紫煙を燻らせる。吐き出された灰色の筋は、闇の紛れて消えた。目線の先では、腐れ縁の相方と、頭部から赤黒い液体を流す物言わぬ死体があるだけだ。
「アドミ」
「ん?」
「後処理どうする?」
「……そうやな~…」
なにの後処理かといえば、マァ、殺ること殺った処理である。
時折来るのだ、アジト周り御うろつく舐めてる半グレが。そういう時は、この二人が律儀にちゃんと出かけて殺しに行く。
だが今日は小峯の方がかなりイラついているようで。完全に伸されて気絶している半グレの頭を足で踏み付ける姿にアドミゲスは苦笑した。
「おいおい、やりすぎやって」
「だってさぁ、さっきまでこっちは楽しいコトしてた最中だったってのに。邪魔すんじゃねぇよカス。なぁもうこいつ放置しようぜここに」
「それは別にいいけどさぁ…そんなにキレなくったっていいやろ、時間ありゃ…いつだってできるし?」
妙にこっ恥ずかしくなって、アドミゲスは視線を逸らす。
そう。何を隠そうこの二人、実はヤることもヤッてる関係性なのだ。
先に気持ちを理解したのは小峯の方だった。ふとした時、敵対関係の警察すら魅了するこの自由奔放な男を、手籠めにしたくなった。
簡単に言えば独占欲、とでも言えるだろう。
マァ専門はオンナだったが、まれに男も抱いたことはあったし、最悪合意ナシでもいっかーと思うくらいには、この男は容赦なく物騒だった。
そしてその後、アドミゲスも彼に対する独特な感情が芽生えた。小峯が他の人と話して笑っている姿を見て、なんだかもやりと心が陰ったのがきっかけだった。
経験豊富かつ倫理観ゼロの小峯と違い、アドミゲスは色恋沙汰の経験がなさすぎる上意外と純粋無垢な男だ。しかも今の今までオンナにしか興味のなかったアドミゲスは非常に悩んだ。言ってしまえば、小峯と彼は互いにギャングの構成員であり、腐れ縁であり、仲間だ。そんな関係性である小峯に対して、持っていていい感情なのだろうか。チェイスで十八番の高台ジャンプを失敗してしまうくらい(その後キチンと逃げ切った)には思い詰めていたのだから、相当考えてはいただろう。
いわばお互いがすれ違う両片思いであったが、それが成就したのは最近のことだ。あまりにアドミゲスが挙動不審すぎて、小峯がブチギレしたのがきっかけだった。
詰めて問いただせば、なんと自分への好意に悩んでいるというではないか。そうなりゃ話は早いと、小峯は有無を言わさず襲った。
そこでアドミゲスが生粋の受け体質であることが発覚し、見事お互い念願の関係へとなれたのである。これが約一か月ほど前の話。
閑話休題。
現在。半グレがシマを荒らしていると報告が上がったのは、交接真っ最中であったのだ。といっても前戯として解していた最中であったので、本番まで言っていなかったのは幸いであったといえる。
「だからって邪魔されたのは気に食わんの。ちっ…ムカつくから根性焼きしたろ」
吸っていた煙草を口元から離し、半グレの腕のあたりにジュッと押し当てて「死んでるし良心痛まんわ~」と悪い笑顔を浮かべているのを横目に見ながら、アドミゲスは愛車をガレージから呼び寄せる。
緑と黒の愛しの相棒パラゴンが月の光を反射してぎらりと鋭く光った。慣れた手つきでドアを開け、運転席に乗り込む。
「お~い、こみこみ帰るぞ~」
しゃがんだままずっと火をつけては煙草を押し当てる傍から見れば虚無の作業を繰り返している小峯の丸まった背中に声をかけると、小峯は去り際一発死体の腹に蹴りを入れてから車の傍に戻ってきた。
あまりに強く蹴ったのか少し痛がりながら帰って来る小峯に、アドミゲスは指をさしながら大笑いである。
「ちょ、流石に殺意高すぎやろ、あっはは!」
「ムカついてんだよ」
「引き摺り過ぎだっての、は~おもろ…」
目じりに浮かんだ涙を指で拭う。ムスッとした表情で座ったアドミゲスを車外から見下ろす。あまりに動かないもんだから、頭上に疑問符を浮かべたアドミゲスが声をかけた。
「おい、俺が運転するから。早く助手席行けって」
「…別に今したっていいんだよ?俺としちゃあ」
「へ?」
運転席のドアを開けられ、座席を後ろにがたんと倒された。油断をしていたアドミゲスの身体もそのまま後ろに下がった。簡易的なベッドのようになって寝っ転がった姿のアドミゲスに覆いかぶさるように、入ってきた小峯が陣取る。
すぐに扉を閉め、そしてそのままアドミゲスの履いているスラックスをずり下ろした。思わず悲鳴を上げる。
「おっま、馬鹿馬鹿馬鹿!!!こんなところで盛るやつがあるか!」
「いーじゃん、誰もいないし車内だし。こっちだってお預け食らってこうなってんだから消化させろって」
どんだけ欲求不満なんだよと頭が痛くなりそうだが、そんなことを考える余裕は今のアドミゲスにはない。あろうことか外で、しかも愛車の中で犯されそうになっているのだからパニックだ。だがそんなことになっている間にも、小峯は着々と埋める準備を進めている。
「あ、あ、ぅそだろお前ッ」
「嘘じゃねぇっての。慣らしたばっかだったもんなぁ、まだ感覚戻ってねぇよな?」
その直後。反り立つ小峯のモノが、アドミゲスにずぷりと挿し込まれていく。
「っう、い゛ッ……」
慣らしてから数時間たったからか少し滞りがあるものの、案外すんなりとモノを埋め込めた。アドミゲスはぎり、とその痛みと耐えるべく奥歯を噛み締めていて、手を血が滲みそうなくらいに握りしめている。それでも快楽は得るのか、少しばかり腰は浮いていた。
うつぶせになった彼の表情は小峯からは見えないのだが、繋がった充足感に深く息を吐く表情は恍惚としていて、ニヒルな笑みを浮かべている。無理やりされている姿に加虐心を煽られたのだろう。
「あ~…気持ちい、やっぱ名器だなアドミ」
「死ね……っう゛」
背筋を伝ってそくりと感じる快感に思わず嬌声が漏れた。揺らされるごとに短く、真っ暗な車内に響く。
「あ゛っ…うぁ、は…っあぁ…ッ!」
元々きちんと解され感じていたことが功を奏したのか、単にアドミゲスの感度がいいのか。あっという間にアドミゲス本人は果てた。するとそれに気が付いたのか、小峯が不満の声を漏らす。
「あちゃ、もう果てちゃった感じ?え~、俺まだなんだけど」
「し…知るか……このアホ…さっさと抜け…ッ」
「はいはい、しょーがねぇな」
暴言を投げかけると大人しく引き、ナカのものも引き抜かれた。これで一安心、とほっとする。
だが、小峯はポケットから何かを取り出しアドミゲスの目の前にひらつかせた。
「んじゃ、これ突っ込むよ」
「は…?んだ、それ」
「玩具」
玩具…おもちゃ???
アッチの方向に経験不足なアドミゲスはその単語を聞いて硬直したが、その間も与えず小峯は玩具—エネマグラを埋めさせた。
「あ゛ッッ!!?」
瞬間、びりりっと前立腺を連続して押し込まれる快感がアドミゲスを襲った。一度モノを埋め込まれ解された後孔は、異物のはずのそれもすんなりと受け入れていく。
突然の快楽に身悶えしていると、小峯はアドミゲスの身体を転がすようにして後ろの席へ寝かせた。
「はい、後ろいてね~。俺運転するから。」
えーと、鍵鍵…と小峯がチンタラ探している間にも、後孔に突っ込まれたエネマグラはアドミゲスの内部をじっくり侵食していく。身じろぎでもしようものなら、体が揺れる小さな衝撃だけでも身体は快感を拾ってしまっていた。
「ふ……っ…」
この昂ぶりを収めるべく、深く息を吸う。落ち着かせれば、どうということはないはずだ。所詮玩具だし。
じんわり感じる腹部の熱に身悶えていると、運転席から声が降ってくる。
「あ、ごめんアドミ。早く帰りたいし飛ばすよー?」
あーはいそうですかって、返事なんてできるわけがねぇだろ勝手に飛ばしてろ…そう思っていた矢先。
がたん、と勢い良く車が揺れた。
「う゛っ…!?♡」
その衝撃で、落ち着かせていたはずの熱が腹の中で再度蠢きだした。
改めて、此度の作品はこみハンにはそういう方向でもオトナのやり取りしててほしいという願望。
そして私の好きなシチュを詰め合わせたことによる産物である。
今回は二人ともIRiS時代の作品となっているし、作品の開始以前からエッッなことをする関係性だし、
時系列がよくわからないことになっている。
なにせこの二人、街での変動が多すぎるもので。あとあまりにも私に文才がない。
あと、なるべく「♡」は付けたくなかったのだが、やはり書くうちにどんどんついてしまって、
ちょっとどころかかなりあまあまになってしまった。
今後書くやもしれぬ作品たちにも、かたや巧みに銃をぶっぱなし、かたや車を手足のように操るかっこいい二人は
ほとんどいないと思ってほしい。許してくれ同志たちよ。
だが私の贖罪を許してくれる心優しき同志たちは、どうか温かい目で作品に目を通していただきたい。
私的には長いと感じたので、今回は前半後半で分けた。
ご好評いただけたり、ご要望があれば、そのあたりも遅筆ながら書ければと思う。
それでは、ここまでご覧くださりありがとうございました。
コメント
3件
すっごいいいです!?貴方は神ですか?!
最高すぎます、!