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〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「流石にないちゃん、ヘタレすぎやろ、それは。」
宿泊学習一日目の夜、りうらたちはベットに腰掛けて恋バナをしていた。元々ベットが2つしかない部屋に、無理やり3つ目の即席ベットが押し込まれているのだから、狭い。
ちゃっかり初兎ちゃんのお菓子を口に入れているほとけっちもそれにうんうんと相槌を打っている。
「そーかな?云うて、りうら達付き合ってからまだ1ヶ月しか経ってないけど…」
「いや、付き合って1ヶ月で手も繋いでないのは、ヤバいって〜〜」
「そーそー、ないちゃんもりうちゃんもヘタレだね〜笑」
「は!?付き合ってるだけましでしょーが!!」
「いむちゃんはまず付き合うとこからやもんな〜ww」
からかわれたほとけっちは顔が真っ赤なりんごみたいになっている。
「いいもん、別に…いふくんと付き合えるとか思ってないし〜」
「いや、いける、いけるって〜〜!!」
「ほとけっち可愛いから大丈夫だよー♪」
「またお世辞ばっか言って〜、てか初兎ちゃんはどこまでいったのよ」
「そーだよ!うちらの事からかっといて言わないとかなしなんだから…!」
「…え、キスした」
「え」
「はいぃぃ?」
「は、?」
「ひ」
「ふ、(」
「え、キスした!?今キスしたって言った!?」
「いついつ、?」
「どんな感じで?」
いったんのフリーズから慌てて戻る。
「いや、ふつーに学校の帰りにばいばーいってするとこでされた」
「まーーじで言ってる?」
「うん、がちのまじw嘘なんかつくかw」
あまりにも初兎ちゃんが淡々と言うものだから余計に驚いてしまう。ちょっとは恥ずかしそうにしているものの、照れている様子など全くない。
「まじかーー、まぁでもあにきだもんなぁ」
「そーだよねー、あにきだもんね〜、相手が、w」
あにきで納得出来てしまうのだから不思議である。まぁ、あにきならやってても可笑しくないよなー、みたいな。
「さっすが熟年夫婦ですねー笑」
ほとけっちが茶化すように言う。実際あそこのカップルはラブラブな事でクラス中、いや学校中で有名なのだ。
「ほんとねー、でもちょっと羨ましいわw」りうらが言う。
「ねー、ないちゃん思ったよりこじらせてたわ笑」
「思っとったよりも酷かったよな、ヘタレ具合」
初兎ちゃんがそういった途端、プシューという音が部屋にひびき渡った。
きょろきょろと辺りを見回すとどうやら、ケトルから湯気が出ているようだ。
「お湯沸かしたん誰〜?」
「はいはーい!僕!!」
ほとけっちが元気よく名乗り出る。
「どしたん?何に使うん?」
「いやーね、皆さん聞いて驚かないでくださいよ!✨」
「なんと、、!カップ麺を持ってきたのです〜〜!!」
ぱちぱちと1人ほとけっちの拍手が響く。いや〜、ケトルあるだろうからお湯沸かして食べられると思ってね、と力説するほとけっちを優しく眺める。
「どーする?2人も食べる?いっぱいあるよ〜✨」
「いむちゃん、がちナイス〜👍」
「いいねー♪食べよーー」
宿泊学習ならではの事で盛り上がる。普段はこんな時間にカップ麺なんて食べないんだけど…
今はニキビなんやらは気にせず、美味しいを堪能することにした。
こうして夜は更けていった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ひとしきり盛り上がった後、ベットに入って1人悶々と考える。すぅーすぅーという規則正しい寝息が聞こえ、もう2人は寝てしまったんだなと思う。
初兎ちゃんとほとけっちの話を聞いて、やっぱ思ったよりないくんはヘタレなのかな〜と考える。りうらは全然気にしてないから、何かを特別に思ったことは無かったけど、やっぱり初兎ちゃんが少し羨ましいなとは思う。
ほとけっちだって付き合ってこそないけれど、両片思いなのは見ていて明白で…
いっつも余裕たっぷりのまろにからかわれている。
今日の商店街での自由行動の時だって…
「ほとけ、クリームついてる」
「ほんと?何処についてる?」
「ぁあー、右やで(嘘」
ほとけっちは必死で自分の右頬をまさぐっているのにクリームは取れない。それもそのはずクリームは左についていたんだから。
「ちょっとどこよ!?ないんだけど💦」
「あー、ごめん。右じゃなくて左やったわ笑」
「俺から見て右手にあったからww」
そう言ってまろはほとけっちの顔についてるクリームをぐいっと拭いとった。
ほとけっちは、好きな人に恥ずかしい所を見られたのと少女漫画みたいな事をされてしまった事で頭がいっぱいで既にキャパオーバーだ。
「~~ッちゃんと左って言ってよね!//」
「何照れてんの〜笑もしかしてきゅんとした?w」
「ッは!?する訳ないじゃん///」
「じょーだんだよ、w」
最後には喧嘩に発展しちゃう所は青組っぽいけど、顔が真っ赤なほとけっちとちがって、まろには余裕の笑みが浮かんでいる。
こういうところぐらいは素直になればいいのにって思うけれど、同時にこんなシチュエーションを羨ましく思う自分もいた。誰だって彼氏には余裕を持っていて貰いたいものだと思う。
ないくんに不満は無いけれど、どうしても他の人と比べてしまう。わがままだって分かってはいるけど、もう少しリードしてくれてもいいのになって思ってしまった。
そんな感傷にひたっていると、ないくんとの出会いを思い出してしまう。最っ高にかっこよくて最っ高にダサいないくんを初めて見たあの日。そういえば今のないくんと全く違わないな、と思った。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜約1年前
「ッどーしよ〜」
今、りうらはめっちゃ焦っている。なんと校内で迷子になってしまったのだ。
今日は高校の入学式。昔から心配気質のお母さんとりうらがお父さんを席立てて、今日は早くに家を出た。校門で体育館に入る両親と教室で一旦集合するりうらで別れて、クラス分け表を見てホームルーム教室に行ったはいいものの、やっぱり朝早すぎるのか誰もいない。
1人で席に座っているのも次第に飽きて、少し校内を見て回ることにした。校内探検は楽しかった。中学校には無い集会専門の大きな建物や食堂、おしゃれな自習室まである。
とにかく全てが大きくて広くて、これからここで過ごすんだという意識が少しづつ持ち上がって来てわくわくした。こんなに広かったら、1学年7クラスもあるのも当たり前なのかなとも思う。
校内を一周して回っていると、気がつけば1時間近く経っている。そろそろ教室に戻ろうかと思ったところではたと気がついた。
……ここ、さっきも通ったところだ。
一周しているつもりだったのに、知らず知らずのうちに迷い込んでいたらしい。そこからは同じところをくるくると回っているだけだ。
刻々と時間が迫って来ているのに、帰り道が分からない。焦れば焦るほどに息は切れ、道は分からなくなって言った。
そんな時だ。
ないくんに出会ったのは。
校庭の端にぽつんと1つたつ桜の木。その下にいたないくんは、目も髪も桜色でまるで桜の木の精霊のようだった。
「あ、あの、すみません」
勇気を振り絞って声をかける。幸いなことにこういう場面で物怖じするタイプでは無い。
「んー、どうしたの?もしかして迷っちゃった?w」
「あ、はい。そーなんですけど…先輩ですか?」
ちょっと笑われて恥ずかしくなる。
「ううん笑 俺も新入生だよ〜、一緒に教室まで行こう🎶 そろそろ時間やばいよね〜w」
話してみるとないくんは、気さくで面白い人だった。早く来すぎて、校内を探検してたこと、気がついたら同じ場所をくるくる回っていたこと、焦ってたらないくんがいて安心したこと、沢山話した。
一目見た時にイケメンだなと思った。背も高いし、会話も盛り上げてくれるし、すっごいモテるタイプなんだろうな、とも。
……きっと完璧な人なんだろうと思っていた。
…………でも、
「ぇえ、ちょっと待って、ここどこ…」
「え!?ないくん、教室の方に言ってたんじゃないの!?」
「いや〜、そうだったはずなんだけど💦」
「……ごめん、俺も迷っちゃった」
「ええぇぇぇぇぇぇ、ちょっと〜何やってんの!?」
そこからは大変だった。一生懸命2人で走り回っても、教室は見つからず、登校締切の時間はすぎてしまった。その後すぐに運良く先生を見つけることが出来たものの、完璧に遅刻だった。
2人とも同じクラスだったからまだ幸いだったけれど、登校初日のしかも入学式に遅刻してくる生徒、という事でクラスメイトの視線が痛く突き刺さった。
……でもりうらはそんなこと全然気になっていなかった。否、視界にも心にも映っていなかった。
先生に連れていかれている時、
「ほんっとーにごめんね💦」
そう言って眉尻をさげて笑うないくんに心を撃ち抜かれてしまっていたのだ。颯爽と教室に連れていってくれるわけでもなければ、りうらのことをスマートにフォローをしてくれる訳でもない、そんな少女漫画だったら即ダメだしをされてしまうようないくんだったけれど、りうらはそんなにないくんに恋をしてしまった。
ないくんががりうらにとっての白馬の王子様になった日だった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
絶対に叶わない恋だって思ってた。叶えては行けない恋だって分かってた。
目が合ったら嬉しくなって、話せたら一日中嬉しくって、記憶に残るように可愛いって思って貰えるようにずっとにこにこして……恋だった
人を好きになったのは2年ぶりくらいで心が少し踊ったのに、よりによって相手がないくんだったなんて。神様は意地悪だなとつくづく思った。
でも好きな気持ちは止められなくて、でも告白なんてできないってわかってて……
高校に入ってすぐ仲良くなった初兎ちゃんとほとけっちにだけ鬱憤をぶちまけた。幸か不幸か初兎ちゃんの好きな人はあにきで、ほとけっちの好きな人はまろ。そしてお察しの通りりうらの好きな人はないくん。あにき、まろ、ないくん、この3人はいつも一緒だったから、話す機会も多かった。
よく話す仲いい女友達くらいには思ってくれていると信じていた。それ以上は何も期待していなかった。だって、ないくんは初対面の時のイメージ通り、なんならそれを上回るくらいにはすごい人だった。
容姿端麗、テストでは学年2位(1位は絶対まろちゃん)、走るのも早くっていつもにこにこ笑ってて、生徒会長もしていて、そのせいか人脈もある。時々ドジるのがたまにキズかもしれないけれど、それすら可愛く見えてくるほど人を夢中にする人だった。片時も目が離せない人だった。
だけどある日初めて出会った桜の木の下に呼び出された。2人っきりで話したいことがあるから来てって。大抵の人なら告白かもって期待するかもしれない。でもりうらはそんなこと無かった。
なぜなら、今まで体育館の裏とか図書館奥の中庭とか如何にも告白スポットみたいな所に、今回と同じような文言でないくんに呼び出されたことが何回かあったからだった。多少の期待を抱いて言ってみるも、結局は頼み事をされたり、世間話をするだけ。好きな人と2人っきりで話せるだけでご褒美には違いないのだが、期待して言った身としては、なかなかに悲しいものだった。その度に、結局はりうらはないくんの友達でしかないのだと分からされてしまうのだ。
※そんな事ないです。ないくんは告白しようと意を決して呼び出しているのですが、実際本人が目の前に来るとひよって告白から逃げてただけです。
ぽかぽかと春の陽気に照らされる日だった。約束の木の下に行くと、既にないくんはそこで待っていた。ちょうど桜の季節で、舞う桜の花びらに包まれたないくんはやっぱり綺麗だなって思ってしまう。
「ないくーん、ごめんね💦待った〜?」
「ううん笑全然待ってないよ〜」
「急に誘ったのに来てくれてありがとう!」
何故かあまり目を合わせてくれないないくんが気になった。
「そんなのいつもの事じゃんw」
「まぁ、それはそう……笑」
ないくんは少し苦笑したあと、すっと口が真一文字を結んだ。くっと唇を噛み締めているようにも見える。きょろきょろと忙しなく動く目はりうらを捉えてはいなかった。
「あのね、りうら。びっくりしないで欲しいんだけど」
「初めて会った時から好きでしたッ、俺と付き合ってください///」
あまりに突然の事で、都合のいい夢を見ているのかと疑う。暖かい春の風に連れられて、思考力までもが一緒に連れ去られてしまっていた。
ただ、ないくんの真っ赤な頬とりうらのばっくんばっくんと高鳴る胸の鼓動だけがそれが現実だと告げているようだった。
「ッりうらで良ければお願いします//////」
「え……ほんとに!?りうらも俺のこと好きッ??//」
「うん!りうらもあった時からずっと////」
「じゃ、じゃあ俺たち付き合ってるって事でいいのかな?//」
「そうなるよね💦///」
1呼吸置いた後に言う。
するとないくんが、顔を抑えて座り込んだ。
「ッは〜〜、緊張した〜〜」
真っ赤な顔を抑えてうずくまっている。
「ぁぁあああ、まってぇ、こ、声が震えてる」
「もう……無理ぃ…」ないくんの声が震えている。
やっぱこういう所がないくんっぽいなって思う。さっきまで視線は噛み合ってなかったとはいえ、かっこよく告白していたのに、今は小さい子犬のようだった。さっきのきらきらオーラはどこにいったのだろうか、?
………………
告白された時の事を思い出していたら思わずくすっと笑ってしまった。そういえばないくんはこんな人だったなぁって。
普段はかっこいいのにいざと言う時はへたれになっちゃう。自惚れかもしれないけれど、りうらといる時は特にそうなる気がする 。彼氏とか好きな人とかにからかわれたり、余裕たっぷりにリードしてもらうのもいいかもしれないけれど、りうらとないくんはこれでいいのかも、と思って深い眠りに落ちていった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
昨日寝る前にかけておいたアラームで目覚める。
生憎のところ、りうらの班には時間通りに起きてりうらを起こしてくれる人がいないから、自力で起きるしか無かった。
まずは、と思い声の限りに叫ぶ。
「っおっきろーーーーー!!!!!!!!!!! 」
その大声にうっすらと目を開いた初兎ちゃんの反対で未だ心地よさそうに寝ているほとけっちの布団を引き剥がしにかかる。
「朝だよー、6時半に食堂集合だから10分にはこの部屋から出るからね!」
それだけ言って、時計を見ると針は5時30分を指している。時間 はありそうだが、ない。いますぐ用意に取り掛からないと、と思い洗面台に向かった。
鏡を覗くだけで、寝起きのビジュが悪い自分に飽き飽きとする。取り敢えず、顔を洗って化粧水をつけ、歯磨きをしながらまた部屋に戻る。朝食会場まで荷物も持っていかないといけない。今日使う荷物を栞を見ながらリュックに詰め込み、それ以外のものは丁寧にスーツケースにしまう。顔を横に向けると初兎ちゃんとほとけっちがのそのそと起き上がってくるのが見えた。
粗めのくしで髪をといてから、細かいコームで丁寧にといていく。オイルを手に取り、髪全体に馴染ませる。あんずのいい香りが鼻腔をくすぐった。その後、ヘアアイロンのコードをプラグに指し、髪を巻いていく。初兎ちゃんのゆるふわに巻かれた髪とほとけっちのストレートの髪の中間くらい。ふわっとしたボブになるようにかたをつけていく。
まだアイロン前の前髪をポ○ポ○プリンのピンでとめて、フェイスパウダーを顔にはたく。日焼け止めは移動中のバスで塗ろうと思って、アイメイクに取り掛かった。最近のりうらの流行りはしっかりめのメイク。アイラインをしっかりとはねあげ、目頭と目尻の切開ラインを黒いペンでかく。まぶたに薄く肌色のアイシャドウをのせて、目尻にもほんのり桃から紅のグラデーションになるように塗っていく。ラメの入ったマスカラでしっかりまつ毛をあげたら、ビューラーで固定して完成!!
頬の肉にもうっすらとピンクをのせて、ぷるぷるとした半ゼリー状のリップを今度は唇に広げていく。最後にハイライトと影をつけて、フェイスラインと鼻筋をきれいに整えていく。これもないくんに恋してから身につけた技だった。
ピンを外したら、今度は前髪を巻いていく。根元はまっすぐ、毛先だけくるんと巻く。
顔を作り終えて、鏡ににこっと笑いかけてみる。ないくんはすっぴんのりうらも好きと言ってくれるけれど、りうらが落ち着かない。今日も完璧と心の中で唱え、ヘアオイルをもって待ち構えている初兎ちゃんに鏡を譲った。
部屋ではほとけっちが荷物を急いで、鞄に詰めている。
「ほとけっち〜?大丈夫そ、?」
「一応……多分…大丈夫だと思いたい、、」
お土産などで膨れ上がった荷物がカバンに入らなさそうで試行錯誤しているらしい。まあまあ、ほとけっちの事だから大丈夫か、と思い部屋をちょっとだけ整理しに取り掛かった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜夕方
「りうちゃーん、もうちょっとで時間じゃない?」
ほとけっちに話しかけられて、気がつく。時計はもう8時を指していた。今日はこの宿泊学習最後の夜という事でレクリエーションがある。もうご飯も食べてあとはレクリエーションを楽しんで寝るだけなのである。
…ただこのレクリエーションがちょっと厄介なのだ。
このレクは、夜の山を探索することで仲間と絆を深めるという名目で行われるこの学校の宿泊学習の名物である。夜の山といっても道はきちんと舗装されていてコースは分かりやすいし、灯りも雰囲気程度にはついている。しかし、この夜の山探検は男女2人がペアになって行うのだ。男女2人の中に絆もへったくれもないと思うし、このイベントを考えた人の魂胆がみえみえではあるが、しょうがない。決まってることはしなくてはいけない。
「ほんとだー、だるいけどそろそろ行かなきゃね」
「でもりうちゃん、だるいとか言ってるけど本当は楽しみなんでしょーーw」
図星を疲れてぎくっとなる。夜の山でふたっりっきりで話せるなんて、ご褒美でしかなくて、ずっとどきどきしているのだった。ちゃんとないくんと約束は取り付けてある。他にも何人かの男子に誘われたが、それは丁重にお断りしておいた。
「でも初兎ちゃんとりうちゃんはいいけどさ、僕どうしよ…」
ほとけっちが呟く。
「誰にも誘われてないしなー」
…… …… ……
「「え!?まろ/まろちゃんに誘われてないの/ないん!?!?」」
「え…、うん、てかいふくんが僕のこと誘ってくれるわけないじゃん」
「話そうと思っても喧嘩にしかならないし、いふくん絶対可愛い子に誘われてるじゃん…」
そうほとけっちが言う背後で2人でため息をつく。まろも思ったよりヘタレなのかもしれないな、と。
まろからりうらと初兎ちゃん、あとあにきとないくんに連絡がきたのは、今から1週間くらい前だった。’ほとけをレクの時に誘いたいから、協力してくれへん?’そういう文面で届いたLINEを見て、ようやく行動に移すのかと思ったのだ。この一週間は大変だった。ほとけっちは素直な子なので、レクに誘われたら嫌悪感を感じない限り、受け入れてしまう。危機感をお覚えた初兎ちゃんとりうらはほとけっちを誘いたそうな男子がいると、ほとけっちを連れて逃げ回った。LINEも逐一見せてもらって、危ない文面は存在を消し去った。
なのに、こんなに苦労したのにまだ誘ってないんかい!!!
思わずツッコミが炸裂する。とりあえずほとけっちを慰めるしかなかった。
「ほとけっち〜、多分だけどね、現地で誘われると思うよ」
「まろちゃんが1番仲良いのいむちゃんやん!」
ほとけっちはまだ不安そうな顔をしているが、一応は納得したみたいだった。
「でも、僕はともかく初兎ちゃんが誘われてないのは意外だったね」
そりゃあにきのせいです!!!と今度は1人でツッコミを入れる。初兎ちゃんはこの3人の中で断トツでモテる。小さすぎず、大きすぎない身長に、大きいたれ目、腰近くまで伸びた髪はくるくると巻かれている。そして何より胸が大きい💢💢
胸が大きいお姉さんという感じで多分男子のどストライクなのだろうだろう。
それでも初兎ちゃんを誘う男子がいない理由は、完全にあにきにある。前述の通りラブラブな事を隠さないうえ、初兎ちゃんに話しかけよう男子がいるものならあにきから即圧がかかる。絶対安全で仲がいいないくんとまろでもたまに青ざめている時があるw どんなに人気がある人でもTHE.漢であるあにきの前では なすすべも無い。
「……うん。初兎ちゃん、それはあにきに愛されてる証拠だよ…w」
「……そっかーw、そうだったね笑」
ほとけっちもそれを思い出して悟ったのか、2人して苦笑いである。初兎ちゃんだけがきょとんとした顔をしていた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
全員で森の入口に集合する。爽やかな風が吹き抜け、少し肌寒く感じ長袖のジャージを羽織った。隣にはランタンを持ったないくんがいた。
「ふつーにめっちゃ楽しみなんだけど」
「わかる。薄暗いのちょっとわくわくするよね〜」
「ね、まろとほとけっちも気になるし…w」
「それな!!なんかめっちゃいい雰囲気だったよね✨️」
「両方がっちがちだったけどww」
用意されているコースは3コース。スタートとゴールは同じで、それぞれの道に3分おきぐらいで1ペアずつ入っていっているみたいだった。
「そろそろだね〜」
「俺ら、いっちゃん右だっけ?」
「うん、そだよ〜」
ないくんと話していると時が早く過ぎる。気がつけば自分たちの番になっていた。
「行こっかー!」
「わっΣ(゚д゚;)結構、森だね」
「思ってたより、山道だったねwりうら転ばないように気をつけてよ〜」
「うん笑 流石に転びはしないよ〜w」
ランタンが行く末を照らす。木の葉が擦れて、さわさわと音をたてた。
「そーいえば今日ね〜」
とそこまで話した時に、ランタンの光が揺れる。後ろでずてっと音がして、ないくんが倒れ込んだ。
「ちょっと!?大丈夫?」
「ああ、うんw」
ぱんぱんとズボンの砂を払って立ち上がる。ないくんがちょっとぐらつき慌てて、体で支えた。
「俺がこけるなってりうらに言ったのにね笑笑」
「ほんとそれ、りうらに言ったくせに〜w」
「ってかほんとに大丈夫?」
「うんww多分wいけるいける」
ほんとに大丈夫かなと思ったけれど、ないくんが平気そうだから大丈夫かと思い直す。ないくんの隣にいると落ち着く。でもそれとともにどきどきと胸が高鳴った。昨日の夜、初兎ちゃんに言われたことがどうしても頭をよぎってしまうからだった。
はなしていることはいつもと変わりないけれど、2人で居られることに幸せを感じる。いつ手が触れ合わないかどきどきして、山道を歩いていった。
「あ!見て✨️藤の花が咲いてる!」
「ほんとだー!もうそんな季節か〜」
5月頃に花を咲かせる紫色の藤が頭を垂れていた。
「ちょっと写真撮ろ〜〜〜!」
「はいはい、ないくんも写って!!」
そう言ってないくんをぐいぐいと押す。はいはいと言いながら一緒に写真に写ってくれた。暗くってあまり写りは良くないけれど、たった一つの大切な思い出になる。
「それにしても、綺麗だねー、藤の花」
「普段見ることそんなに無いもんね〜」
暫くそこに留まって藤を観察していると、かさっと遠くの熊笹が揺れる。それは留まることなく、こちらに向かって揺れ続けた。
「んー、?虫かなんかがいる?」
「でもワンチャンお化けかもね笑笑」
面白がってそういった途端ジャージをぎゅっと握られる。
「りうら!!逃げるよ!」
ないくんは顔面蒼白で今にも倒れそうだ。
「いや、お化けなわけないからw」
そう言ってもまだ少し震えたまま、ジャージを握っている。ないくんがお化けが苦手だってこと今初めて知った。少し可愛いなと思いながらも、ジャージを握られていることに緊張していっぱいいっぱいだった。かさかさと葉を揺らすものの正体はすぐそこまで来ている。
……途端にピュッと飛び出したのはテンだった。いたちのような可愛いその小動物はそのまま反対側に走って消えていった。
「は〜〜〜〜、びっくりした」
「いや、ないくんはビビりすぎだってw」
「じゃあ、ほんとにお化けだったらりうらどうしてくれんの!?」
「wお化けなんているわけないじゃん」
「wwそれはそうだけど……いるかもしれないじゃん!!」
「ないくんおばけ苦手だったんだねw」
「だってあんなの怖いに決まってんじゃん、俺はお化け信じてるからね!!」
ないくんは駄々をこねる子供のようで可愛らしかった。気がつけば、森を抜けて田んぼのあぜ道を歩いている。このまま真っ直ぐ行けば、ゴールに着くはずだ。
暫く両方とも口を閉じて歩いていると、おもむろにないくんが口を開いた。
「あのさ、りうら。俺かっこ悪くてごめんね」
「え!?なんで?」
急に何を言い出したのかと、足元に向けていた視線をないくんに合わせる。ないくんの目は空中の一点を見つめていた。
「りうらはさ、俺に文句とか言わないけど…自分でも思うんだよね。俺、かっこ悪いなーってw」それにダサいしね、と言ってないくんは自嘲気味に笑う。
「りうらの前だと緊張しちゃって、挙動不審になっちゃうし…ほら、さっきだってこけるし、お化けにびびるし… デートに行っても全然彼氏っぽいことできてないじゃん、、、あにきが初兎ちゃんとキスしたって聞いて俺y「っそんな事ない!!」」
気がついたら口を出ていた。ないくんの話を聞いてたら、頭がぐるぐるして、もやもやして到底抱えきれないものになっていた。
「そりゃりうらだって、ほとけっちとか初兎ちゃんの話見たり聞いたりして、正直羨ましいなって思ったこともあるよ。ってか昨日だってそんな事考えてたし…」
「……やっぱそう思ってんじゃんw」
「でも、でもさ、」
言葉を紡ぐ。
「やっぱこんなないくんだからりうらは好きになったわけだし、ないくんがへたれな所は取り柄でもある訳じゃん…ないくんがスマートになっちゃたらりうら冷めるかもw」
えぇ、それは理不尽ってないくんが言う。静かな風がさらりと頬を撫でた。
「冗談は置いといてさw ないくんが出来ないなら、一緒に進んで行けばいいだけだし…」そう言って視界の端に手を映す。ぎゅっと目を瞑って、その手をぱしっと繋ぎとった。温かくて、少し骨ばった手を離さないようにぎゅっと掴んだ。
「ないくんがしてくれないなら、りうらからするし…!!自分のことだめなやつとか思わないで、、ないくんはずっとりうらの王子様だからさ!✨️」
「……そっか、りうらありがとね」
「にしてもりうら、思ったより勇気あるね笑」
繋がれた手を見てないくんが笑う。
「ッなっ//それは、とっさに、仕方なくだし///」急に顔が熱を持った。
「ふふっ笑笑 やっぱ俺の彼女はりうらじゃないとね、俺より俺の事分かってそう。りうらのおかげで元気でたよ、これからもよろしくね?」
「こっちこそだよ、りうらないくんにめっちゃ助けられてるもん笑」
━━━━━━━━━━これからもずっと一緒に居られますように。
すーっと弧を描いて消えた、空の流れ星に願っていつの間にか恋人繋ぎに変えられていた手をぎゅっと握りしめた。
————————————fin
お疲れ様でしたーー!
今回のお話は結構長かったのではないでしょうか?
今回は凜々様のコンテストに参加させて頂きましたm(_ _)m
コンテストに参加するのは初めてで色々不明瞭なこともありましたが、この小説にはとにかく自分の思う桃赤♀を詰め込ませて頂きました!(黒白♀と青水♀も圧倒的個人解釈ですwこのお話ではレクリエーションで無事青水も引っ付いています! )
楽しんで頂けたら幸いです✨️
一応表紙を載せておきます↓
▷nmmnにあたるイラストですので、スクショや保存等はご遠慮ください。
委員会とか部活動は完全なる想像です笑笑 結構頑張りました💪🔥
凜々様、これからも体調等に気をつけて頑張ってください!応援しています-`📢⋆
ここまで読んで下さりありがとうございました🙏またどこかでお会いしましょう。