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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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「では皆さん、準備の方は大丈夫そうですね。説明を始めたいと思います。今回の演習授業は前回と同じです。当然、モンスターも同じです。なので、そこまで心配も緊張もせずに取り組んでください」


その言葉を聞いたみんなは、息を止めていたのか、大きく息を吐いている人もいれば、安心したように胸に手を当てている人もいる。

そして、僕も含み、みんなは先生の横にいる軍服のような服を身に纏った人に対して、どうしても視線が向いてしまっているようだ。


「そして、今回こちらの――」

「ああ、僕のことはいいですよ先生。――皆さん、初めまして。僕のことは……まあ、お気になさらずに、見学にきた部外者とでも思っておいてください」

「……と、いう感じですので、皆さん頑張ってくださいね」


先生の話は終え、準備を終えたであろうパーティたちは疑似ダンジョンへと足を進め始めた。


「さてさて、本日もやっていきましょっかーっ」

「よろしくおねがいしまーすっ」

「お願いします? ……あれ?」


守結は、キョトンとした顔で首を傾げている。

それに次いで、康太と幸恵も同じ反応。


「ああ、紹介がまだだったね。こちらは|結月《ゆづき》」

「月刀結月ですっ、お願いしまーす」

「よ、よろしくね」


まさかの、コミュニケーションお化けの守結が若干押され気味である。

そして、康太と幸恵は目を合わせてクスリと笑っている。

この一瞬で気づいてしまったようだ――この2人は同じタイプ……だと。


ぎこちない挨拶は終わり、次に軽い打ち合わせを始める。


「結月の加入によって、僕たちはフルパーティになる。前衛4――盾1、前衛火力3。後衛4――支援2、後衛火力2。とかなりバランスがよくなった。で、僕は思うんだ。このみんななら、前回よりもっといい結果を出せる、と」

「うん、私もそう思う」

「なんのことはわからないけど、それは間違いないと思う!」


守結の反応に重ねるようにして反応する結月。

守結の顔が若干引きつっているようにもみえる。


「それに、結月の攻撃の腕や動きは僕が保証する。だから、しっかりと意思疎通してやってほしい」

「やったーっ、志信ありがとうっ」


と、僕の腕に絡みついてくる結月。

それをみた守結は、頬を膨らませて顔を小刻みに揺らしてから、


「なっ、ななななーー! ちょっと、ストーップ!」


と、声を張ってこちらに近づいてきて、僕から結月を引きはがして間に入ってきた。


「な、なに、どうしたの」

「いいえ、なんでもないです。なんでもないんですからね」


どうして急な敬語なのか、そしてその行動の意味を聞きたいところではあるけど、話を再開する。


「で、最初はいつも通りに手軽なモンスターで様子見。そこで互いの動きの確認を終えたら、前回苦戦したソルジャーラットと戦おう」

「おおっ! まじかよ、いきなりいっちゃうのか! おおっ!」

「それいいね、僕も賛成」


康太はやる気満々、桐吾も快く賛同してくれた。


「私も……頑張る。大変かもだけど、私も頑張るよ」

「美咲は、戦いながら僕と一緒にいろいろと確認しよう」

「うんっ。よろしくね」

「美咲もやる気かぁ。私も張り切っちゃうよぉ」

「ふふっ、私は最初からやる気全開よー!」


彩夏と幸恵も、かなり乗り気だ。

パーティの指揮は上々。

二回目というのもあるだろうけど、1人1人のやる気の源は違くても、再戦を望んでいたということだろう。


「じゃあ、早速いこうか――――ん……?」


みんなが足を進めていくなか、誰かに手を掴まれて足を止めてしまった。


「ねえしーくん、あの子と仲良いんだ」

「ん? どういうこと? まあ、同じクラスの隣席だし?」

「げっ⁉ な、なにそれ! というか……ふぅーん……否定はしないんだ」


いつもの守結らしからぬ鋭い目線が、僕の目に突き刺さりつい背筋が伸びてしまった。


「いやいや、待ってよ。結月はつい数日前に転校してきたばっかりで、なんというか……海原先生に面倒見を押し付けられたというか、そんな感じなんだよ。だから、その、なんというか」

「なーんだ、そういうことだったんだねっ。わかったよ。――でもあの懐き具合は許せないけどね」


後半の方は小声で、もごもごと話していたからなにを言っていたか聞き取れなかったけど、謎の疑いは晴れたようだ。

いつもの明るい眩しいくらいの笑顔が戻って、僕は解放――守結は先に足を進めた。

僕も同じく足を進めようとすると、海原先生に呼び止められた。


「あー、志信くんちょっといいかな」

「はい、なにかありましたか?」

「……あー、そのなんというか」


先生は首の後ろに手を回して、歯切れの悪い様子。

まるでなにか言いにくいことでも言おうとしているかのようだ。


「どうかしました?」

「いや、なんというか……前回のような無茶は、くれぐれも避けれるならそのようにしてくださいね。大怪我に繋がる可能性があります……から」

「わかりました。ご心配いただきありがとうございます」

「頑張ってください……ね」


先生は終始歯切れの悪い様子で話を進めていた。

僕は軽い会釈をし終え、みんなの元へ足早に向かった。


もしかしたら、本当に心配をしてくれているのか、前回の無茶が上の人とかに怒られたのか。

どちらにしても、先生はハッキリと言葉にしなかった。ということは、どちらでもなく、アドバイスの一つでもしてくれようとしたけど、他の生徒の手前そんな1人だけ優遇することはできない。と思い止まったのかもしれない。


――そう考えると、話のなかで深堀しなくてよかった。

これから始まる演習に心が躍っていた。楽しみで仕方がない。

初めてのフルメンバーパーティ、そう考えただけでやる気が満ち溢れ始めた。

転校から始まる支援強化魔法術師の成り上がり

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