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「あ! もしかしてめめ、照が控室入って来る前にいたのお前だろ!!」
「へ? どういうこと??」
「お前に照のこと話してる時にさ、俺が『そこに誰かいなかったか?』って言ったの覚えてないか? あの後すぐに照が入って来たから気のせいかと思ってたけど…」
「あー、あの時か」
深澤がドアを開けて確かめようとしたら、ちょうど照が入って来たんだよな。
その前って何話して…。
「あ」
「思い出したか? あの時も誤解されそうな内容だとは言ったけど…まさかめめが聞いて誤解してるとは」
「え、誤解…?」
蓮が俺と深澤を交互に見て、訳が分からないって顔してる。分かんないのはこっちだ。あんな一瞬の会話だけで、どうしてそんな盛大な誤解をするんだよ。
いや、俺の言い方も悪かったかもしれないけど。
…思い返してみると『俺、深澤のこと好きだから』とか言っちゃってたわ。そりゃ誤解もするわ。
「とりあえず、お前はめめの誤解を解け。こっちは俺が何とかするから」
「こっち?」
溜息を吐きながら深澤が指差す方を見ると、顔を少し引きつらせた照が腕を組んでこっちを見てた。その横では阿部ちゃんが頭を抱えてる。
これは、うん。深澤じゃないと収めらんないわ。
「分かった。…何かごめん」
「いや、話聞いて貰ったのは俺だから。健闘を祈るわ…」
「お前もな」
「佐久間、素直にね」
最後に阿部ちゃんがそんな言葉を残して、俺と蓮以外全員控室から出て行った。蓮はまだ困惑顔で俺のことを見上げてる。
改めて蓮の方に向き直って、考えた。
最後って言われて、勝手に決めんなって腹が立ってここまで来たけど。でもさ、ちゃんと向き合ってなかったのって俺もなんだよな。
蓮が何も言ってくれないからって言い訳して、ただキスしてくれるのを待ち続けてた。
それじゃ駄目だ。ちゃんと、言わないと。
阿部ちゃんの『素直にね』という言葉が響く。
「…なあ、蓮。何で俺にキスしたの」
「それ、は…」
「俺さ、蓮にキスして欲しくて、いつも待ってた。眠ってれば蓮がキスしてくれるから、いつも寝た振りして…」
「え…」
蓮が驚いた顔で黙り込む。何度か口を動かして何か言おうとして、でも何て言ったらいいか分からないみたいに。
俺も何て言ったらいいか分かんない。分からないから、このまま素直な気持ちを伝えるしかない。
蓮の目をじっと見つめながら口を開いた。
「俺、蓮のこと好きだよ。恋愛の意味で」
「佐久間くん…」
「誤解させるようなこと、確かに言ってたかもしんないけど。深澤は仲間として好きだし大事。でも、蓮への好きは全然違う。蓮にしか向けない特別の好きだから」
パイプ椅子が軋む音と共に蓮が立ち上がる。目を逸らしたくなくて、その動きに合わせて蓮の顔をじっと見上げた。
蓮の顔が少しだけ泣きそうに見えて、思わずその頬に手を伸ばす。
俺の指先が軽く頬に触れると、蓮がその手に自分の手をそっと重ねた。
「…佐久間くんは、きっと俺のことそういう対象に見てないって、そう思ってた。だから俺、ずっと自分の気持ちに蓋をしてて…」
「うん…」
「だけど、佐久間くんの寝顔が綺麗で可愛くて…気付いたらキスしてた。駄目だって分かってるのに止められなくて。勝手にキスして、ごめん…」
蓮の言葉があまりに直球過ぎて、頬が熱を持っていく。
そんな真っ直ぐな目で好きな人に『綺麗』とか『可愛い』とか言われたら、嬉しいけどそれ以上に照れくさい。