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「平和だなぁ……」
縁側でそう呟きながら、元貴は隣を見る。
赤髪が風に揺れていた。
綺麗。
今日も綺麗。
なんなんだろうほんと。
「涼ちゃん今日もかわいいね」
「毎日言うのやめてよ」
「えー」
「えーじゃない」
でも少し照れた顔をするから、可愛い。
好き。
もう何回目かわからない。
多分毎日更新されてる。
「おーい!」
滉斗が走ってきた。
「客来てるぞ」
「客?」
「旅商人」
あ。
嫌な予感。
「へぇ、賑やかだね」
広場へ向かった涼架が、楽しそうに辺りを見る。
その瞬間。
周囲の空気が変わった。
「……は」
「綺麗……」
「なんだあれ」
ほら。
やっぱり。
元貴は無言になった。
視線が全部涼架へ向く。
男も女も関係ない。
みんな見る。
だって綺麗だから。
知ってる。
そんなの俺が一番知ってる。
商人の一人が、すぐに近づいてきた。
「これはこれは、美しいお嬢さん」
あー。
最悪。
「ぜひうちの商品を見ていきませんか?」
「商品?」
「貴女ほどの方に似合う簪がありまして」
距離近。
近い。
なんでそんな近いの。
元貴は黙って見ていた。
嫌だった。
なんかすごく。
胸の奥がもやもやする。
「髪も美しい。まるで宝石のようだ」
「そうですか?」
「えぇ。こんな方は初めて見ました」
(たぶんこの人絶対ボクのこと女の子だと思ってるよなぁ…)
涼架は困ったみたいに笑ってる。
褒め言葉に慣れてない顔。
でも。
その顔すら可愛い。
嫌だ。
見せたくない。
なんでそんな顔、他のやつに向けるの。
気づいたら身体が動いていた。
す、と涼架の前へ出る。
「……元貴?」
「涼ちゃん」
自分でもびっくりするくらい、声が静かだった。
「こっち」
「え?」
手首を掴んで、 そのまま引き寄せた。
ぴったり隣に寄る。
「…ねぇ元貴」
涼架が小声で言ってきた。
「なに」
「近い」
「そう?」
離したくない。
なんでかわからないけど。
すごく嫌だった。
商人を見る。
にこ、と笑う。
「うちの涼ちゃん口説かないでもらえます?」
滉斗が後ろでなんか変な声出してた。
いつものことだけど。
商人が目を丸くする。
「おや、恋人でしたか?」
「違くもないかも」
「違うよ!?」
涼架が真っ赤になる。
でも俺は離さない。
kurara
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かめちょん
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#ご本人様とは一切関係ありません
kua
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「とにかく、涼ちゃん困ってるんで」
「ボク困っては……」
「困ってる」
「……うぅ」
だって困ってるように見えた。
というか。
見せたくなかった。
他のやつに。
商人は苦笑して去っていった。
やっといなくなった。
なのに。
まだ胸がもやもやする。
「……元貴」
「なに」
「怒ってる?」
「別に」
別に。
……別に、じゃないか。
自分でもよくわからない。
なんでこんな嫌なんだろ。
村人が涼架見るのも嫌。
褒められるのも嫌。
今日なんか特に嫌。
「嫉妬えぐ」
滉斗が笑う。
「うるさい」
なんか今、放っとくと変なこと言いそうだった。
だからそのまま歩く。
後ろから足音が追いかけてくる。
「待って元貴」
「……」
「元貴〜」
無視したかったわけじゃない。
ただ。
うまく喋れなかった。
川辺まで来て、ようやく止まる。
夕陽が水に反射してた。
綺麗だな、と思った。
でも隣の赤髪の方が綺麗だった。
「……そんな嫌だった?」
涼架が隣で聞いてくる。
元貴は少し黙った。
それから、小さく言う。
「嫌だった」
涼架が目を瞬く。
「なんで?」
「だって」
なんでだろ。
いや、わかってる。
「涼ちゃん、綺麗だから」
「だからどっか行きそうで嫌」
言った瞬間、自分で思った。
きも。
俺めちゃくちゃきもい。
でも止まらなかった。
「村の人に囲まれるのも嫌だし」
「嫌なんだ」
「嫌」
「子どもにも嫉妬しそう」
「おもた……」
「だって好きだもん」
本音だった。
隠せない。
涼架はしばらく黙っていた。
怒るかなと思った。
呆れるかなとも。
でも。
「……変なの」
小さく笑った。
その声が優しかった。
次の瞬間。
袖を、ちょこんと引かれる。
元貴は目を見開いた。
「ボクは元貴の隣が一番楽だよ」
夕陽が赤髪を照らしてる。
綺麗だった。
まただ。
また好きになる。
「だからいなくならない」
無自覚なんだろうな、この鬼。
好きな子にこんなの言われて平気なわけない。
元貴は顔を覆った。
「……無理」
「なんで」
「好き」
「知ってる」
「もっと好きになった」
「増えるものなのそれ」
くすくす笑う声。
その横顔を見ながら。
あぁたぶん俺、一生この鬼に勝てないな。
と思った。
コメント
1件
うわあ、もう、元貴の嫉妬が痛いほど伝わってきた……。「涼ちゃん綺麗だからどっか行きそうで嫌」って、ここまでストレートに言えるのズルい。でも涼架の「ボクは元貴の隣が一番楽だよ」って返しが優しすぎて、こっちまでほっこりした。あと夕陽の川辺のシーン、すごく綺麗に浮かんだ。このもどかしくて温かい距離感、めちゃくちゃ好きです。