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注意書きは一話目をどうぞ。
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Etc.黄色い少年の備忘録
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何処かの土地で、淡く儚い歌声が、耳元で甘く囁く。
その歌声は、ローレライが、愛しき人に捧げる唄とも見て取れるような、優しい声。
ハープを持ち、琥珀色の瞳を持つ少年が、変声期前の高い声で柔く歌う。
「
Цвет твоей жизни такой же янтарный, как и твои ученики ~ ♪
Твоя жизнь такая же красная, как и кровеносные сосуды ~ ♪
Тогда, какого цвета ты живешь? ~ ♪
Это цвет, который нравится богине судьбы」
歌と共に生きて聞こえるその声はシルクの布を折るような柔らかさだった。
美しく儚い音が夜空に溶け、特殊な発音で発せられたその音はこの国の言語ではなく、淡く煌めく言葉の旋律は、蝶が舞う鱗粉のように空気中へ茹だっている。
ゆったりと唄う少年は、少女とも見迷うように顔が整っている。
甘栗の髪色に、肩まである長い髪。
その少年の名は、シャオロン・シトリン。
シトリン家宗家の人間と、分家の人間との間に生まれた可哀想な子供。
それがシャオロン・シトリンであった。
今では有名家系であるシトリン家の実態は、両家とも仲の悪い家系で、お互いが絶えず争いを続ける野蛮な一家とも謳われる事もある。
つまり、宗家、分家、両家は仲が悪い。
では、その間に産まれた子供は?
宗家の人間からは『分家の血が入る穢らわしい人間』と蔑まれ、分家からの人間は『宗家の血が入り交じった汚らしい人間』と罵倒され、その少年は常々居場所がなかった。
「なんで、アンタなんかがっっ!!!」
「穢らわしい。貴様は宗家の人間には相応しくない。」
「なぜ宗家の血が入っている?我々分家の人間を馬鹿にしに来たのか?」
一つ姿を視界に入れれば小石をぶつけられ、二つ視界に入れば体罰という名の八つ当たり
。
華奢で細い少年の身体は、傷のない所を探す方が大変な程怪我を負っており、元々細かった首筋が、更に細くなっていた。
だが、宗家は彼を殺すことが出来ない。
Q.何故?
A.答えは、宗家には、家系を継ぐ子供がいなかった。
本来ならば、宗家と宗家の間に産まれた子供が後を継ぐ。
しかし、宗家には子を生そうと思惑があったが、子を腹に宿すと、次々に女が病死していったのだ。
宗家にいる最後の女は、分家の男と駆け落ち、その後シャオロン・シトリンという世にも珍しい黄金の瞳を持つ気味の悪い子が産まれ、母親は衰弱死し、父親は宗家の人間と行為に及んだことにより打首になり死亡。
齢ゼロ歳。その歳で天涯孤独の身となったのだ。
つまり、宗家の血が流れる者が半分とはいえシャオロン・シトリンしかいなかったため、殺すことが出来なくなったのだ。
彼の短い生の中で、孤独から手を伸ばし、差し伸べてくれた小さな少年がいた。
現在の天の声……ロボロ・ローズクウォーツである。
今の時間から、約十五年遡る。
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s h a 視点
いつも通りに殴られて、蔑まれて、罵倒されるだけの日常。
「なぜあの女が格の低い分家の人間と…っ!?」
「気味が悪いわ!!!とっとと出て立ちなさいっっ!!!」
胸ぐらを掴まれ、思い切り頬を叩かれる。
ロクに食事も取れぬ環境なため、平均よりも極めて軽い体重は、壁へと打ち付けられ、地へと落ちる。
壁にぶつかった背中がジワジワと針で背中を刺すような痛みが襲う。
叩かれた頬も、じんじんと日焼けをしたみたいなあの痛みが這ってくる。
痛みに耐える身体の中で、何気なく、無意識の内に部屋全体を見渡した。
部屋は畳に襖があり、畳が満遍なく敷き積まれているせいか、苦い草の匂いが充満していた。
よく障子を張り替えているので、いつも障子はピンと紙を張っていて、新品同様だった。
今日はとても良い天気で、鬱陶しいくらいの陽射しが部屋にチラリと覗き込む。
淡い黄色の日光に、キラッ、チラッ、と白い無地の花瓶に生けられている白の胡蝶蘭が光合成を始める。
心地の良い日光に、葉緑体はうじうじと活動を始め、栄養を作り、酸素を吐き呼吸する。
「ほらっっ!!!立ちなさいっ!!!」
濃い紫の赤や白の椿を模した模様が縫い込まれた着物に、控えめな無地の黒羽織を羽織った化粧の濃いパープルブラックの髪色に上で高くお団子に纏めた女が、俺の母親姉……叔母に当たる女が拳を奮ふ。
「ぁ、っっ、!!!ガ、ハっ」
絶え間ない暴力に呼吸をする暇は無く、酸素を求め口をハクハクと忙しく動かす。
その行為も虚しく、二酸化炭素だけがからだから出ていき、酸素を上手く吸うことが出来ない。
その苦しさに、生理的な涙まで浮かんでくる。
ハッハッ、と荒い息遣いが自分から出ているのだと気づく。
ダッダッダッ、と力強く畳を蹴る音が微かに聞こえる。
いつの間にか閉じていた瞼を持ち上げると、叔母に当たる女が出ていった所だった。
息をゆっくりと落ち着かせ、傷に響かないよう、庇いながら起き上がる。
ガラガラっ、と控えめな襖を開ける音が一つ。
「シャオ……?」
「だいじょうぶ……?」
俺と同じ歳で、分家の子供、ロボロが居た。
身長も小さく身体は弱かったが、生まれつき魔力量が多いおかげで将来を期待され、俺とは違いとても良い暮らしをしているのだろう。
でも、ロボロは時々、その期待から逃げるように俺の元へと駆けてくる。
期待される事、それが彼の背に重くのしかかっている。
「また酷うやられたな……」
救急箱片手に、包帯と消毒液を出し、不器用ながらも傷を手当しようとしてくれる。
出会いは、以外にも半年前の事である。
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▷▶︎▷nextいいね500
疲れたからここまで。
中途半端でごめんなさいm(._.)m
えー、あまりにも伏線に気付いてくれる人がいないので自分から伏線を公表するようになりました。
「白い胡蝶蘭」
「ロボロ・ローズクウォーツ」
「シャオロン・シトリン」
えー、ここで誤字の訂正
ロボロ・ピンククォーツ……✕
ロボロ・ローズクウォーツ……○
すみません!!!!!!
名前にも意味があるので調べて見てね!
閲覧ありがとうございました!
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