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「何だ、太郎か。おどかすなよ。」
「え、なんか、すんません?」
悪霊ではなく、友人の訪問にモモは緊張が一気に解け大きく息を吐いた。
「ていうか、来るの早くない?まだ2時になってないよね?」
モモの言う通り、現在の時刻は午前0時を少し過ぎたところだった。
さて、先程の話には続きがある。
花が綾瀬家に置いてもらえる事を知った太郎が、『花が無事なら、こころおきなく人体模型していられる。』
『そのかわり、夜になったら学校を抜け出して来るから花に会わせてほしい。』
と、言ってきたのである。
モモ達はこの願いを聞き入れ、深夜2時(丑三つ時)に太郎が花に会いに綾瀬家を訪れるようになった。
モモが花の手入れに力を入れていたのはこのためであった。
「あれ?星子さんから聞いてないんすか?」
「婆ちゃんから?何を?」
「えー、マジっすか。」
太郎の問いかけに首を傾げるモモに太郎は簡単に説明を始めた。
「星子さんが前に、俺がここに来る時間をもう少し早めに出来ないかって言ってきたんです。孫の睡眠不足が心配だからって。それで午前0時頃ぐらいなら来れますって言ったら、そうしてくれって。」
「・・・そうだったんだ。」
「はい。」
(お婆ちゃん、ウチの事を心配してそんな事太郎に言ってたんだ。)
自身の知らないところでの祖母の気遣いにモモはくすぐったくなりながら笑みを浮かべた。
口は悪いが(モモもだが)、そっけないようで優しいのだ、綾瀬星子という人は。
「でもさ、そうならそうとウチに言ってくれてもよくない?」
「仕事が忙しくて言うのを忘れた、もしくは照れ臭くてモモさんに言えなかったとか、すかね?」
「あー婆ちゃんならどっちも有り得るかも。」
太郎の言葉にモモが苦笑しながら応える。
「と、ウチと話してたら花と会う時間がなくなっちゃうよ。」
「あ、そうすっね。」
「ちょっとここで待ってて。濡れタオル持って来るから。」
「え?」
「そのまま上がったら床が汚れるでしょ。婆ちゃんに怒られる。」
「分かりました、待ってます。」
「すぐ戻るから!」
太郎にそう言って、モモはタオルを取りに洗面所へと向かった。
ー数分後。
モモが濡れタオルを片手に玄関へと戻り、床に濡れタオルを敷いた。
「はい、ここで足拭いて。」
「はい。」
モモに言われるままに太郎は、濡れタオルで足を拭いた。
「よし拭いたね。花がいる部屋に案内するから、ウチのあとについてきて。」
「はい。お邪魔します。」
花がいる部屋へと歩き出したモモのあとに続き、太郎は歩き出した。