コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
第41章 静寂に差す影
――戦いは、終わった。
地球全土を覆っていたルシフェルの軍勢は、ゲズたちの決死の戦いによりすべて撃破された。
焼け焦げた大地と、まだ燻る煙の中に、かすかな風が吹き抜ける。
「……やった、のか」
ゲズは剣を地面に突き立て、肩で息をしながら周囲を見渡した。
血と汗と、いくつもの涙の跡。仲間たちは倒れた者を抱き、癒し、互いの無事を確かめ合っていた。
セレナもまた、傷ついた者たちに魔法を送りながら、ゲズの背を見つめていた。
「みんな、守りきったね……」
その言葉に、ゲズは小さく頷いた。
「だけど……」
ゲズはふと、空を見上げた。
ほんの一瞬、鼓動が凍るような感覚が胸をよぎった。
「……なんだ、この……妙な違和感は……?」
彼の隣で、セレナも顔を上げた。
風が止まり、空気がわずかに重くなった気がする。
「ゲズ、私も……感じる。何かがおかしい。だけど、今はまだ……はっきりしない。」
それは、戦いの終焉を告げる静寂の中に、ほんの一滴だけ垂らされた“影”。
姿も名もない、正体不明の圧力。それは、遠い星の深淵から滲み出した、次なる災厄の予兆だった。
だが、今はまだそれが何かを知る者はいない。
ゲズは深く息を吸い、剣を鞘に戻した。
「今は……仲間たちの元へ戻ろう。ここからが始まりだ。」
そうして、彼は再び歩き出す。