店内は混んではいないがだからといって閑散としているわけではない。
それなりに客が入っているようだが客層は日本人というよりもアジア圏の人が多い。
「ケンイチひさしぶり」
ニコニコしながら男性が声をかけてきた。
「志豪(チーハオ)久しぶり」
「雪、こちらは呉(ウー)志豪(チーハオ)彼のお兄さんには台湾で世話になっていたんだ。」
「あの、はじめまして豊田雪です」
志豪は笑顔を絶やさない。
「ケンイチが女性を連れてくるなんて初めてだね。ケンイチの回りの女性はこの店には絶対来ないもんね」
「え?」
とりあえずこの店に連れてきた“女”は私だけと言うことはわかったけど、この店に来ない“女性”ってなんだろう?
「志豪、余計な事は・・・俺達は客だからね、水は?」
「はははは、悪い悪い。でも、高級店にしか興味の無い人よりオレはいいと思うよ」
「だから!余計な事は言うな」
賢一に牽制された志豪さんは笑いながら厨房に戻っていった。
「何か食べたいものある?」
「今日はすべてお任せで」
賢一の元カノ?は高級店にしか興味がなかったって事?
なんだが、モヤモヤする・・・そんな私の気持ちがダダ漏れしているのかまっすぐに私を見つめて
「雪に歴史があるように俺も過去がある、でも今このときは雪と俺の時間なんだ」
そんな風に言われたら、何も考えられなくなる。
そして、テーブルには
油淋鶏(ユーリンチー)、小籠包(ショウロンポウ)、蛋花湯(ダンファータン)、空心菜(クウシンサイ)に粽(ちまき)がテーブルに並べられた。
おいしくて箸が止らないし、ジャスミンティーを口に含むと口中に爽やかな香りが広がった。
お店がわからないように料理だけを写真にとりtwitterにあげると、すぐに“いいね”がついた。
気がつくと志豪さんも料理を追加しつつ一緒のテーブルに着いて3人で楽しく食事をした。