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第四話「恐怖症って致命的だよね」
「通報…しますよ?」
「いいよ?する暇ないと思うけど」
そう言い銃を懐から取り出すクマ男。
「発砲音が出たらまずいんじゃないんすか?」
「マフラーつけてるから。心配しなくても
大丈夫だよ。」
「へぇ…」
口では格好付けてるものの、内心めちゃくちゃ焦っていた。今まで体感したことのない
死がすぐそこまできている感じ。
…おもちゃの銃とかも考えたが…この感じはないだろう。
「ん?なんか企んでるの?基本銃持った相手には勝てないよ。覚えておきな。…まぁ、
その知識を活かす次があるかどうかわからないけどね」
どうする。どうする俺。…そういえば花山
さんは?あんだけ強者感出しといて死んだとかだったら笑いもんだぞ…?
「?…なんか言えよ。どうしたんだい黙り込んで。」
「な…なぜ俺を殺そうと…」
「それを殺す相手に言ってなんになるんだい?守秘義務があるんだよ。殺す側にもね。」
…なんとか話をして時間稼ぎは無理そうだ。
となると反撃…の線はほぼ無しだな。素人の俺から見てもわかる圧倒的強者感。花山さんとは違い圧倒的なオーラがドバドバ出て
いる。ど素人の俺が反撃してどうこうなる相手じゃない。やはりおもちゃの銃ではなさそうだな…。
「…守秘義務…ね…」
その言葉を放つと同時に俺は勢いよくリビングに入りドアを閉める。
「…お?逃げに回ったか。」
そして速攻で玄関と反対側の窓に突っ走りそのまま窓を破り裏庭へ。
パリィン!
「いっ…てぇぇぇ!」
アクション映画ではよくあるが実際にやってみると…めちゃくちゃ痛い。おそらくちょっと特殊な俺がやるからいいものを、一般人がやると結構な重症を喰らうはずだ。
そしてそのままレクサスのあった表方面へ
超高速で向かう。
「な…花山さん!」
そして目に入ってきた光景は花山さんのレクサスに倒れかかった姿。口から血を吐いている。
「くそ…」
最悪なことに俺の家は住宅街にあるわけではないため超近辺に家はほぼない。
「よぉ。」
そうこう考えているうちにクマ男は俺の背後2メートル間にいた。
「くそがぁっ!」
俺は道路沿いに勢いよく飛び出した。
このまま警察署へ逃げるのは難しいだろう。近くにないし。 …さらに他の人に助けも呼べない。その人に被害がいく可能性があるからだ。しかも特に近い家々には老人しか住んでいない。…ならどうする…。
「おいおぃ、はやくヤらせてくれよぉ。手間がかかるやつ大嫌いなんだよ。」
クマ男も庭からここまで速攻で飛んできたようだ。とりあえず俺は道路を一直線で逃げる。
「へへーん、一本道の走力では俺に勝てねぇようだなぁ!」
「ん?君は自分が特別だと思っているようだが…そんなことは決してないぞ?上には…
上がいることを教えてやろう。」
そしてさらに加速してくるクマ男。今にも追いつかれそうだ。おそらくこのまま逃げているだけならいずれ追いつかれてしまう。
絶対絶命だ。…くっ…。
俺はそのままの速度で、近くの最近過疎化が進みまくって誰もいない小さな公園にいく。
「なんだぁ?最後に思い出の公園でも見たくなったか?」
クマ男との差は…約1メートルっ!マジで
死ぬっ…!俺は数少ない遊具を飛び越え、
ボックスウッドの草むらの前で足を止める。
「ん?やっと諦めがついたかクソガキが、
手間かけさせやがって」
そして俺にめがけて素早い突きをくりだす。
俺の鳩尾(みぞおち)が狙いなようだ。なぜこのタイミングで鳩尾が狙いなのかはわからないが
ベストポジション!俺はその瞬間精一杯の底力で右へ避ける。
「ハッ、だらしねぇ避け方だっ…」
異変に気づいたようだなぁ、クマ男。
草むらの中に手を突っ込んでいるクマ男は
真っ青になる。
「蜂の…巣か…」
そう。稀にボックスウッドの中には蜂が巣を作ることがある。
しかもこれは以前から知っていたスズメバチの巣。そこにジャストポイントに突きを繰り出しクマ男は巣を破壊してしまったのだ。
「その巣、結構デカいですよ」
「グババババババッ…」
そのまま何故か泡を吹きながら倒れるクマ男。お?な、なんか効いたが…この機を逃しちゃいけない。
とりあえず速攻で家に戻ろうとした俺だが…
「よくやったね。正木。」
後ろからパチパチと拍手が聞こえる。
そこに立っていたのは…花山将吾だった。
「は、花山さんっ!?な、なんでぇ!」
「説明は後だ。とりあえずそいつを抱えて
ソッコーで家まで逃げるぞ。」
そうだ、スズメバチ!!!
「はいぃ!」
なにがなんだかわからないが、背後にブゥォーンという激しい音を聞きつつもクマ男を抱えながらさっきよりも死ぬ気で家まで走った。
「はぁ。はぁ。」
やっとの思いで家の中に入れた俺と花山さんとクマ男…はまだ失神中だ。
「な、なにがなんだかさっぱり…どういうことですか花山さん!」
「説明はまぁコーヒーを飲みながらにでもしようか。」
いや、あんたさっき飲んだばっかじゃん…
「さて、では軽く説明しよう。」
ズズズ…とコーヒーを軽く飲み話し始める
花山さん。
「まず、今までの出来事は試験のようなものだったと捉えてくれ。」
「試験っ!?」
「君の実力を測るものだ。流石に鬼道に一泡吹かせられるとまでは思っていなかったが…中々やるじゃないか。」
「でも、血とか…」
俺はいまだに服についている花山さんの血の跡(?)を見る。
「これ?あぁーこれwこれは血のりだよwww
まぁあの状況では騙されるだろうねw」
心配して損したってのはまさにこれだろう。
「あと、その鬼道さん?スズメバチの巣に手を突っ込んだ時点で謎に泡吹いてましたけどあれは何故でしょーか」
「あぁ、あいつは極度の蜂嫌いなんだ。もう
恐怖症と言ってもいいかもしれない。それほどにね。…てっきりなんでかわからんがそれを狙ってやったのかと…」
「いや、そんなわけ…たまたまイチかバチかでスズメバチ様にかけてみただけですよ。つーかたまたま逃げた先が公園だったんでそんくらいしか考える可能性が…戦闘面ではおそらく勝てなかったでしょうし。」
「普通に考えれば君とあそこまでの身体能力を争っていた鬼道ならスズメバチから逃げれるとも勝てるとも考えなかったのかい?」
「そりゃあの考える暇が全くない時ですから…ポッと出の策ですよ。」
マジでポッと出だ。奇跡に奇跡がたまたま
重なっただけ。それに今思えば逃げてる途中に銃で攻撃されなかったな。…あそこで気づくべきだった。
「君の実力は見させてもらったよ。かなりの
身体能力だ。今までのうのうと暮らしてきた
中学生にしてはね。」
「それはよかったんですけど…窓はどうすれば…」
「そんなのは後でどうにでもなる。片付けを
手配しよう。」
「は、はぁ。手配…?」
「それよりもソッコーで本部に向かおう。凉が待ってる。」
「凉?」
「あぁ。君の同期となる人物だ。」
凉…どこかで聞き覚えが…
「よかったね。本部での君の体力測定はなしになった。予定より早めに終わるよ。」
もうどうでもいいからはやくおやつがたべたい。
「さて、スマホだけ持ってきてもらおうか。
…落としたりしてないよね?」
「してないっすよ…スマホ持ちながら逃げるの大変だったんすよマジで」
スマホがなかったらもっと早く華麗に動けた
自信がある。
「さて、ずっとソファーで失神してるあいつを抱えて車まできてくれ。今度こそなんもないよ。」
そしてコーヒーを飲み干しゆっくりと玄関へ出ていく花山さん。
コップまた俺が洗うの?