決戦の場は川崎側が指定した、何かの事情で工事がストップしたままの工事現場。なぜか敵は動きを見せず、真琴を先頭に横浜デビルの五百人の精鋭が一斉に駆け出した。敵の抵抗は散発的で、真琴たちは敵陣深くへ突入した。
だがそれは罠だった。突然パンパンと銃声が響いたかと思うと、真琴のそばにいた数人の味方が倒された。それを見て味方はパニックに陥り、多くの者が真琴の指示を待たずに敵に背を向けて逃げ出した。
今まで戦う気を見せなかったのが嘘だったように、敵は激しく追撃した。追撃中も銃撃は続いた。真琴が魔力まで繰り出してなんとか防いだが、それがなければ全員捕虜にされていてもおかしくなかった。怪我人も含めて全員でその場を逃れるのがやっとだった。
「何一つ得たものはなく、目を覆うほどの惨敗でした。責任者のわたくしに厳しい処罰を」
得たものはなくても、一人も敵に捕まっていないのだから、失ったものもないとも言える。
「処罰などすべて終わってからでいい。ヤクザじゃあるまいし、なぜただのヤンキー集団が銃なんて持ってるんだ?」
「それが……。あとから分かったことですが、川崎ゾンビのバックにはヤクザがついていました。いえ、正確に言えば、川崎ゾンビはヤクザの下部組織のようです」
「どこのヤクザだ?」
「広域暴力団の極星会です。全国的な組織ですが、川崎に本拠地があるので川崎極星会とも呼ばれています」
何はともあれ銃撃されて負傷した仲間の見舞いに行くことにした。彼らが入院している病院は不良たち御用達の病院で、希望通りの診断書を書いてくれるし、もちろん銃撃されて負傷したと知っても警察に通報もしない。そんな病院があるなんて。この世界はまだまだ余の知らないことばかりだ。
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