絨毯を掃除する間も飲み食いを続けていた遥香と池田の会話は、相変わらずくだらない噂話だった。
「大門製鉄の奥様と娘がパーティーをするって。呼ばれたんだけど」
「真夏のパーティーか。ホテル?」
「ううん、家。うちの玄関ホールみたいな感じのパーティー会場があるのよね、大門の家って」
「俺、行ったことない」
「私は一度だけ」
「へぇ、今回は婿探しパーティー?」
「ううん、女だけの暑気払いみたい」
「行くんだろ?この界隈で大門の奥様は、わりと有名人だし」
「最近娘も目立っているのよ、急にね。今回はサスティナブルがテーマのパーティーだって。なんでもサスティナブル、サステナビリティって言えば流行の最先端って勘違いしている女よね」
遥香もそういう投稿していたくせに……と、私は絨毯を何度も繰り返し拭き取りながら思う。
「あ、真奈美」
「はい……」
私が絨毯に手をついたまま遥香を見ると
「ドレスのリメイクも出来る?唯一出来ることなんだから、出来るわよね?」
と、彼女は私に圧を掛けるように言う。
「やったことはありませんけど……素材によっては出来ると思います」
「参加者は、どこかサステナビリティを感じさせないといけないから、再利用素材のバッグとかドレスって考える人が多いと思うのよね。私はリメイクドレスで行くわ」
「2、3点リメイク候補のドレスを預かってもいいですか?見せていただいてから、出来る形を遥香様にご提案します」
「いいわよ。それが終わったら、ドレスを見せるわ」
「はい、お願いします」
とにかく今は遥香のご機嫌を損ねるわけにはいかない。
「このピンクのドレスは友達の結婚式でのブライズメイドドレスだったの。たった6000円くらいで友達たちとお揃いで、私は気に入らないまま終わったものね。このネイビーのドレスは上下の素材違いが特徴なんだけど、いまひとつだったし、このブルーはシンプル過ぎるかなって感じ」
「新品ですか?」
「どれも一度は着たわ」
「元のデザインと素材を考えて、来週には遥香様にご提案できるようにします」
ドレスと言っても、ウェディングドレスのようなボリュームのあるものではないので、よく考えれば出来るはず。
私は3着のドレスを預かり、ミシンのある部屋にドレスを置いてから自室へ戻る。
はぁ……遥香が事件を覚えていなかったことが大ショックだ…
よし…今日の【奴隷家政婦】を投稿しようか。
『「人にものをお願いする時に、アナタは立っているのね。ふーん」
「そんな回りくどい言い方じゃ、分からないと思うけど?」
「そうね、バカにははっきりと言わなきゃいけないから疲れるわね」
「そういうことだな」
「知らないようだから教えてあげる。あのね、人に何かをお願いするときには、地面に膝をつくの。分かる?」
「……」
「乞うのよ。跪いてね」』
ここで初めて池田を登場させると
“奴隷使いは何人いるんだ?”
“家族の中で虐げられているパターン?”
“何かヒントも出せないくらい奴隷ちゃんは危険に晒されているのか?”
“いや、すぐにヘルプ出せよ。みんなが助けに行くぜ”
“助けるより、頭のイカレタ主を特定したいってだけだろ”
コメントが途切れないし、再投稿される数も多く、どんどんと拡散される。
よし……いよいよ、もうすぐだ。
そう思った私は、日曜日に両親の住むアパートへ帰った。
コメント
3件
そろそろ真奈美ちゃんに光見えてくる?続き気になりますが寝ます 明日も楽しみにしてます✨
あれってなんでもすぐ忘れちゃう? 散々罵しっておいてもコロッと。今更だけどおバかさんだよね。 池田は参加できないパーティーか… 送迎はするのかな?大門製鉄はサブコン池田と違って中薗と同じ大手なのかな?だったら呼ばれるわけない?あれだってたったの1回って🤭 真奈美ちゃん癪だけど素敵なサステナビリティなドレス作っさしあげて〜。あれの機嫌損ねるわけにはいかない…まだ。とにかくもう少し… ご両親に会いに行くんだね🥺パワーをもらいに…。真奈美ちゃん後をつけられてないか心配。なにもかも心配で仕方がない。全てが上手くいきますように…(-人-〃)祈
ご両親は平穏に暮らしていらっしゃるのかしら⁉️ 真奈美ちゃんが唯一気に掛かる事だよね😞 ご両親の為にも真奈美ちゃん自身の為にも…あと少しの辛抱よ😤