テラーノベル
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「……また負けた」
僕は画面を見つめた。
敗北。
また敗北。
さらに敗北。
ついでに敗北。
そして敗北。
⸻
「よっしゃ」
向かいではシクサーが上機嫌だった。
「五連勝」
「うるさい」
「六連勝いくか?」
「うるさい」
⸻
僕たちは対戦ゲームをしていた。
剣で戦ったり。
避けたり。
コンボしたり。
そういうゲーム。
問題は。
シクサーが強すぎることだった。
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「なんでそんな強いの」
「知らねえ」
「絶対おかしい」
「練習したからだろ」
「僕だってしてる!」
「足りねえんだよ」
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むかつく。
ものすごくむかつく。
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「もう一回!」
「いいぜ」
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試合開始。
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三十秒後。
敗北。
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「なんで!?」
「隙だらけだから」
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もう一回。
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敗北。
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「なんで!?」
「突っ込んでくるから」
⸻
もう一回。
⸻
敗北。
⸻
「なんでぇぇぇ!?」
「俺が強いから」
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腹立つ。
本当に腹立つ。
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「僕だって勝ちたい!」
僕は机を叩いた。
バン!
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シクサーが少し目を丸くする。
「……そんなにか」
「そうだよ!」
「ふーん」
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数秒後。
シクサーは椅子にもたれた。
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「じゃあハンデやる」
「え?」
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シクサーはマウスから手を離す。
ぽいっと机に置いた。
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「俺はマウス使わない」
「は?」
「キーボードだけ」
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僕は固まる。
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「え?」
「これなら文句ねえだろ」
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めちゃくちゃ舐められている。
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「勝つ」
「来い」
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試合開始。
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僕は本気だった。
超本気だった。
人生で一番集中した。
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そして。
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敗北。
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「なんでぇぇぇぇぇ!!」
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シクサーが笑い転げる。
「ははははは!」
「なんで勝てるの!?」
「お前が弱いから!」
「ひどい!」
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さらにもう一回。
⸻
敗北。
⸻
「なんで!?」
「だから弱いから」
⸻
さらにもう一回。
⸻
敗北。
⸻
「なんでだよおおおお!!」
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シクサーは机に突っ伏した。
笑いすぎている。
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「無理だ……腹痛い……」
「笑うな!!」
「だってお前さっきから」
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シクサーが真似をする。
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「勝つもん!」
「やめろ!」
「僕だって勝ちたい!」
「やめろぉ!!」
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完全にバカにされている。
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僕はむくれた。
腕を組む。
ぷいっと横を向く。
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「……」
「なんだよ」
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僕は何も言わない。
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「おい」
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何も言わない。
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「ヌーブ?」
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僕は目元をこすった。
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ぐすっ。
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シクサーが固まった。
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「え」
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ぐすっ。
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「お、おい」
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僕は肩を震わせる。
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「ちょっと待て」
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ぐすっ。
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「泣くな!」
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焦り始めた。
めちゃくちゃ焦り始めた。
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「ご、ごめん!」
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僕は心の中で思った。
釣れた。
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「いやその」
シクサーは完全にパニックになっている。
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「嘘!」
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突然叫んだ。
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「え?」
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「今のはお前の勝ち!」
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僕は瞬きをする。
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「……え?」
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「お前の勝ちだから!」
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「負けてたよ?」
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「勝った!」
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「負けてた」
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「勝った!」
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「シクサー」
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「勝ったって!!」
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必死だった。
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周囲で見ていたプレイヤーたちまで笑い始める。
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「シクサー焦ってる」
「かわいそう」
「保護者じゃん」
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「うるせえ!」
シクサーが叫ぶ。
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僕は肩を震わせた。
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「……ぷっ」
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「ん?」
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「ふふ」
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「……お前」
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「ふはははは!!」
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僕は爆笑した。
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シクサーの顔が止まる。
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沈黙。
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「……泣いてねえじゃねえか」
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「うん」
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「演技か?」
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「うん」
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「お前」
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シクサーの拳が震える。
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「お前ぇぇぇぇぇ!!」
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僕は全力で逃げた。
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「待てコラ!!」
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「やだー!!」
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ロビー中を追いかけ回される。
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でも。
逃げながら振り返ると。
シクサーは怒っているはずなのに。
少しだけ笑っていた。
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そしてその日の夜。
チャットログには。
『本日の戦績:シクサー12勝、ヌーブ0勝』
と表示されていた。
⸻
ちなみに。
その後こっそり送られてきたメッセージは、
「今度は本当に一回くらい勝たせてやる」
だった。
僕はそれを見て笑った。
そして次の日も当然のようにボコボコに負けた。
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