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「私たちは別にいいの。好きでやっていることだから。でも……。あいつは許せない!桜のお金まで使っていたなんてマジ最悪。クソヤローだわ」
遥さんの眉毛が吊り上がっている。
「ごめん。俺、外にいたから最初の辺り聞こえなかったんだけど。説明してくれる?結局、桜の金って使われてたの?」
そうか、蒼さんは外にいたから聞こえなかったんだ。
「実は……」
私は優人からされたこと、彼が言っていたことを伝えた。
「悔しいよな。自分の貯めた金なのに。荷物も勝手に捨てられて……」
蒼さんは私に気を遣ってか優しい言葉を選んでくれた。
「ねぇ、桜。向こうの親とか知らないの!?バカ息子のことで相談があるって言ってせめてお金だけ返してもらえば?」
私だって本当は返してほしい。けれど私は通帳の場所も知っていたのに引き出すことをしなかった。彼の言いなりになっていた。もしもっと早く逃げていたらこんなことにはならなかったのかもしれない。
あとは……。
「私、彼と地元が同じなんです。だから仲良くなったっていうのもあって。実は私の父は、彼のお父さんの会社の社員なんです。小さい会社ですけれど……。今のところは仲良くやっているみたいだし、お父さんも仕事をすることが好きみたいなので、彼の親にこのことを伝えて気まずくなったりするのも嫌だし、最悪、父の方が酷い仕打ちを受けるかもしれないと思うと……。私から向こうの家族へ連絡することもしたくありません」
親には迷惑をかけたくない。頑張って勉強してくると言って上京したわけだし。
「世の中狭いんだね」
遥さんが、はぁぁぁと嘆いている。
「これからどうするんだ?」
蒼さんから確信的な質問をされ、ドキッとする。
これから……。
こんな窮地になるとは思っていなかったから、さっきから一生懸命頭を働かしてるんだけど……。
私が無言でいると
「桜、住むところはしばらく我慢をして《《ここ》》にしなよ?私の部屋、使っていいから?家賃もいらない。もうすぐ給料日だし、そこまで何とか耐えな?私がお金を貸してあげるって言っても絶対嫌だって言うでしょ?だから自分のモノとかは買えないかもしれないけど、ここに居れば食べて、寝て、仕事に行くくらいのことはできるから」
私の性格を理解してくれている遥さんの言葉に泣きそうになった。
でもここって今は蒼さんの家だし、甘えてもいられない。
「俺も構わない。部屋もあるし。桜の金が貯まるまで居ればいいよ。姉ちゃんもここならすぐ来れるし」
蒼さんは気にするなと言ってくれた。
「でもっ、そんなんじゃ……」
「んー。そうだな。じゃあ、ご飯作って?桜と俺の。そうしてもらえれば外食代が浮くし、嬉しい」
蒼さんの急な提案、ご飯を作る?そんなことでいいの?
「ちょっと、蒼、そんなに甘えないでよ!?桜がどんな目に……」
「はい、ご飯作ります!」
遥さんが怒る前に制止する。
「桜……?」
「それだけじゃ足りないと思うので、家事を全般的にやります。あと……。マッサージも!私、得意なんです」
「それじゃあ、決まりね?しばらくよろしく。桜」
蒼さんがフッと笑ってくれた。
本当にこんなに甘えてしまっていいのだろうか。
というか、蒼さんは男の人だから同棲ってことになるの?
いや、気持ちがないから同居?
男の人でもオネエさんだからその辺はどう思っているんだろう。