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「……負の、エネルギー……だと……!?」
「ああ、そうだよ。その“ダーク”シルバーアルケミーには俺の負のエネルギーを纏わせてやったんだ。刺さった奴には容赦なく負のエネルギーを送り込む」
トアールは酷く濁った瞳のままハンマーを構えてゆらぁっと近づく。
「“英雄”なら分かるよな?他人の負のエネルギーを取り込んだらどうなるかくらい」
「……ッ……!?」
「もしかして知らなかったのか?」
「……」
「ハッ!そんな事も知らねぇとは、本当にお前“英雄”か?」
トアールはハンマーを軽々と振り回しながら
「他人の負のエネルギー取り込んだ奴はな、その感情に左右されて自我を見失うんだよ」
と冷たく告げた。
「さて、その状態でいつまであの威勢を保てるだろうな?」
(……ダメだ、ダメだ……!あの声に耳を傾けるな……!)
すまない先生は目を瞑ってトアールの声を意識の外に追い出そうとする。そうでもしないと立っていられない気がした。
この僅かな時間の間にすまない先生の精神に掛かった負荷は想像を絶していた。
【敵の“王”トアールが探し求めていた銀さんであった事】
【銀さんが心の内に途轍も無い負のエネルギーを溜め込んでいた事】
【いつもは優しい銀さんが容赦なく冷たい言葉を浴びせて来る事】
そして……
【負のエネルギーによって否応なく想起させられる過去】
その全てがすまない先生の戦意をことごとく削りにかかるのだ。
(……銀さんは洗脳されているだけだ……!耳を傾けるな……!)
いくら自分にそう言い聞かせても剣を持つ手は震え、足には力が入らない。負のエネルギーだけの効果によるものでは無いことは既に明白だ。先ほどから脳裏にチラつく過去のトラウマ____ヤマタノオロチの生贄にされかけた時の記憶のせいだろう。
ヒュン!
まるで重さなど無いかのように巨大なハンマーを軽々しく横薙ぎに振るうトアール。避ける、または受け流して全てに対処しているが相手が洗脳されているとは言え、銀さんであるが故に攻撃できない。
「ほらほらwww避けてばっかじゃ俺を倒せねぇぞ?」
(めちゃくちゃイラつく!銀さんだけどめちゃくちゃイラつくッ!)
煽るようなトアールの口調にそろそろイライラして来たので一旦一発見舞うことにした。
「……すまない……武神連斬ッ!」
超高速で移動しつつトアールだけを斬りつける。避けようの無い、すまない先生の必殺技のひとつだ。
何度も何度も斬りつけ、最後に一発渾身の斬撃を放って後ろに跳んだ。
トアールのローブはボロボロだった。ローブなのかボロ切れなのかもう分からない。しかし、その下の服とトアール自身は毛ほどの傷も負ってなかった。
「英雄ともあろう者が、無様なことだw」
【シルバーアルケミー】
負のエネルギーを纏った針山がすまない先生の体を次々と貫いた。
コメント
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ぐわぁぁぁ、銀さーん!