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#憑依
成瀬りん
633
#家族
たつ
53
#日常
ももは
551
吹き荒れる黒紫の瘴気の中――
突然、鷹野が胸を押さえ、その場に膝をついた。
鷹野
「ぐっ……!!
がぁぁぁぁぁぁぁッ!!」
全身の血管が激しく脈打つ。
皮膚は赤黒く膨張と収縮を繰り返し、今にも内側から破裂しそうだった。
瘴気はさらに濃くなり、周囲の空間さえ歪ませていく。
唯我は静かに眉を寄せた。
唯我
「……副作用か。
無理やり力を取り込んだ代償だ。」
公太は拳を握り、一歩踏み出そうとする。
公太
「今しかねぇ!!
一気に決めるぞ!!」
しかし、その腕を一祟が静かに掴んだ。
一祟
「待ってください、公太さん。
今動けば、彼は完全に暴走します。
僕たちも巻き込まれます。」
その瞬間――
鷹野の絶叫が夜空を震わせた。
黒紫の瘴気が巨大な渦となって膨れ上がる。
だが次の瞬間、鷹野は苦しみながら後退し、瓦礫を蹴散らして姿を消した。
公太は目を見開く。
公太
「……逃げたのか?」
唯我は首を横に振る。
唯我
「違う。
力を制御するため、一時的に退いただけだ。」
一祟も静かに頷く。
一祟
「まだ終わっていません。」
その時、通信が入る。
ジュリー(通信)
『みんな!!
今すぐ基地へ戻って!
これは命令よ!!』
公太は悔しそうに拳を握り締めた。
公太
「……くそっ。」
唯我
「ここで倒れては意味がない。
撤退する。」
三人は戦場を離れ、ORVAS基地へ帰還した。
ORVAS本部・作戦会議室
数時間後。
重苦しい空気が部屋を支配していた。
ジュリーが静かに口を開く。
ジュリー
「鷹野は、もう人間じゃない。
あの力を完全に解放すれば……
地球そのものが消滅しかねない。」
誰も言葉を発せない。
静寂だけが流れる。
やがてジュリーは引き出しを開き、一つの黒いカプセルを取り出した。
禍々しいほど黒く濁った球体。
ジュリー
「これが……
アークカプセル。」
三人の視線が集まる。
ジュリー
「本来は封印された禁忌の兵器。
これを体内に取り込めば、一瞬だけ鷹野に対抗できる力を得られる。」
一祟が静かに尋ねる。
一祟
「……代償は?」
ジュリーはゆっくりと答えた。
ジュリー
「肉体は耐えられず崩壊する。」
部屋の空気が凍りつく。
一祟
「命と引き換え……ですか。」
ジュリー
「……ええ。
でも、もうこれしか方法はない。」
公太は唇を噛み締める。
唯我は目を閉じる。
一祟は拳を握った。
公太
「……選ぶしか、ねぇのか。」
ジュリーはカプセルを持ち上げ、公太の前へ差し出した。
ジュリー
「これを使うのは……
公太、あなたよ。」
公太は驚き、目を見開く。
公太
「……俺?」
ジュリーは真っ直ぐ見つめ返した。
ジュリー
「あなたしか制御できない。」
「心拍の安定性。
神経反応。
精神力。
そして肉体の耐久性。」
「すべてのデータが示している。
この役目は、あなたしか務められない。」
公太は静かにカプセルを見つめる。
そして深く息を吸った。
公太
「……分かった。
俺がやる。」
唯我が肩に手を置く。
唯我
「無茶だけはするな。」
一祟も優しく微笑む。
一祟
「一人じゃありません。」
公太は小さく笑った。
そして、迷いなくアークカプセルを口へ運ぶ。
次の瞬間――
世界の音が消えた。
カプセルが体内へ吸収される。
全身を激痛が駆け抜けた。
公太
「ぐあぁぁぁぁぁッ!!」
身体が激しく痙攣する。
炎と氷が同時に身体を焼くような苦痛。
公太は床へ倒れ込んだ。
唯我
「公太ッ!!」
駆け寄ろうとした瞬間、
ジュリーが鋭く叫ぶ。
ジュリー
「触らないで!!
今は気絶しているだけ!
目覚めた瞬間、自分の力で制御しなければ意味がない!」
隊員たちが駆け込む。
ジュリー
「急いで医療室へ!!」
隊員
「了解!!」
公太はストレッチャーへ乗せられ、医療室へ運ばれていった。
残された唯我と一祟。
二人はただ、公太の苦しむ姿を見送ることしかできなかった。
唯我は拳を握り締める。
唯我
「……地球の命運が、
俺たちに託されたんだ。」
一祟も静かに頷く。
一祟
「これほど重い使命……
想像もしていませんでした。」
モニターには、世界へ広がる瘴気が映し出されていた。
赤黒く染まる空。
崩れゆく街。
泣き叫ぶ人々。
その頃、医療室では――
公太の身体が激しく変化していた。
筋肉は異常に膨張し、
毛細血管は今にも破裂しそうに浮かび上がる。
苦痛に耐えながら、公太はかすかに呻いた。
公太
「ぐぁ……
あぁぁ……
負け……ねぇ……」
ジュリーは通信機を握り締め、唯我と一祟へ告げる。
ジュリー
「今さら弱音は聞かないわ。
何のためにORVASへ入ったの?」
「あなたたちは、
世界を守るために選ばれた人間よ。」
二人は力強く頷いた。
それでも心の奥では、
もし公太が耐えられなかったら――
その恐怖だけが消えなかった。
一方その頃。
アビスの地下研究施設。
荒れ果てた実験室で、鷹野は苦しみにのたうち回っていた。
鷹野
「ぐぁぁぁぁぁぁぁッ!!」
全身を覆う瘴気。
暴走する力。
肉体は内側から裂けそうになっていた。
科学者たちが慌ただしく駆け寄る。
科学者
「急げ!!
副作用が限界だ!!」
薬剤が静脈へ注入される。
数秒後――
鷹野の呼吸が落ち着き始めた。
鷹野
「……なるほど。
これが……
新しい力か。」
ゆっくりと立ち上がる。
その瞳には、狂気だけが宿っていた。
鷹野
「フフフ……
まだ終わりじゃない。」
「この街も……
この世界も……
すべて焼き尽くしてやる。」
黒紫の瘴気をまとい、施設の扉を蹴破る。
そのまま夜空へ飛び立った。
瓦礫の街を見下ろし、不敵に笑う。
鷹野
「……次は、
地球そのものだ。」
黒い瘴気が夜空へ広がり、新たな絶望が世界を覆い始めていた。
コメント
1件
いやもうね、第86話、重すぎる……! 公太がアークカプセルを飲む決断、マジで覚悟が半端ないわ。あの「負けねぇ……」って呻き声だけで泣きそうになった。一方で鷹野の狂った余裕も怖すぎるし、これでまだ終わらない感じがゾクゾクする。次の話、絶対見届けるからな!🔥