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そのころ、村の女たちは虐殺に加わらず、村でいつも通りに生活していた。そのうちの一人の女の子が、村から少し離れた川に洗濯にやってきていた。
「あら?」
と、そこに、逃げてきたらしい子猿がいた。
「きぃ……」
本当は、猿を見かけたら大人に報告することになっていた。しかし、女の子は、報告したらこの猿も殺されてしまうだろうと考えた。
「……一匹くらいなら、悪さをしてもたいしたことはないだろう。黙っててやるから、早くお逃げ」
「きぃ!」
言葉が通じたわけではないだろうが、女の子がそう声をかけると、猿はいそいそと逃げて行った。
その後、村は猿に悩まされることはなくなった。村人は企てがうまく行ったことを喜んだ。そして数年の月日が流れた――。
そんなある日のこと。あの女の子も今はもう10代半ばを過ぎ、この時代としては大人の仲間入りをする年齢が近づいていた。そしていつものように一人で川に洗濯に来ていた。と、そこに――
「キィ!」
一匹の猿が姿を現した。あの出来事以来、村で猿が目撃されることはなかった。女の子も、川の近くで猿を見たことはなかったので、結局どこかで死んでしまったのだろうか、と思っていたのだが。
「おや、お前は、もしかしてあのときの……」
本当にそうなのかはわからないが、女の子はその猿がかつて見逃してやった猿のような気がした。
「すっかり、大きくなったんだね」
とそこに、人の話し声が近づいてきた。村の大人たちだろう。女の子は迷った。この猿が見つかったら、きっと殺されてしまうだろう。だが、ここ数年は猿の被害が出たとも聞かない。この猿は何も悪いことはしていないのだ。せっかく生き残ったのに、こんなところで殺されるのもかわいそうではないか。そんなことを考えた。
「そうだ。お前、ついておいで」
女の子がそう話しかけると、言葉が分ったのか、猿は大人しく女の子の後からついてきた。
「この先に洞窟があるんだ。中は入り組んでいて危ないから、大人たちもめったなことでは入ってこない。そこに隠れよう」
女の子は村人から猿を隠してやることにしたのだ。猿もそんな女の子の気持ちが通じたのか、おとなしくついてきた。
「さあ、ここだここだ。さあ、中にお入り」
女の子は猿を洞窟の中に入れてやると、自分は入口のところに立って、あたりを見渡した。
「誰にも見られていないね。ここに隠れているんだよ。わたしは仕事があるから、もう戻るね――えっ!」
そういって女の子が洞窟を出ようとしたとき、突然後ろから口を押えられた。さらに、強い力で洞窟の中に引きずり込まれる。
「!?!?!?」
(続く)