早朝、なんとなく目が開いて、そのまま目を覚ました僕。2日目は多分真希の生理が一番酷い日で、一番情緒不安定な日だから気を付けなければ!と意気込んでいた瞬間。
「あちゃ~・・・」
真希のパジャマと白いシーツが真っ赤に染まっているのを見てしまった。
どうしよう。
「どうしよう」で頭が埋まること約1分。
「真希、ごめんね、一回起きて」
僕は「起こす」を選択した。
いや、シーツを洗濯するのはそうだけど。かけてないから。スベってないし?
「ん・・・」
真希もさすがに違和感に気づいたのか、パジャマを見た。
みるみるうちに真希の目に涙が溜まっていく。あー、罪悪感。
「ごめん・・・その、汚れてないか・・?悟」
「僕は大丈夫だよ、気にしないで。じゃあ、着替えよっか」
「シーツ、私、洗うから」
「だーめ、僕が洗うよ。それに今日は休みだから。ゆっくりしてて」
真希が着替えている間、僕はシーツを一度水につけてから洗濯機を回す。それと真希の着替えたパジャマも洗濯機に入れて。
洗面台から帰ってくると、着替え終わったらしい真希がキッチンに立っていた。
何してんだろうな~。あ、ココアのにおいする。
「ココアいれてるの?」
「ん、コーヒーは駄目だから仕方なく」
「仕方なくですか・・・」
「コーヒーの方がうまいのにな。もしくはプロテイン」
「プロテインなんて飲んでたらもっとお腹痛くなるでしょーが」
「わかってるし。ほら、お前のも」
「わ、いれてくれたの?ほんと真希って優しいよね」
うるせぇ、と真希が言う。耳が赤くなっているのが見えた。
あー、照れちゃってもう。可愛いなぁ。
あ、そういえば。
「真希、今日硝子来てくれるって」
「硝子さんが?なんで?」
「真希が心配だからだと思うよ」
「でも医務室は」
「今日は特に大きい任務ないみたいだからね。あと明後日も」
「まじか・・・」
噂をすればなんとやら。扉をたたく音が聞こえた。多分硝子だとおもう。
「上がっていい?」
ほら、やっぱり硝子。
「いいよー」
私の部屋なんだけど、という真希の言葉は聞かないことにして。
「真希、薬もってきたからのみなよ」
硝子はてきぱきと動いている。さすがは本物のお医者さん。いや、ずるしてるんだけどね。
「真希、調子はどう?」
「まぁ、それなりっすね」
「適当だな・・・詳しく教えて」
「軽く頭痛があるくらい」
「頭に来るって、結構酷いんじゃないの」
「・・・」
沈黙は肯定、と硝子は来ていた上着を脱ぎながら言った。
「ま、いいよ。そういえば朝ご飯食べた?」
「食べてないよ」
僕が答える。
「なんで君が・・・」
「だって真希絶対食べたっていうじゃん」
「ああ、それならしょうがないか」
硝子は冷凍してあった食パンをトースターで焼いて、すごい長年一緒に住んでる3人みたいになじんできた。
真希はトースト半分。やっぱりお腹が痛くなるんだろーなー。いつもあとからちょくちょく冷蔵庫あさってるけどね。
真希いわく、「食べると絶対お腹痛くなるけど結局食べる」らしい。
「洗い物は五条だな、よし」
何が「よし」だよ。いやまあやるけどさ。
「あ、真希、薬ね」
「悟ー、みずー」
「僕は水じゃありませーん。はい、水」
結局渡すのかよ、と真希。
「よし、じゃあ真希、一緒にベッドタイムだな」
「・・・言い方がなんかいやらしい」
「そこは卑猥って言って」
「意味わかんねーっすよ」
真希が寝てから1時間くらいがたって、硝子のケータイが鳴った。ケータイは古いか。スマホだね、スマホ。
「はい、もしもし・・・はい、あー、はい、わかりました、では」
「なんだって?」
「急患だってさ。しかも明日までかかりそう。真希にはそう伝えといて。だから明日も来れなさそうだな」
「了解、気を付けてね」
上着を手に取って靴を履いて、部屋から出ようとしたところで、硝子が立ち止まった。
「なんてな。学長から報告書をって」
「え、なんでだましたの・・?」
「引くなよ」
「べ、別に、引いてないですけど・・・?」
「まあ、君が寂しそうだったからかな。どうせ真希を取られたとか思ってたんだろ」
「ソウカモネ」
硝子は帰っていった。僕の周りにはどーしてイケメン女子しかいないのかしら。
もぞもぞとベッドの中で動く気配がした。
「あ、起きた?」
「ん・・・しょうこさんは」
「急患だって。明日もこれなさそう」
「ん」
眼鏡をかけてから起き上がった真希の頭をわしゃわしゃと掻き回す。
不機嫌そうな顔でなんだよ、と真希が言う。
「ごめんごめん」
時刻は10時。まだまだ真希を労わってあげたいし。今度は何をしてあげようかな。
そんなことを考えながら、真希と一緒にココアを飲む。
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