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柘榴とAI

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#没入感フィクション
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柘榴とAI

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何というか、物凄い一日だった。
朝は緊張しっぱなしで、失敗したらどうしようって考えてばかりだったのに。
いざ映画を観始めれば興奮しっぱなし。
終わってからも、いくつかのガンショップへと連れて行ってもらった程だ。
しかもその内の一つに、件の映画で使用されたハンドガンのカスタムモデル。
そのモデルガンが置いてあって、実際に触らせてもらう事が出来たのだ。
今日見た映画の為に作られたモデルだって説明されたし、とにかく感動しっぱなし。
そうか、ガンサバでも実際にモデルガンを発売したりしているけど、こういう事なのか。
つまり私達“賞金首”に求められているのは、こういった“憧れ”の感情。
この事実を噛みしめると同時に、ファイブやエイトが新武装をあれだけ悩んでいる理由もしっくり来たというもの。
使えれば何でも良い、みたいな感想じゃ駄目なんだ。
目立っているからこそ、皆が憧れてくれるような凄い武装を使わないといけないんだ。
なんて、本当に色々な事を思った一日になってしまった訳だが。
「な、なんか私ばっかり楽しませてもらった気がする……」
家に帰って来てから、素に戻った瞬間。
本日はずっと黒沢君に“楽しませて頂いた”だけなのでは? と心配になってしまい。
今回のお礼と、そちらの質問などのメールを早速送ってみた結果……。
『俺も凄く楽しかったよ、本当にありがとう。リフレッシュってこういう事かって、改めて実感した気がするくらいに。白川さんさえ良ければ……なんだけど。またどこか遊びに行かない? デートとか気を張らなくて良いので、また映画とか、ガンショップ行ったりとか。そういうので良いので、ホント、良かったら』
というお返事をメールで頂き、何かもう非常に申し訳なくなったというか。
同級生の男の子にまで、遊びに連れ出して貰っている上に、完全に此方に付き添ってもらっているという。
何とも情けない感じではありますが、とりあえず本日のお出かけは終了。
なので、あとはいつものルーティンをこなしながら、お兄ちゃんのご飯も作り終わったらガンサバやろうかなぁ~なんて思っていたのだが。
「ただいま、夢月」
「あ、おかえりお兄ちゃん。お仕事お疲れ様。もうすぐご飯出来るけど、先にお風呂にする?」
いつも通り兄を出迎えてみると、向こうは少しだけ真面目な雰囲気で。
「とりあえず、夢月の作ってくれたご飯食べる。けどその後、6keyの方でログインしてもらって良いか? 少し、試してもらいたい事があるんだ」
「……ほぇ?」
イベントだらけの本日は、どうやらまだまだ終わらないらしい。
◆
『触ってみた感じ、どうだ? いつもの銃と違って、違和感があり過ぎるとか無いか?』
「う、う~ん? 私だと詳しくまでは分からないけど、今のところ、あんまり? ただ、いつものより普通な見た目だなぁ~っていうのと。もしかして、銃身がちょっと短い? でも握ってる感じとかは、本当にいつも通り」
先程の宣言通り、何やら急いでご飯を平らげた兄は早速“サポーター”に早変わり。
そんな訳で、6keyの方でログインしてから射撃場へと転送されたのだが。
何故か今日は、いつもとは違う銃を握らされていた。
持ってみた感じは普通だし、撃った時にも特に違和感なし。
でも普段使っているヤツの方が、もう少ししっくりくるかなぁ? 程度。
こういうのも、もう少し専門的な事が言えないと賞金首として恰好がつかないんですけどね。
『既存モデルな上に、カスタムしてない状態。それに一応いつものと元々同じ銃だからな、違和感が少ないのはそのせいだろう』
「え? え? これっていつも使ってるヤツなの? 全然形が違うけど」
『普段使ってる銃をコンパクトにして、携帯性を向上させたのがソレだな。他にも色々変わってるんだけど、簡単に言うと長さを変えて売り出された銃だ。作られた時期が違うから、その時のニーズに合わせて形も変わる。でもベースは一緒って事だ。ちなみにいつものが5.1インチで、そっちが4.3インチ』
「あ、そういう。1インチが2.54センチ……コレが0.8インチ短い訳だから。そう考えると、銃って意味では結構短くなってるんだね?」
『流石、そういう事は理解が早いな』
そんな訳で、その後も銃の説明を聞いていたのだが。
何でも銃の長さというのは同じ銃弾でも、そのままズバリ威力や命中精度に直結するものだそうです。
へー! そうなのかー!
なんて、賞金首が今更言っていたら絶対怒られるよね。
というか、銃の構造を考えればその通りというか。
火薬を爆発させて鉛を押し出すんだもんね。
爆発エネルギーで物体を押し出すんだから、いくら強い力を加えた所で個体が一瞬で最高速度になる事はあり得ない。
つまり、バレルの中を銃弾が通っている時。
押し出された鉛玉は銃から発射されるまでの間、加速し続ける事になるのだ。
最高速度に乗ったところで吐き出すのが一番効率も良さそうだけど、弾の飛距離を見る限り……そりゃ無理だって話だよね。
私の予想でしかないけど、物凄く長い銃になってしまいそうだ。
そして銃口から放たれた後は、勢いのまま飛んでいくだけ。
という事は、密閉空間で押され続ける距離を増やした方が、飛び出す時の威力は高い。
威力が高いって事は綺麗に真っすぐ飛ぶし、使い手にとっては“当たりやすい”に変わる訳だ。
バレルと弾丸のサイズの関係性は、より密閉空間を作り無駄になるエネルギーを抑えた上で、尚且つ発射される弾頭が“ブレない”様にする為の工夫がされているという。
凄い、銃ってとても頭の良い人が作ったんだなって今更ながら身に染みる。
なんて、これまた感心してばかりだったのだが。
『まぁそんな訳でお前の戦闘距離なら、よりコンパクトにしてもあまりエラーが出ない訳だ。という事で夢月、次にこっちを使ってみてくれ。一応同じ銃だが、パーツが追加してある』
そんな訳で、新しく送られて来た武器をインベントリからコンバート。
確かにさっきと同じ形の銃だし、握った感触とかも違和感は無い。
無い……んだけど。
「えっと、コレは?」
銃口に、なんか付いてる。
とてもでっかい追加パーツが。
いやうん、たまにプレイヤーが持っているのを見た事がある様な……無いような?
銃身を伸ばすみたいに取り付けられた厳ついソレが、見た目を一気に攻撃的にしているんですが。
『コンペンセイター』
「コンペ……うん? なんて?」
『とにかく撃ってみろ』
「あ、はい」
という事で、些かゴツくなったソレを構え。
もう一度的に向かって発砲してみると。
「うん!? え、なにこれ!」
とてもとても素人な感想を言いますと。
撃った時に銃口の上から火が出ました、物凄くびっくりした。
『そのまま連射してみろ』
言われた通りに連続で引き金を引いてみると、さっきとは全然違う感覚に襲われたではないか。
上手く説明出来ないけど……こう、なんて言うか。
狙いやすいというか、“構え直しやすい”?
『詳しく説明しようとすると、専門用語だらけになるんだけどな? 要は銃口を重くしてあるから、発射時の反動を物理的に抑えられる。ていうのと、コンペンセイター上部にポート……穴が空いてるだろう? そこから発射時のガス……えぇとつまり、余分な物を穴から噴射させるから、強制的に銃口は下を向く。その関係で、マズルジャンプが抑えられるって訳だ』
「という事は、撃った後に銃が上を向いちゃうのを勝手に抑えてくれる? だから連射した時、自然と当たりやすくなるって事?」
『その通り、詳しく知りたいなら後で教えてやるから、今はその感覚に慣れてもらって良いか? 件の“新武器”、夢月が“ソレ”で良ければ……そういう方向で進めようかと思ってな。今日、めっちゃ営業して来た。まだ社内の人間に、だけどな?』
お、お疲れ様です……。
どうやら本日の休日出勤は、私の専用武器開発の為の労働だったらしい。
いや本当にすみません。
というか、ありがとうございます。
兄が必死で考え、そして次の段階に進む為の企画を練っている間。
妹はクラスメイトのお友達と一緒に、映画を観ておりました。
本当にごめんなさい。
そんな訳で、その後は暫く射撃訓練を繰り返したのだが。
『そろそろ模擬ステージで使ってみるか。夢月、大丈夫そうか?』
「うん、かなり慣れて来た気がする。というかいつもの銃と同じだからか、凄く使いやすい」
『なら良かった。でも一つだけ注意点』
ステージへの転送が始まり、後は訓練開始の合図を待つだけとなったところで。
急にそんな事を言いだしたお兄ちゃん。
はて? 今のところ特に不満は無いし、心配事も少ない気がするのだが。
などと思っていれば、模擬ステージ開始のカウントが始まり。
『明るい所ならまだマシなんだけどな……それ、簡単に言うとマズルフラッシュの一部が、目の前に出てるのと一緒なんだわ』
「……う~んと? つまり? このステージ、夜だけど」
とか何とか話している間にも訓練が始まり、いつも通りハンドガンを構えたまま物陰に飛び込んだ。
そして音を聞きながら相手の情報を探り、近付いて来たところで向こうの腹に一発――
「ふぎゃぁっ!?」
『暗い所だと、結構目が眩むんだわ』
先に言ってよ! とか言いたくなったが、相手NPCは待ってくれる筈もなく。
当然そのまま一斉に襲い掛かって来るので。
若干チカチカしている視界のまま、普段通り近接戦で対処。
『そういうのを全部良いとこ取りしたのが……サプレッサーって装備になるんだけど。長すぎて、お前には使い辛いだろう?』
「あ、あれはちょっと……取り回しが悪いかなぁって」
そっか、そうだよね。
サプレッサーは、銃口の前にでっかい上に長い筒が付いてるんだもん。
そりゃ重いから反動制御にはなるよね。
ついでに言うと一応銃声の軽減というか、質を変えてくれる装備らしいし。
基本的には“どこから撃っているのか分からなくする”為の装備だそうで。
決して映画の様に銃声を消す為の装備ではないとの事。
これがあって、ナナさんことsevenが使っている場面を見てから、なんか違うって感想だったのだが。
あれ、物凄く優秀だったのか。
反動制御のパーツとして、このコンペ……なんとか、凄く優秀だけど。
如何せん、眩しい。
でもサイズとしては、コンパクトになった銃プラスパーツなので。
私としては、こっちの方が取り回しは良い。
なんだけど。
「眩しい!」
『こればっかりは、“そういうモノ”だと思って慣れるしかないんだよ……あまりにも使い辛かったら、別の案考えるから』
という事で、本日の夜は。
件のカスタムパーツが装備されたソレに慣れるという、これまでには無い訓練が開始されるのであった。
カスタムって聞くだけで、凄いって思ってたけど。
やっぱり何事も、デメリットは付きまとうんだね。
コメント
1件
わあ、今回もすごく面白かったです!映画館からガンショップ巡り、そして兄貴との深夜の武器テストまで、一日がぎっしり詰まってて読んでるこっちもワクワクしました。 特に「憧れの感情」ってところが印象的で。ただ強ければいいんじゃなくて、観てる人にカッコいいと思ってもらえる武器を使う責任みたいなものに、夢月が気づいていく過程が自然で良かったです。そしてコンペンセイターの説明!反動を抑える仕組みと引き換えに「眩しい」っていうデメリットを実際に体験するところ、ゲームのリアルな感覚が伝わってきました。 次、どうなるんだろう。楽しみにしてますね!