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野々さくら
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#ラブコメ
猫塚ルイ

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すると
「……りゅうはさ、俺がノンケだからって、色々配慮してくれてんだろ?でも、俺自身も正直、今の状況に驚いてんだよ」
圭ちゃんは少し照れくさそうに苦笑しながら、言葉を付け加えた。
「え?状況?」
「……りゅうと普通にキスができたこととか、こうして付き合えてること」
その瞳には、嘘偽りのない誠実な光が宿っている。
「今までは、りゅうとそういうことするなんて想像したことも無かったし、そもそも男とキスするとか、絶対に無理だって思ってた」
「なのに、不思議とりゅう相手だと『男とキスしてる』っていう生々しい感覚が薄まって、気づいたら…ただお前が好きになってた」
「……そ、そうなんだ…?でも、なんで……?」
俺が不思議そうに尋ねると、圭ちゃんは少し視線を上に向けて、記憶を辿るように話し出した。
「……多分、普段から一緒にいすぎてさ、お前が男だとか女だとか、そういう性別の枠で考えたことがなかったんだと思うわ」
「だから、お前が俺に告白してくれたときも、『男に迫られてる』っていう嫌悪感や気持ち悪さじゃなくて、『りゅうが、俺のこと好きなのか』っていう事実が、真っ先に頭に入ってきたんだよ」
圭ちゃんは俺の目をじっと見つめ直す。
「ぶっちゃけ、他の奴だったら『無理』って一蹴して一瞬で断ってる。でも、りゅうのことだけは、傷つけたくねぇし、なんか、感覚が違ったんだよな」
「圭ちゃん…そんな風に、思ってくれてたんだ…」
胸の奥から熱いものが込み上げてくる。
「まあな……。最初は『お試し』のつもりでお前の気持ちに応えたはずなのに、気づいたら俺の方が、お前から目が離せなくなってた」
「それに、あの日初めてキスしたときだって、男の唇がどうこうなんて感覚より、『こいつ、今めちゃくちゃ緊張してんな』とか『可愛いな』って感情の方が完全に勝ってたし」
「……っ!」
可愛い、なんて言葉を圭ちゃんの口から聞かされるなんて。
心臓のドラムがうるさくて、倒れてしまいそうだ。
「……っていうかさ、お前のそういう、余裕のない顔? 他の奴に見せんの、絶対に嫌だし」
「だから、俺の中で『男同士』っていう世間のハードルより、『りゅうを他人に渡したくない、失いたくない』って気持ちの方が、圧倒的に勝ってたんだと思うわ」
圭ちゃんの本音が、熱を持って俺の鼓動を揺らす。
嬉しさと安心感、そして彼への愛しさが限界まで溢れ出し、視界が急激に滲んでいく。
「…そんなに言われると、嬉しすぎて、本当にやばいよ……っ。泣きそう……」
「これくらいで泣くなよ」
「だ、だって…っ、圭ちゃんに受け入れて貰えただけでも奇跡みたいなものなのに……っ、好きになって貰えたなんて、そんな風に言って貰えるの……嬉しくて……っ」
涙がボロボロと溢れ、視界が歪む。
そんな俺を見て、圭ちゃんは呆れたように
だけどこの上なく優しい手つきで、俺の涙を親指でそっと拭った。
「……ほんと、昔から泣き虫なとこは変わんねぇよな…」
「ううぅ…っ、だって……」
「……とにかく、そういうことだから。俺らのペースで、二人でゆっくり進んでいけばいいんだよ」
圭ちゃんはそう言うと
真っ赤になった自分の頬を隠すように、照れくさそうに頭を掻きながら画面へと視線を戻した。
「そういうわけで、次はあの『Sweet Hug』ってやつも見てみるか?」
「う、うん……っ!」
俺は鼻をすすりながら、大きく頷いた。
動画に見入っていたため
いつの間にか俺たちの距離感は、肩と肩が完全に密着するほど近くなっていた。
(……こんなに、幸せでもいいのかな。バチが当たったりしないかな…)
そんな幸せな恐怖すら覚えてしまうほど、今の空間は甘く、愛おしさに満ちていた。
今はまだ、この先にある大きな変化を恐れるよりも、この至福の時間を全身で味わいたい。
そして、これから二人で歩んでいく新たな恋愛の幕開けを予感させるような
甘酸っぱく熱い空気の中で、俺はそっと、圭ちゃんの逞しい肩に自分の頭を預けた。
彼は拒むことなく、ただ静かに、その体温を俺に分け与えてくれた。