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ども、佐野勇斗です。
絶賛イライラモードなんだけどさぁ、、
いや、別に機嫌悪いとかじゃないんだけど…
スタジオの空気も悪くないし、レッスンも順調。
音だって合ってるし、フォーメーションも綺麗。
ただ…まぁ、問題があるとすれば、ひとつだけ。
吉田仁人。
あいつがさ今日に限って、やたらとみんなに囲まれてんの。
柔太郎と並んで仲良さそうに鏡見て、太智に気遣われて、舜太に軽口叩かれて、その全部を「いつも通り」みたいな顔で受け入れてんの。
なに?ほんと…なんでそんな無自覚なんだよ
俺がどれだけ近くにいようとしても、仁人は平気で俺の視界の外に行くしさ。
それが悪気ゼロなのが余計に腹立つ。
いや、別に独占したいわけじゃないけども
あぁ……いや、嘘。
したいけどっ,,
でもさ、俺の大事な人みたいに扱われるのは、 正直、俺だけでよくね?
そんなこと口に出したら「うぜー笑」「はいはい」って流されるから、今日も我慢してるだけだけども…
いやぁ、、流石に我慢の限界だわ。
スタジオの空気が、少しだけゆるんだ瞬間だった。
レッスンの合間、鏡の前で振りを確認していた柔太朗の横に、仁人が自然と並び、二人で同じ動きをなぞるように腕を動かしていると、距離の近さなんて気にしていない様子で柔太朗が優しく声をかけた。
「ここ、仁ちゃんの重心の落とし方、めっちゃ綺麗」
「まじ?」
「うん。だから、ここをね、こう繋げるとさ___」
「あぁ〜!なるほどね」
《そんなに近づかなくてもいいんじゃないんですかぁ??仁人さんよー。にこにこしちゃって。彼氏の俺ですら滅多にみれないんですけどー??》
真剣に聞きながら頷く仁人の背中に、今度は太智が何気なく手を添えた。
「仁人、無理しとらん?今日ずっと集中しっぱなしやろ」
「いや、全然平気」
「ほんまに?ちゃんと水分とった?」
《ちょっと待てぃ。なんなんだその手は!!その手は必要な・ん・で・す・か!?》
短く返したその横から、太智に続いて舜太が笑い混じりに割って入った。
「平気って顔ちゃうやん、笑ちょっとは休んだら?」
「大丈夫だって笑」
そんなやりとりを、少し離れた場所で見ていた勇斗は、気づかないうちに唇をきゅっと噛んで険しい顔をしていた。
《はぁ…もう、近いしよぉ… 当たり前みたいに触られすぎじゃね、?彼氏の前でそんなことしちゃう?あ〜あ、きっと無自覚なんだろーな…》
なんて、理屈じゃない感情が胸の奥でざわつく。
「……仁人〜」
呼ばれて振り返った仁人は、いつも通りの顔だった。
「ん?なに?」
「こっち来て」
「は?なんで?」
「いいから」
声のトーンが低いことに、仁人は一瞬だけ違和感を覚えたものの、言われるまま歩み寄った。
すると勇斗は間を詰めるように立ち、周りの視線なんて気にしない様子で、真っ直ぐ仁人を見つめる。
「さっきからさ」
「うん?」
「俺の仁人、みんなに取られすぎじゃない?」
「…は?」
思わず間の抜けた声が出た。
「いやいや意味わかんないんだけど笑」
「わかれよ」
少しだけ強くなった声と一緒に、勇斗の手が仁人の手首に触れる。
「柔太郎と並んでるのも、太智が気にかけてるのも、舜太が距離近いのも、全部嫌」
「急に何言ってんの」
「急じゃない」
勇斗は、困ったように笑った。
「俺、仁人のことになると余裕なくなるんだよ…いつだって仁人のことで頭いっぱいだし、気が付けば仁人のこと目で追ってるし、暇があれば___」
「……ねえ、勇斗、」
「なに」
まだ少し拗ねた目で見てくる勇斗に、仁人は小さく息を吐いてから視線を下げる。
「ごめん」
「……え?」
「嫌な気持ちにさせてたなら、ごめん」
そう言って、今度は仁人の方から一歩近づき、そっと勇斗の袖を掴んだ。
そして顔を上げて、少しだけ柔らかく笑って言った。
「でもさ、 今の勇斗めっちゃ可愛い。 そんなに拗ねる勇斗滅多にみれないし、可愛いじゃん笑」
「……それ今言う?」
「言った。」
勇斗の頭を優しく撫でていた手をそのまま頬にスライドさせて、優しくつついた。
「大丈夫だって。俺、ちゃんと勇斗のそばにいるから。だから拗ねないで。」
一瞬固まってから、佐野の腕がゆっくりと仁人を包んだ。
「……ずるい,,///」
「なにが笑」
「…そうやって最後に甘やかすとこ。俺が許しちゃうの知ってるくせに」
《こういう時だけ触れてくるのも、撫で声で話すのも、俺がこういう時の仁人が好きなの知ってるくせに,,》
仁人は小さく笑って、もう一度だけ言った。
「ほんとに、ごめんね。大好きだよ勇斗。誰よりも」
その声は、誰よりも近い距離で、勇斗だけに届いていた。
「じゃあ帰ったらちゃんと甘やかして。」
「それはちょっと…」
「じゃあ…"ここにいる吉田仁人は俺の恋人だからぁ!!"」
「おいおいおい!は!?ちょ、声大きい」
「いいでしょ。事実だし」
後ろから、舜太がニヤニヤしながら言う。
「勇ちゃん独占欲だだ漏れやん笑」
「うるさい」
太智も肩をすくめた。
「仁人、罪な男やなぁ、笑」
「は!?俺のせい!?」
柔太郎は少しだけ距離を取って、優しく笑った。
「じゃあ仁ちゃん、ちゃんと独り占めしたら?笑」
「おまっ、、余計なこと言うな!」
その一言で、佐野のスイッチが入った。
「……仁人」
「なに」
「今日、俺の隣な。移動も、待ち時間も」
「はぁ?」
「嫌?」
仁人は少し黙ってから、視線を逸らす。
「……別に…わかったよ、」
その返事に、佐野は一気に表情を緩めた。
「よし」
「勇ちゃん単純すぎ笑」
「だって可愛いんだもん」
「言うな!」
耳まで赤くなる仁人を見て、佐野は満足そうに微笑んだ。
そして、そっと距離を詰めて低く囁く。
「ちゃんと俺のって自覚して」
「…してないけど..,,///」
そう言いながらも、仁人は振りほどかなかった。
その様子を見て、太智がぽつり。
「もう俺ら入る隙ないな」
「せやな」
「なんだかんだお互い様なんだよね結局笑」
end.
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