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最後wwww 最高ですっ
ねこおじwww
あれから少し経った。ぼんさんは俺の城に住むことにしたらしい。
この城にいるのは俺とぼんさん、あと側近の二人だけだから、二人になんとか納得してもらった。
最初はぼんさんのことを「勇者」と呼んでいたぺんちゃんも、
「あー!ぼんさんぼくのケーキ食べましたよね?」
「た、食べてないって!証拠ないでしょ証拠!」
「ぐ、ぐぬぬ…」
「ぼんさん、ケーキなら新しく作りますから。」
「おんりーちゃぁん…」
「で、食べたんですか?」
「美味しそうでつい..,」
「やっぱりぼんさんじゃん!」
すっかり打ち解けたみたいだ。まろくんとも仲良くやってるみたいだし、とりあえず、心配なさそうだ。
おらふくんとねこおじには詳しいことはなにも言わずに来たから、もう魔王に殺されたことにするか、知らせるか、迷っているらしい。
「りーちゃん。」
「ん?どしたのまろくん。」
「…ぼんさんのお仲間さんが来てるみたいだよ。」
「!」
台所にいるぼんさんの背中をたたく。
「っ!何々おんりーちゃん!ケーキのことはごめんって…」
「…おらふくんたちが来てるそうです。多分、ぼんさんが帰ってこないから…」
「….そう。」
「どうします?城に入れなければぼんさんは死んだことにできますけど…」
「…いや、二人に会う。」
「!…わかりました。扉の鍵開けておきますね。」
「うん。悪いね、おんりーちゃん。」
「…いえ。…そのために作った城ですから。」
「…?それってどういう…」
ガチャ
「ぼんさぁーーーん!!!ここにおるんですよねぇーーー!!」
「お、おらふくん、敵の本拠地なんだから、もっと慎重に…」
「そんなこと言ってられんですよ!ぼんさんああ見えて無茶するんですから!」
「来たね。」
「….。」
「それで、さっきのそのために作った城っていうのは…」
「…僕の魔王としての能力って結構いろいろありまして。コマンドとかも使えるんですよ。」
「え!そうなの?チートじゃんか。」
「はい。だから、この城も実はドズルさんの国のやつをコピーして、自分なりにアレンジしたやつなんですよ。」
「あー、なるほどね。確かに、見た目も間取りも同じだったもんね?」
「…あと、バイオームをいじって、ジャングルにしたんですよ。そのー…パンダがいたらおらふくんが、喜んでくれるかなって…」
「あー…それで竹が生えてたのね。」
「はい。…でも、城のなかには全然スポーンしてくれなくて…だから、スポナーも置いてみたんですけど…やっぱりうまくいかなくて。」
「…おらふくんのこと、ホントに大事なんだね。」
好きなんだね、とは言いたくなかった。
「…はい。親友なので。」
「…会わなくていいの?」
「…今の僕は、記憶の無いおらふくんからしたらただの魔王なので。怖がらせたくないんです。」
「….まー、そうだけど…」
ぼんさんが魔王城に行ってから3日。
あまりにも帰ってくるのが遅いから、もしかして捕まっちゃったんじゃないか、とねこおじと話して魔王城に乗り込んできた。
でもなんだろう。城に入ってから感じ始めたこの違和感は。
まるで今の自分が自分じゃないような、なんというか。
何かを忘れてる気がする。
城に入る扉は開いてて、広いロビーがあった。そしてそこには───
「あー!パンダさんがおる!かあいい!」
「あ、ほんとだ。この辺はジャングルバイオームなんですかね?」
「僕がおった地域寒いとこやったから、初めて見ました!かわいい!」
「あれ?よくみたらそこにスポナーありません?」
「ほんとだ!パンダのスポナーなんてあるんすね!」
「いや、普通は生成されないから….誰かが作った、ってことじゃないかな?」
「パンダのスポナー?誰かが…作った…?」
『あのー、スポナーもう一個探しません?』
『おっけー、いいよー』
『どうしてもやってあげたいことがあって。』
「….なんだ、今の…?」
「おらふくん、どうかした?」
「いや….なんでも、ないです…」
なんだ今の。
僕の知らない記憶の断片。
いいや、知っているはずだろ?僕は。
忘れたのか?
まだ頭の中に残っているはずだ。
でも、
いつなのかも、
どこなのかもわからない。
僕は何を思い出せてない?
そして、声の主は、誰だ?
優しい声。
僕の大事な…
「おらふくん、ねこおじ。」
「っぼんさん!!!」
そこには、いつものぼんさんが立っていた。
「さ、探したんすよ!なかなか帰ってこんから!」
「うん。ごめんね。」
そういうぼんさんはどこか決まり悪そうな感じがする。
「…心配しました。」
「ありがとう、ねこおじ。」
「それで、何があったんすか?」
「….えっとね。….。」
言葉を探している。きっと僕たちを傷つけない言葉で説明しようとしてくれている。
「…俺、ここに住むことにしたんだ。」
「…へ?ここって…魔王城…ですよね?」
突拍子もない答えに困惑する。予想の斜め上にもほどがある。
「…うん。」
「…どういう….ことですか。」
「….俺は、不老不死なんだよ。だから、二人と一緒にいたら、いつかお別れしないといけなくなるから。…仲間を失う瞬間なんて知りたくない。そんなことを知るくらいなら…って思って。」
「….っ!」
なんだよそれ。
僕たちじゃどうしようもないことじゃないか。
人智を越えた悩みなんて、太刀打ちできやしない。
「…だから、国王には、俺は魔王に殺されちゃった、とでも言っておいて欲しい。」
「…わかりました。」
「っねこおじ?!」
「…ぼんさんが決めたことなんですから。」
「で、でも.,.」
「…ごめんね。」
なんで謝るんだよ。あなたは悪くないくせに。
「…ぼんさん。やっぱり僕からも説明を──」
ふと、声が聞こえる。
その先には小柄な男が立っている。きっと彼が魔王なのだ。
そして気づく。
その声の主を僕はよく知っていることに。
「…お、んりぃ?」
なんで忘れてたんだ?
こんな大事な友達のことを。
俺のことを。
違和感が消えていく。
国に仕える剣士なんかじゃない。
勇者のパーティーの一員でもない。
そうだ僕は────
ドズル社のメンバーだ。
あまりにもぼんさんの説明の仕方に不安しかなかったから、思わず声をかけてしまった。
久しぶりに見たおらふくんとねこおじも元気そうだ。
よかった。
でも、顔を見ていても辛くなるだけだ。思い出してもらえないなんて。ならば、さっさと話をつけて───
「…お、んりぃ?」
「…え?」
おらふくんが俺の名前を呼ぶ。
まさか。
「おんりー、おんりーやん!!なんで今まで気づかんかったんや!!え?!なんで魔王なんて、いや、その前になんでぼんさんと…」
元々記憶があった、というより思い出した….ってことなのか?
「…おらふくん。ちゃんと説明してあげるから、落ち着いて?」
「…うん。ごめん、取り乱してもうた。にしても、村で会った時、僕雷の火に気ぃ取られておんりーの声とか聞こえてなかったんよ。やから気付かんかったんかな。」
「….どうだろうね。ここに来るとき女神さまみたいな人と話した?」
「うん。めっちゃ綺麗な人だった気がする。」
「自分もその人に説明されたりしたけど…思い出すなんてことがあるんだね。」
「ね。僕もびっくりしたわ。」
「こーゆーことってあり得るんだね。」
「説明しといてくれたらよかったのに、あの女神さま。」
「確かに。結構ズボラな神様だね。」
「ねー」
「じゃ、じゃあおんりーも不老不死なん!?」
「らしい。」
「ええー僕もそんな能力欲しかったー!」
「悪いな、おらふくん。俺、勇者だからさ。」
「うわぁーー!うらやましいーー!」
「まぁまぁ、もしかしたらもっかいあの神様が出てきてくれるかもしれないし?」
「絶対出てこんやろー…なんか声とかちょっと合成っぽかったし。」
「え?そうだった?」
「まぁ、言われてみれば。変声器を使ってるみたいな感じでしたね。」
「そ、そうだったか…お、覚えてないなぁ。」
「ぼんさん、どーせ美人だなーぐらいしか見てなかったんじゃないすかぁー?」
「そ、そんなことないし!!」
「え、そうなんですかぼんさん….?」
「ち、違うからね?おんりーちゃん。」
「何必死になってんすかぁー?」
「う、うるさいよ!」
ああ、いつも通りだ。
おらふくんもぼんさんもいて、楽しい。
永遠に共にいられなくても、今はこの時間を楽しみたい。
どうせ時間なんて、これからたくさんあるんだから。
「み、みんなでなんの話してるんだろう…もしかして僕のこと忘れられてます?」