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「お、おいにとり! やりすぎだ! 妖怪の山が全部うどんの汁の匂いになっちまったぞ!」
俺が叫ぶのも無理はない。視界を埋め尽くす白い霧は、どこまでも深く、濃厚なカツオと昆布の香りを漂わせている。 その時、山の頂から地響きのような声が轟いた。
「――この香りは……っ! 懐かしい、この乾物と醤油が複雑に絡み合った『外の世界の合理的な旨味』は……誰だ! 誰が私の山で勝手に飯を炊いている!!」
ズドォォォォン!!
巨大な、しめ縄を巻いた丸太――「御柱(おんばしら)」が空から降ってきて、俺たちの目の前の地面に突き刺さった。 土煙の中から現れたのは、背中に巨大な注連縄を背負い、紫色の服を翻す威厳たっぷりの女神。守矢神社の主、八坂神奈子だ。
「……あら、博麗の巫女に、霧雨の魔法使い。それに……」 神奈子の鋭い視線が、高校生姿の俺に止まる。
「そこの少年。あなたがこの香りの主ね? 不思議な力(不老不死)を感じるけれど、そんなことより、今すぐその霧の正体を私に教えなさい!」
「神様……。これは俺の『特製白だし』を河童のマシンで拡散したものです。あまりにアンタたちが横暴だって言うから、まずは鼻から分からせてやろうと思ってな」
俺が不敵に笑うと、神奈子はゴクリと喉を鳴らした。神様といえど、元は外の世界の神。長い間、幻想郷の質素な供物で我慢していた彼女にとって、現代の技術が生んだ「究極の白だし」の香りは、まさに脳を焼くような劇薬だった。
「……いいわ。早苗が失礼をしたわね。でも、香りを嗅がせるだけなんて、殺生な真似はしないでちょうだい。神を敬うなら、実体のあるものを出しなさい」
神奈子は突き刺さった御柱の上にドカッと腰を下ろし、期待に満ちた目で俺を見下ろした。
「この香りに見合う料理を出しなさい。それがもし、私の期待を超えたなら……この山の信仰を、あなたの『出汁』と半分ずつ分け合ってもいいわ!」
「神様とシェアかよ! 責任重大だな……!」
俺はにとりのマシンを止め、代わりにカセットコンロを御柱の前にセットした。 今回の相手は、力強さと豪快さを司る山の神。繊細な味もいいが、ここはガツンとくる「山」に相応しい一品が必要だ。
「よし、霊夢、魔理沙! 手伝ってくれ。今からここで、幻想郷最大の**『白だし・お祭りちゃんこ鍋』**を作るぞ!」