深々と頭を下げた私に
「人にものをお願いする時に、アナタは立っているのね。ふーん」
と楽しそうに言う遥香は、どうなんだ?
遥香はお願いなんてしないか……するのは命令だよね。
「そんな回りくどい言い方じゃ、分からないと思うけど?」
池田も遥香に負けないくらい楽しそうだ。
「そうね、バカにははっきりと言わなきゃいけないから疲れるわね」
「そういうことだな」
私はここまで頭を下げ続けていたけれど、血流がおかしなことになってくらくらしたからゆっくりと頭を戻す。
「知らないようだから教えてあげる」
そう言った遥香は、こちらに向かって座り直すと足を組んだ。
「あのね、人に何かをお願いするときには、地面に膝をつくの。分かる?」
「……」
「乞うのよ。跪いてね」
「……」
「さあ、どうする真奈美?」
「土下座ってやつだな」
池田も体の向きを変えて、完全に楽しんでいる。
この男は愛人になれ、というのを断られた恨みがあるのだろうが、元の言いぐさが腐っている。
「いやならいいのよ。クビにするだけ」
「……二人のおっしゃる土下座というものをすれば……私はクビにはならないのでしょうか?」
「ふふっ……震えているの?いいわよ、クビにはしないわ」
あともう少しなのよ……
私は意を決して、絨毯に両膝をつき、両手をつく。
……っ……
何度も掃除したふわふわの絨毯が指に絡み、こんな毛足の長いふわふわとした絨毯とは無縁の両親を思い出す。
今は私が耐える時……両親を思い出して絨毯をぎゅっと握った私は
「遥香様……私をクビにせず、このままここで働かせてください。お願いします」
と……頭を下げた。
「アハハッ……不幸な人間って、本当にずっと不幸なのよね。親からも不幸を引き継いで哀れだわ」
アンタにだけは言われたくないセリフよ!
「その不幸の代表みたいなのが真奈美なのよね」
誰のせいだと思ってるのっ⁉
「なかなか実際に土下座をされることってないよな」
「私と真奈美はこういう関係ってことよ」
どこまで腐ったセリフを吐くのか……と思ったとき
えっ……?
ポタポタポタ……ワイン……?
「はーい、じゃあお望み通りにお仕事をさせてあげるわ」
「遥香の優しさか?」
「バレた?」
「ワインがもったいないけどな」
「そうね。頭からかぶるには美味しいワインだものね。お菓子に合うわよ」
「そうだな」
私の頭からワインをぶっかけて絨毯まで濡らしておきながら、笑って話をしている二人は魂が腐っている。
「かしこまりました、遥香様。私の頭にかけられたワインが絨毯を濡らしていますので、清掃させていただきます」
私は絨毯を握りしめ、下を向いたままはっきりとボイスレコーダーに向かってそう言った。
コメント
4件
腐りきってる😠😠😠堪えるた先に明るい未来がありますように🙏
一つ一つの証拠が遥香,池田を地獄に堕とす。真奈美ちゃんの思いは必ず叶う
今は堪えるしかないけど酷すぎる(>_<) 確実に証拠を積み重ねて、ちょっとスピードアップしなきゃね😓 ゴールはもうすぐだよ! 負けるな‼ 真奈美ちゃん!(^^)!