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FORSAKENのサバイバーロビー。
ノスフェラトゥ戦以来、サバイバーたちはすっかり慣れてしまっていた。
シェドレツキーの影から突然1xが出てくることにも。
試合中に助けられることにも。
「……あれって味方?」
「いや元キラー。」
「でも助けてくれるし。」
「結局なんなんだろ。」
誰にも答えは分からない。
ただ一つ確かなのは。
ものすごく頼りになる、ということだった。
その日もロビーでは、発電機の練習会が開かれていた。
ヴェロニカが配線を繋ぎ直し。
ビルダーマンが工具を握り。
みんなで悪戦苦闘している。
ガシャッ。
「うわっ、また失敗!」
「難しいなぁ……」
その瞬間だった。
ニュッ。
シェドレツキーの影から半透明の頭が飛び出す。
「お前らぁぁぁ!!」
ロビー中に怒鳴り声が響いた。
「発電機修理、遅すぎるんだよ!!」
「うわぁ!」
「出た!」
「1xコーチ!」
「誰がコーチだ!!」
影から上半身まで現れた1xは、腕を組んで全員を睨みつける。
「この前の試合見たぞ!」
「ガチャガチャ!」
「ガチャガチャ!」
「何回失敗してんだ!」
「俺がキラーだったら、その音聞いた瞬間にヴェノムシャンク後頭部に叩き込むからな!」
「ご、ごめんなさい……」
ビルダーマンが苦笑いする。
「発電機って意外と難しくてさ。」
「言い訳すんな!」
1xは影から腕を伸ばし、練習用の発電機を引き寄せた。
「貸せ。」
ガチャ。
カチャ。
カチン。
ものすごい速さで配線を組み替えていく。
「いいか。」
「一個ずつ見んな。」
「全体見ろ。」
「流れを考えろ。」
「システムは素直なんだよ。」
「癖さえ分かれば勝手に繋がる。」
ヴェロニカが目を丸くする。
「えっ。(O_O)」
「そんな見方あるんだ。」
「ほら。」
「やってみろ。」
「は、はい。」
恐る恐る触る。
カチッ。
ブゥゥゥン。
発電機が綺麗に起動した。
#デジタルイラスト
汚染
39
あめ猫@サボり魔
8,090
ありきたりな雑炊
50
「あっ!」
「できた!」
「すごい!」
「引っ掛からない!」
1xはドヤ顔になる。
「当然。」
「元祖バグの帝王だぞ。」
「システムなんか全部知ってる。」
影の中で胸を張る。
「次!」
「チェイス!」
ビルダーマンが肩を震わせた。
「えっ、俺?」
「お前だ!」
「直線逃げるな!」
「真っ直ぐ走るな!」
「障害物使え!」
「角をインで曲がれ!」
「外に膨らむな!」
「攻撃判定知らねぇのか!」
怒涛のダメ出しである。
ビルダーマンは必死にメモを取る。
「なるほど……!」
「そこまで考えてなかった!」
「あと待ち伏せ!」
「キラー見てから行くな!」
「足音聞け!」
「踏み込む瞬間読め!」
「タイミングだ!」
「感覚覚えろ!」
ヴェロニカが感心する。
「めちゃくちゃ分かりやすい……。(°▽°)」
「さすが元キラー。」
「当然。」
「何百人追い回したと思ってんだ。」
少し誇らしそうだった。
「よし!」
「実践!」
1xが指差す。
「シェドレツキー!」
「お前キラー役!」
「えっ、俺!?」
「早く!」
「はい……。」
木刀を持って構えるシェドレツキー。
「じゃあ行くよー。」
ゆっくり近付く。
「ヴェロニカ!」
「まだ!」
「まだ!」
「……今!」
ドン!!
「ぐえっ!」
見事な体当たりが決まった。
シェドレツキーが吹っ飛ぶ。
ゴロゴロ転がって壁へ激突。
「痛っ!」
1xは満足そうに頷いた。
「よし。」
「今の。」
「百点。」
「覚えとけ。」
サバイバーたちが一斉に拍手する。
「すごーい!」
「分かりやすい!」
「ありがとう1x!」
「次の試合勝てそう!」
遠くで見ていたデュセッカーが腕を組む。
「……不思議なものだ。」
「かつて最凶と恐れられたキラーが。」
「今では最高の教官とは。」
隣では、頭に大きなたんこぶを作ったシェドレツキーが肩を落としていた。
「デュセッカー……。」
「なんだ。」
「みんな強くなるのは嬉しいんだけどさ……。」
「うむ。」
「なんで毎回、俺だけ殴られる役なの?」
デュセッカーは一瞬だけ考えたあと、小さく笑った。
「愛情表現だろう。」
「諦めろ、兄弟。」
「そんなぁ……。」
その時だった。
「おーい!(*゚▽゚)ノ」
ヴェロニカが手を振る。
「1xコーチ!」
「今度もよろしくね!」
1xは顔を真っ赤にして怒鳴った。
「だからコーチじゃねぇ!!」
「次ヘボい逃げ方したら!」
「影から足引っ張って転ばせるからな!」
「はいはい!」
「ありがとうございます!」
「誰も聞いてねぇ!」
照れ隠しのように叫ぶと、1xはそのままシェドレツキーの影へと潜り込んだ。
「……ったく。」
影の中から聞こえる小さなぼやきに、シェドレツキーは苦笑する。
「なんだかんだで面倒見いいよな、お前。」
「うるさい。」
「勘違いすんな。」
「下手くそばっか見てるとイライラするだけだ。」
「だから教えてる。」
「はいはい。」
その返事に、影の中の1xは少しだけ照れくさそうに鼻を鳴らした。
こうして元・最凶キラーによる熱血特訓は毎日のように続き、FORSAKENのサバイバーたちは、かつてないほど生存率の高いチームへと成長していくのだった。