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夜会の嵐が去った後
アイン様の溺愛は、もはや隠そうともしないほど苛烈で、甘いものへと変貌を遂げていた。
「シンデレラ、今日は公務を早めに切り上げた。街へ出よう。君に見せたいものがあるんだ」
そう言ってアイン様は、戸惑う私の手を取り
強引に、けれど壊れ物を扱うような手つきで馬車へとエスコートした。
行き先は、王都で最も華やかな大通り。
アイン様は人目を憚ることなく私の腰を抱き寄せ、その逞しい体温を常に私に押し当てる。
周囲の視線が刺さるたび、彼はあえて見せつけるように、私の耳元で低く甘く囁いた。
「この店はすべて俺が貸し切った。誰にも邪魔されず、好きなものを選んでいい」
案内されたのは、王都一の宝飾店だった。
並べられたのは、夜空の星を閉じ込めたようなサファイアや、情熱的に燃えるルビーの数々。
「アイン様、こんな贅沢……いいんですか?私はただの『役目』を全うしているだけなのに」
と、遠慮しようとした私を、アイン様の鋭い眼差しが射抜く。
「役目だなんて……これは、俺が君に贈りたくて選んでいるんだ。君の白い肌には、この真珠よりも、こちらの深紅の石がよく映える」
アイン様は自ら選んだ首飾りを私の首に当てがい、鏡越しに私を閉じ込めるように見つめた。
その瞳には、かつての温かな陽だまりだけではなく
一度捕らえた獲物を決して逃さないと決めた、捕食者のような昏い独占欲が渦巻いている。
「似合っている。……ああ、本当に。君をこのまま、誰の目にも触れない場所に隠してしまいたい」
冗談とは思えないほど重い響きに、私の心臓はうるさいほど跳ねた。
その後のデートでも、アイン様のアプローチは止まらなかった。
街で一番人気の菓子店では、私の口元を指で拭い
そのまま自分の指を舐めるような仕草を見せ
花市場では「君の香りに似ている」と言って白百合を私の髪の毛にさして花簪を贈ってくれて。
「アイン様…どうして、そんなに優しくしてくださるのですか?私は、貴方に救っていただいた、ただの侍女なのに……」
溢れ出しそうな恋心を必死に抑え込み、私は震える声で問いかけた。
すると、アイン様はふっと足を止め、夕陽に照らされた美しい横顔を私に向けた。
「……まだ、分からないのか」
アイン様は私の手を、その大きな掌で包み込み、ぐい、と自分の方へ引き寄せた。
鼻先が触れそうなほどの至近距離。
彼の琥珀色の瞳の中に、熱に浮かされたような
ひどく情熱的な自分の顔が映り込んでいるのが分かった。
「俺は最初から、君を侍女だなんて思ったことは一度もない。あの日、君を見つけた瞬間から……俺の心は、君という魔法にかかったままなんだ」
アイン様の吐息が唇をかすめ、甘い痺れが全身に走る。
「あっ、アイン様…!近いです…っ、そ、それになにを仰られているのか…っ」
恥ずかしさのあまり顔を背けようとすれば、アイン様は素早く私の頬に片手を添えた。
そしてもう一方の手で顎を優しく持ち上げられると、視界いっぱいにアイン様のお顔が広がった。
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