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#デジタルイラスト
汚染
39
あめ猫@サボり魔
8,090
ありきたりな雑炊
50
FORSAKENのサバイバーロビー。
かつてここは、試練を前にしたサバイバーたちが沈黙と不安に包まれる場所だった。
……しかし今。
「1xコーチー! 今日ね、教えてもらった通りに障害物ギリギリを攻めたら、キラー空振りしたよー!(≧▽≦)」
焚き火のそばで、ヴェロニカが嬉しそうに報告する。
その瞬間――
ニュッ。
シェドレツキーの足元に伸びたエメラルドグリーンの影が、ゆらりと揺れた。
そこから、ドミノクラウンを被った1x1x1x1が上半身だけひょっこり姿を現す。
「……フン。当然だ。」
腕を組み、いかにも偉そうに鼻を鳴らす。
「誰に教わったと思ってんだ。
あの程度できなかったら、俺の弟子失格だからな。」
口調は相変わらず偉そう。
しかし頭から立ちのぼる炎は、ぽかぽかと穏やかなエメラルド色。
嬉しい気持ちが隠しきれていない。
「ふふっ、ありがと!」
ヴェロニカはロビーの売店で買った箱を差し出した。
「はい、お礼!」
影の前へ置かれたのは、
『特製ライムパイ(期間限定)』
「……あ?」
1xが眉をひそめる。
「俺は甘いもんなんか――」
そう言いかけた瞬間。
シュバッ!!
影から腕だけが高速で飛び出し、ライムパイを一瞬で回収。
「あっ。」
「取った。」
「絶対食べるじゃん!」
ロビー中が笑いに包まれる。
「うるせぇ!!
保存しただけだ!!
あとで味見して毒見してやる!!」
「それ普通に食べるって言うんだよ。」
シェドレツキーが苦笑する。
すると今度はビルダーマンが近付いてきた。
「1x、これもどうぞ。」
コトッ。
置かれたのは冷えたブロクシーコーラ。
「いつも守ってくれてありがとう。」
「誰が守ってる。」
シュバッ。
コーラ消失。
「俺はシェドレツキーがボコボコにされるのを一番近くで見物してるだけだ。」
「見物する割には毎回助けてくれるよね。」
「助けてねぇ。」
「でも前回ノスフェラトゥ吹っ飛ばしたじゃん。」
「……あれはアイツが邪魔だっただけだ。」
「スペクターの怪異も吹っ飛ばしてたよね?」
「……。」
「ね?」
「…………。」
影の中へスッ……
引っ込んだ。
「あ、逃げた。」
「照れた照れた。」
ロビーはまた笑い声に包まれる。
そんな中、シェドレツキーが影へ向かって優しく笑った。
「1x。」
「なんだ。」
「みんな、お前のこと好きみたいだよ。」
数秒。
沈黙。
次の瞬間。
「ばっ……!」
影の中から真っ赤な炎がボフッと噴き上がる。
「好きとか言うなバカ!!
気色悪ぃ!!
俺はキラーだぞ!!」
「うん。」
「恐れられる存在なんだぞ!!」
「うん。」
「差し入れ係じゃねぇ!!」
「ライムパイもう半分食べた?」
「…………。」
「食べたんだ。」
「うるせぇ!!」
影の中から空箱だけがポイッと投げ返された。
「完食してるじゃない。」
ヴェロニカが吹き出す。
「美味しかった?」
「普通だ。」
「全部食べたのに?」
「……普通だった。」
「ふふっ。」
「笑うな!」
その様子を少し離れた場所から見ていたデュセッカーは、小さく肩をすくめた。
「世界を恐怖に陥れた伝説のバグが……今ではロビーのおやつ担当とはな。」
シェドレツキーは照れくさそうに笑う。
「案外、甘いもの好きなんだよ。」
「聞こえてるぞバカシェドレツキー!!」
影から即座にツッコミが飛んでくる。
「好きじゃねぇ!!
たまたま全部食っただけだ!!」
「全部食べたなら好きなんじゃ……」
「違う!!」
ロビーは腹を抱えて大爆笑。
絶望のゲームとは思えないほど、温かな時間が流れていた。
⸻
――その頃。
ロビーを見下ろす観測室。
豪奢な浮遊チェアに腰掛けたスペクターは、赤いシルクハットを目深にかぶり、映像を無言で眺めていた。
モニターには、
サバイバーたちが笑い、
1xがお菓子を受け取り、
シェドレツキーが穏やかに微笑む光景。
「…………。」
スペクターはゆっくり紅茶を口へ運ぶ。
一口。
二口。
三口。
カチャ。
静かにカップを置いた。
「……おかしい。」
誰も答えない。
「僕は絶望を作っていた。」
沈黙。
「恐怖を育てていた。」
沈黙。
「愛憎劇を楽しむ予定だった。」
さらに沈黙。
スペクターは映像を指差した。
「なんで毎日おやつ交換会になってるんだい!!?」
観測室いっぱいに悲鳴が響く。
「キラーがサバイバーを育成して!
差し入れをもらって!
ライムパイ食べて!
みんなで笑って!!
……どこがホラーゲームなんだぁぁぁぁ!!」
ガンッ!!
思わず机へ突っ伏すスペクター。
「僕のFORSAKENが……。」
肩を震わせる支配者。
その後ろを通りかかったアズールが、おそるおそる尋ねた。
「スペクター様……次の試合のご指示は……?」
スペクターは机に突っ伏したまま、小さな声で答えた。
「……今日は休み。」
「え?」
「キャンプでもしておいで……。」
「はい……?」
「もう好きにして……。」
アズールは首をかしげながら去っていく。
スペクターの「限界」が、いよいよ近づいていた。
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