して愁斗は眠りについていた。
規則正しいモニター音だけが響く。
ひではふと目を覚ました。
何となく。
本当に、何となく。
愁斗の方へ目を向ける。
『……。』
白い枕。
そこに。
赤。
『……っ。』
一瞬、思考が止まる。
片方の鼻から流れた血が、枕へ筋を作っていた。
シーツにも小さく広がっている。
『愁斗!』
肩を揺する。
「……ん……。」
起きない。
もう一度。
『愁斗。』
ゆっくり目を開ける。
「……ひ、でくん?」
寝ぼけた声。
『鼻血出てる。』
「……え。」
鼻へ触れる。
その瞬間。
どろっ。
また新しい血が流れた。
「っ……。」
首元へ落ちる。
シーツへ落ちる。
止まらない。
ひでは一気に血の気が引いた。
(まずい。)
(思ったより多い。)
(落ち着け。)
(俺が焦ったら愁斗も不安になる。)
急いでガーゼを取り、鼻へ当てる。
『大丈夫。』
声はできるだけ穏やかに。
『大丈夫だから。』
でも。
心臓だけはうるさいくらい鳴っていた。
(止まってくれ。)
(お願いだから。)
(また貧血になる。)
(また倒れたら。)
いろんな考えが一気に頭をよぎる。
それでも。
表情だけは崩さない。
『愁斗。』
「……。」
『ゆっくり息しよう。』
「……うん。」
『俺見て。』
愁斗は小さく頷く。
その顔はもう白くなり始めていた。
『大丈夫。』
『ちゃんと止まる。』
『俺がいるから。』
その言葉は。
愁斗へ向けたものでもあり。
自分自身へ言い聞かせる言葉でもあった。
『愁斗今頭ぼーっとするとかある?』
「……。」
『正直に言っていいんだよ』
「視界は…ぼやける、 」
『わかった、目、瞑ってな』
数分。
いや。
ひでには何十分にも感じた。
ようやく血の勢いが弱くなる。
ガーゼを少しだけ浮かせる。
まだ滲む。
『もう少し押さえよう。』
愁斗は小さく頷く。
「……ひでくん。」
『ん?』
「怖い。」
その一言で。
ひでの胸が締めつけられる。
『うん。』
『俺がいるよ。』
「……うん」
「ごめんね、、急に」
『いや。』
『俺は大丈夫』
「……うん。」
その愁斗の顔を見て。
ひでは心の中だけで呟く。
(違う。)
(本当は。)
(めちゃくちゃ怖かった。)
(また何かあったらどうしようって。)
(助けられなかったらどうしようって。)
でも。
その言葉は飲み込んだ。
代わりに。
愁斗の頭へそっと手を置く。
『ちゃんと守るから。』
『もう、一人にはしない。』
――朝方…
昨日の鼻血が心配で、
何度も何度も目を覚ましてしまった。
太陽が登り始めた頃、
いつもと違う寝汗。
顔の赤み…。
ポリポリポリポリ……
(首、、発疹できてる…)
(痒いのかな…… )
寝ながらに、掻きむしる。
何かおかしいと思ったひでは、
そっと体温計を忍ばせた。
38.9℃。
やばい。
すぐに看護師さんを呼んだ。
点滴を追加してもらったが、
そのあとすぐに
愁斗の熱は、一気に四十度近くまで上がった。
腕だけだった発疹は、首や胸元にもどんどん広がっていく。
主治医が静かに告げた。
「念のため、もう一度隔離病室へ移りましょう。」
看護師が車椅子を用意する。
愁斗はゆっくり立ち上がった。
病室を出る直前。
廊下で待っていたひでと目が合う。
数日前までなら。
きっと笑って、
「大丈夫。」
と言っていただろう。
でも今日は違った。
約束を思い出す。
“苦しい時は、苦しいって言え。”
愁斗は勇気を振り絞る。
「……ひでくん。」
『うん。』
「少し。」
一度言葉を飲み込む。
そして、震える声で続けた。
「……少し、怖い。」
ひでは迷わず車椅子の前にしゃがみ込む。
そっと愁斗の手を握った。
、
『言えたな。』
その一言に。
愁斗は静かに頷いた。
『大丈夫。』
『今度は、一人じゃない。』
車椅子がゆっくり動き出す。
握られた手は、隔離病棟の扉が閉まる最後の瞬間まで、離れることはなかった。