静まり返った深夜
時計の針が秒を刻む音と自分の呼吸音だけが響く部屋の中で、窓辺に寄りかかってあの日の事を思い出す
「…………幸せ、だったんだ」
微かに扉の開く音がして、振り向く
ゆっくりと近づいてくる気配に、眉を下げた
ひたひたと素足のまま歩いて姿を見せたのは
目を瞑り、眠ったままの莉犬くん
拙い足取りで此方へと歩いてくる
ガタ、とテーブルにぶつかっても起きる気配はなく、バランスを崩しながらも歩く莉犬くんを僕は見つめた
「……莉犬くん」
名前を呼ぶと、ゆっくりと開かれた2色の瞳
僕を見つめる莉犬くんの瞳には光が宿っていなくて、あの時を思い出された
莉犬くんはスッと僕に手を伸ばす
でもその手は僕に届くことはなく、身体ごと斜めに傾いていった
完全に意識をなくした莉犬くんを倒れる前に抱き上げ、そのまま寝室へと運んだ
「置いていかないで」
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