冷たい、冬の日
何度も失ったこの季節が
嫌いだ
バキッ、と骨の砕ける音とともにドサリとまた1人の体が沈んだ
ハァ、ハァ、と切れる息を整えながら残りの奴へと目を向ける
「…ちょっところちゃん、飛ばしすぎですよ」
隣で、るぅとくんは呆れた表情で僕を見た
「……商人って、何奴の事?」
敵から目を離す事なく、問い掛ければるぅとくんは一度ため息をついた
「…彼処に座り込んでる白髪の奴です」
あぁ、お前か
パチリと目が合い、口角を上げる
白髪の男はゾクッと体を震わせると奇妙な声を上げた
助けろ、俺を守れ、と喚くがその周りにいる奴らはピクリともせず
男は不思議に思い、隣にいる奴の服を掴むとそのまま其奴は崩れ落ち、口から血を吐いた
「良かったなぁ座ってて。立ってたら下半身とさよならする所だったもんな」
パチンと指を鳴らすと床は揺れ始め、その振動で周りの奴らは倒れてゆく
腹から血を吹き出し倒れてゆく様は実に気色悪く、楽しかった
「おぇ」とるぅとくんはわざとらしく言い、僕を睨んだ
「貴方ねぇ、毎回毎回やり過ぎなんですよ。気持ちは分かりますけどね、限度ってものがあるでしょう」
「大体、こんな連中になんで魔法を使うんですか。こっちの身にもなって下さい。一体今まで貴方の所為でどれだけの部下が無くなったと思ってるんですか」
「いつも言っているでしょう…____」
首根っこを掴まれ、ぷらーんと持ち上げるとるぅとくんのいつものが始まった
「________…、そんなことやってたらいつか必ず痛い目見ますよ」
キッと睨まれた瞳は酷く冷たく、悲しみを感じた
「……ごめん」
「……………………まぁ、今回は良しとしましょう」
「今は、こっちです」
と、僕を離すと同時にるぅとくんはナイフをぶん投げた
視線を向けたときには、そのナイフは逃げ出そうとしていた白髪の肩を貫き、壁へと刺さっていた
男は悲鳴に近い叫び声を出し、気絶した
「まだ逃げようと思ってたとか、どんだけ馬鹿なんでしょうか」
「肩やっただけで気絶て…」
「普通ですよ普通」
るぅとくんはポケットから布を取り出すと男の方に巻きつけ、止血をして担ぎ上げた
ふぅ、と一息つくるぅとくんは辺りを見渡し、ため息をついた
「……はぁ、今回は一体何人辞めるんでしょうか」
その言葉に僕も辺りを見渡す
そこら中が血まみれで、商人以外の者は皆、腹を切断されて倒れている
その中の数人は顔の原型すらも残っていない
「……この程度で辞めるんじゃあ逆にこっちから願い下げだけどねぇ」
「……それにしても限度ってものがありますよ」
「今日は限度が口癖だねぇるぅとくん」
「うるさいです」
「早く行きますよ、どこかの誰かさんが建物ごと切断しちゃったんですから。このままだと下敷きになっちゃいます」
「はいはい、すみませんでした」
るぅとくんが担いでいたモノと、取引に使われたその場にあった銃を全て回収し、窓の外へと身を投げ出した
建物から少し離れた所で影に隠れて止まっている車に着くと窓が開かれ、中から癒しの笑顔が飛んできた
「おかえり、2人とも」
「ただいまぁ、莉犬聞いてよ〜。ころちゃんがねぇ」
ドア越しに身を乗り出して莉犬くんにすりすりするるぅとくんはめそめそとわざとらしく泣いた
「あぁ、だからさっき何かが崩れた音がしたんだ」
「そうなのー酷いでしょ?危うく死ぬ所だったよ」
車へと乗り込み、持っていたモノを適当に床へと放り込む
「大丈夫だよ崩れたのは最上階のあの階だけだし。ちゃんと計算してるって」
「物は言いようですよね」
僕の隣に座り、にししと口角を上げて煽ってくるるぅとくんといつもの口喧嘩が始まった
莉犬くんは呆れ半分で笑うと、車を発進させた
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