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野々さくら
990
#ラブコメ
猫塚ルイ

752
最初は戸惑い、手つきもぎこちない。けれど、ゆっくりと進んでいく。
キスを重ねるたびに二人の張り詰めた表情は和らぎ
次第にお互いの存在を確かめ合うように、深く体を寄せ合い始めた。
画面の中で展開される彼らの行為は、決して下品で過激なものではなかった。
むしろ、お互いを大切に想う温かい感情が画面越しに伝わってくるような、そんな優しい空間だった。
部屋の中に、動画の吐息と衣擦れの音だけが響く。
そんなとき
「なあ」
不意に圭ちゃんが静かな声で口を開いた。
画面を見つめたまま、その視線がゆっくりと俺の方へと動く。
「りゅうも、俺とキスしたとき……なんか感じたりしてたの?」
まっすぐな圭ちゃんの真剣な眼差し。
その強い光に射抜かれ、俺の心臓はドキンと大きく跳ね上がった。
冗談で誤魔化せるような雰囲気じゃない。
俺は熱くなる顔を隠すこともできず、思い切って本音を答えた。
「そりゃあ、もちろん……感じたよ」
「……例えば?」
さらに踏み込んでくる圭ちゃんに
俺は恥ずかしさで頭がどうにかなりそうになりながらも、言葉を紡ぐ。
「えっ?!そ、それは…その、圭ちゃんの、すごくあったかい体温とか……キスしてるときにすぐ近くで聞こえる、圭ちゃんの吐息とか…っ」
「…それに、頭が真っ白になって、キスが終わった後も、まだ唇がピリピリしてて…もっと、って……もっと圭ちゃんに触れたいって、思っちゃった」
心臓の音が部屋中に響いているんじゃないかと思うほどの静寂。
そこまで一気に話すと、圭ちゃんは何も言わずに黙り込んでしまった。
(何か気に障ることを言っちゃった…?それともやっぱり引かれた……?)
急に不安に襲われ、慌てて弁解しようとしたその時
圭ちゃんはフッと小さく、だけど愛おしそうに笑って言った。
「似てんな」
「えっ?」
「俺もりゅうとキスしてるとき、同じこと思ってた。もっと貪りたくなるから」
「……っ!」
衝撃的な告白に、声が出ない。
圭ちゃんはまっすぐに俺を見つめ、その距離をさらに縮めてきた。
「だから…その、俺達ってさ」
そこで一旦言葉を区切ると、圭ちゃんは俺の肩にそっと手を置き、真剣なトーンで続けた。
「男同士とか関係なく、全然大丈夫なんだなって思った。だから……これからも、色々試してみても良いかもしれない」
「え…それって……っ」
「……今みたいな動画、他にも見てさ。ヤり方も調べていつか、本当に、セックスしてみるとか」
圭ちゃんの口から飛び出したあまりにも直接的で積極的な言葉に、脳内が真っ白に染まる。
まさか、ノンケだった彼からそんな未来の話をされるなんて、夢にも思っていなかったからだ。
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