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第42章 眠れる英雄
ルシフェルの軍勢との地球防衛戦は、ついに終結した。
だがその代償はあまりにも大きかった。
焦げた空、崩れた大地、倒れた仲間たち。喜びよりも静かな痛みが、戦場を覆っていた。
その中で、ウカビルはひとり、夕暮れの地平線を見つめていた。
「……また、守りきれなかった。」
かつて彼は、何百年も前、仲間をすべて失った。たった一人で軍勢に挑み、敗れ、囚われた。
今回もまた、自分の無力さが胸を刺していた。
「カティナ……」
彼女はかつて共に戦った仲間だった。だが、今回の戦いではルシフェルに操られ、狂気の刃を振るった。
ウカビルの手で、その命を断つしかなかった。
それでも、仲間たちの未来を守るため――彼はその剣を濡らしたのだ。
背後から近づく足音に気づき、ウカビルは振り返る。
ゲズとセレナがそこに立っていた。
「……少しは、休まないと」セレナが優しく声をかけた。
「……いや、まだだ。俺にはまだ、贖わねばならぬ罪がある。」
ゲズは静かに言った。
「それでも、あなたは今の俺たちの仲間です。過去がどうあろうと、未来は変えられる。」
その言葉に、ウカビルはわずかに目を見開く。
自分があのとき守れなかった“希望”を、この少年はまっすぐに信じている。
「そうか……ならば、俺もその未来に賭けてみよう。」
剣を握る手に、ふたたび熱が宿った。
英雄は目を閉じ、再び静かに歩き出す。
眠れる魂は、再び目覚めた。
本当の意味で――今、未来のために