テラーノベル
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けれど、こんな時間に、こんな気持ちで。1人頭上に広がる空を見上げる日がくるなど、自分でも予想できていなかった。少なくとも去年のクリスマスは、実家に帰り家族と過ごした。本当にただの子供だ。
そこでハッとして真衣香はバッグからスマホを取り出し時刻を確認する。
画面には『12月26日 0:13 』と表示されていた。
深夜0時を過ぎてしまっている。
……クリスマスが終わってしまった。
聖なる夜の終わりと共に、このまま奇跡も何も起こらないまま凍えて終わるのだろうか。
仮にもし今日会えなかったなら、勢いを失って何もできなくなってしまうだろうか?
感じていた不安を、自分の胸に問いかけてみる。
(ううん、今日がダメでも、大丈夫。まだ頑張る。だから今日も、もう少し頑張る。せっかく八木さんが送り出してくれたんだから無駄になんてしない)
密かな決意を胸に、夜空から目を逸らして下を向いた。そしてもう一度手を組んで、はぁ、と息を吹きかける。手袋をしてこなかったのは失敗だったなと、ぼんやり考えた――
その時だ。
ザッ、ザッ、と。アスファルトの僅かな砂利を引きずるような……気怠げな足音が真衣香の耳に届く。
少しでも暖めたいと口元で組んでいた手を解いて、顔を上げ、足音の方へ視線を向けた。
瞬間。真衣香は、ぴくりと動作を止める。
視界に映った人物を、お互いの揺れる瞳が照らし続けて。
「…………え?」
先に声を発したのは、真衣香ではなく。
「え、え……? な、なんで、え!? 幻覚!?」
気怠げな足音は「いやいや違うだろ、俺酔ってないし」と自分に言い聞かせるよう、声を出して、地面を蹴り、素早く真衣香のもとへ走り寄った。
少しだけ乱れた息を整えながら、目の前に立った彼は茫然と真衣香を見下ろして。
「…………た、立花?」
まるで信じられないものを、ここに在ってはならないものを、見るような。そんな驚愕の眼差しを真衣香に向けた。
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