「僕は何が起こったかわからなかった。彼女は泣きじゃくって話せる状態じゃなかった。だから僕は彼女を抱きしめた。初めて女性を抱きしめた」「ねぇ車の中の人」
アスミはダイの話にどんどん引き込まれていく。これは本当の出来事なのかわからないのに。
「その車の中にいたのは担任の畠中だった」
「先生? なんで咲希さんと先生が……」
ダイはアスミを見た、いつの間にか彼は泣いていた。
「彼女は畠中と付き合っていた」
「……」
「彼は彼女と体の関係を持ってて、その夜も彼女を車の中で関係を持って……腹上死したんだ」
「フクジョ……ウ?」
ダイは目を瞑り口をぐっと閉じて何か考えていた。体が震えている。
「女の子にこういう時はどう言う言葉で言えばいいのか……」
「私、ダイみたいに本を読んだり書いたりしないから……言葉あまり知らなくてごめん」
「セックス中に畠中は死んだんだ」
アスミは言葉が出ない。
「僕も彼女を好きだったように彼女は畑中が好きだった。そして2人は付き合い僕にはないきらきらとした青春を謳歌していたんだ、先生と生徒……その関係を超えて。悔しかった。彼女に事情を聞かなくても車内で畠中は半裸だった、みっともない身体をしていたよ……既婚者で子供もいる40過ぎのおっさんがよ……生徒に手を出しただなんて」
アスミも車の中で武臣と体を持ったことを思い出した。ほぼ無理やりだった。
「彼女が泣いていたのは……畠中が死んだことだった」
それが自分と違う、アスミは思った。
「なんで僕を呼んだんだろう、呼びやすかったんだろうな。で、どうしようって泣き喚いてさ。病院でもよかったろうになぁ……でも病院にあのまま通報していたら、あの格好で通報したらさぁ大変なことになる」
「そうよね、家族の人も……ただことじゃないって」
「それか襲われたことにしよう、そう僕が言ったら……それだけは嫌だって」
アスミは思った。ダイの好きな人はもうダイのことは考えていなかった。
アスミはダイの息が上がっているのに気づく。手もさらに強く握られる。
「僕は気づいたら咲希の首を締めていた」
「……!!!!!」
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