人外屋敷。それはその名の通り様々な人外がいる屋敷。もちろん屋敷というだけあって広さはそれなりにあるのだが、所詮は屋敷。空きが無くなることは当然ある。この屋敷は個人部屋、二人部屋とあるが、数に限りがあるのは当たり前だし、人外の全員が全員ここにいるわけでもない。特に多いとされている人外は人形と呼ばれる者だ。球体間接の個体もいれば、完全に人間の見た目をしている者もいる。この人間の見た目をしている者に関しては、体は人間だからほぼ人間と言ってもいいかもしれない。人間を人形呼ばわりなんて、なんて倫理観がないのだろうと思うだろう。実は人間の見た目をした人形は、人間の死体が意思を持っている状態なのだ。人形になる条件は、死体が腐っていないかどうか。腐っていた場合は人形になれないが、腐っていなければ人形としてまた動くことが出来る。たとえ内臓がなかったとしても。だが倫理観がないことには変わりない。一体誰が、こんなことを決めたのだろうか。
軽く月華さんに人外屋敷の説明をされた。人外についても詳しく話された。”人形”についても。それから軽く雑談をしながら人外屋敷へと足を運ぶ。
「月華さん、にしても急すぎますよ。物が少なかったから良かったものの、いきなり引っ越すとか……しかもまだ全然関わったことない人でしょ…??」
「…だな。ただ、協力し合えると思ったんだ。」
月華さんは、やたらと”協力”に執着している。昔、きちんと仲間同士で協力し合えなかったことを、後悔しているらしい。だからなのか、協力に関することなら人一倍熱い思いがある。
「一応あまり関わりないのなら警戒はきちんとして下さいね。」
「分かってる。」
やっとのことで人外屋敷に到着。月華さんが扉をノックすると、一人の男の子が出てきた。年は俺らと同い年…か??
「待ってた。月華。そして、そこの君が月華の言ってた子??」
「そうだ。」
まさか月華さんが俺のことを知らない人に話してたとは思わなくて困惑していたら月華さんが代わりに返事をしてくれた。
「……月華、もっと警戒心持ちなよ。知らない人間に他の子のこと言うのはやめときな。いくらなんでも世間知らずすぎ。ほんとに犯罪とかに巻き込まれかねないから。」
俺の困惑していた様子から何かを察したのか、その男の子は月華さんを説教し始めた。
「あ、あの…多分月華さんは最近疲れてたんですよ、きっと。…ほら、その、なんでしたっけ、人外??を倒しているから疲れが取れてないのかも……。」
「だとしてもだよ。俺だったから大丈夫だった、って言っちゃあれだけど、もし君の身に何かあったら月華はどう責任をとればいいと思う??」
う…それは確かに…。
「すまない、剣。俺の警戒心が薄すぎたばかりに……。今後は気を付ける。」
深々と月華さんに頭を下げられる。
「い、いや大丈夫ですよ。」
「っと、同居するからずっと外にいるわけにもいかないし、入ってよ。」
俺と月華さんが仲直り(?)した後に男の子は人外屋敷に入れてくれた。
「あ、あの、お名前は…??」
「ん?あぁ、俺か。そういえばまだ名乗ってなかったな。俺は霧咲月弥。よろしく。剣。……あ、月華がそう言ってたから剣って呼んだけど嫌だったら言って。」
「嫌だなんてとんでもない…!これからよろしくお願いします…!!」
月弥さん、いい人だな…ってまだほんの少ししか話してないのにこんな警戒心すぐに解いていいのか…!?そして俺の平穏な日常は終わりを遂げた。人外とこれからとんでもなく関わることになるんだから。
「あー、それと、剣、敬語いらない。見た目とか年齢関係なしに仲良くしたいし。」
「俺もそれがいいと思う。」
月華さんが同意する。
「……月華がこう言ってあげれば良かったのに今まで言わなかったの?」
「…………たくなかったから……。」
「ん??何、聞こえない。」
「引かれたくなかったから……。俺に敬語外せなんて言われて引かれたく、なかった……。」
意外すぎる理由に俺は目を見開く。月華さんは恥ずかしそうにそっぽを向いている。あのポーカーフェイスか不機嫌な顔しかしてないような人がそんな風に思っていたなんて。ちょっと可愛いな、なんて。
「……っははは!!!そんなことで引く人いるわけないじゃん!!月華馬鹿なの!??っっふふ……。」
ツボに入ったのか月弥君は笑っていた。俺も思わず笑ってしまった。
「な、なんだ二人して……。」
「っ、ごめん月華君。」
ようやく落ち着いて軽く謝罪をすると、月華君は固まっていた。
「……??月華君??」
「月華君……か。いいな、さん付けよりよっぽどいい。」
「仲良しだなぁ二人とも。それじゃ二人の部屋はここね。」
案内をされたのは広めの二人部屋だった。ほんとになんなんだこの屋敷。ここの屋敷の主人と呼べる立場も分からないし……月弥君が主人…はさすがにないと思うし……。まぁ考えていても仕方ない。今日からここが俺達の家になる。それだけは受け止められた。
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