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私は何を頼むか考えていた。

小さい頃に一度だけ食べたミドラでも良いし、ラーマ群星で採れる果物を使ったジェラートでも良い。

でも一つだけ言いたいことがあった。

「値段、高いね…」

「まぁな。ここの食堂は一流の料理人しかいない」

ジュプエもこの短時間でタメ口に慣れたようだ、様になってきている。

「役員会に入ったらこんな感じなのかなぁ」

「ここは役員会を目指す生徒を積極的に養成する場所だからね、食堂もその一環って言ってたよ」

ルザネはチラリと窓を見て「俺、ミドラ」と写真を指差す。

「じゃあ私プリンアラモード」

そう言うとジュプエがフッと笑って「そう言うと思ってた」とジュースの氷をストローで回す。

「…なんで分かったの?」

「ジュプエってよく見ると地球のことを研究してそうだなと思うからだ。…そういえば、数十年前地球研究隊が出たというニュースが出回っていたな」

私はその時初めてジュプエという者は感が良いと気が付いた。

「…そうだね。でも、研究に行ったのは母とその他だけだよ」

俯いて、今自分がどのような表情をしているのか確認した。

地球は南の未開拓地以上ではないが一部の人から少し嫌がられる場所ではある。

「…だよな。数十年前と言われると言葉が喋られるかどうかも怪しいもんな」

ジュプエも嫌いなのだろうか。ルザネは…分からない。

「私は別に嫌いとか言うわけではないから安心してくれ」

「俺もだよ」

二人は私に笑ってくれた。

「…では、私もプリンアラモードを頼もう」

ジュプエの紅い眼は笑っていた。


「じゃあまた明日!」

ルザネは私達と逆方向なのでバス停前で別れる。

「意外とプリンアラモードは量が多いのだな」

「そうだね」

バスが来て、ドアが開く。

私は先に乗ったジュプエに続いて乗る。

「…なぁ」

ジュプエが少し緊張したようにこちらに話しかける。

「うん?」

「もし、機会があればエリアの家に行ってみたい」

そんなことに興味があったのか、と少しびっくりしていると

「…別に、研究に興味のあるエリアの部屋が気になるだけだ」

と慌てて付け加えた。それが子供らしくて笑ってしまった。

「な、笑うな!」

「フフフッ……。…別に、来ても良いんだよ?」

ジュプエはきょとんと目を丸くした後、意外そうに口を開いた。

「そ、そうか…では、明日の放課後伺わせて貰おう」

外の景色は少しオレンジで、蒼く染まっていた。

「じゃあ今の部屋は足の踏み場がないからちゃんと片付けなくちゃね」

私はジュプエに向かってにっこり笑い、「じゃあまた明日」と声を掛ける。

私は手すりを掴んでゆっくりと階段を下ってバスを降りた。

大きな門を開き、家の中へと入っていった。


結んでいた髪飾りを解き、机の隅に丁寧に置いた。

(…疲れたな)

机の燭台に光を灯し、フッと息を吐く。

エリアという少女には、何かを感じた。まぁ所詮ただの感だが。

「でも私に敬語じゃなくていいって言ってくれたのは彼女が初めてだよなぁ…」

ただ地球を研究しているということが少し気にかかる。

何を研究しようが個人の自由だが…本来地球とは神々が暇潰しに作ったものであり何か発展したものは得られるはずでもない。

地球に住むものは私達の歴史を辿りつつも、いずれ滅ぶ。

「うーむ…エリアが何を考えているのかよく分からんな」

地球人、研究、エリア、歴史、滅び……。

髪飾りを摘み上げ、光の当たり方を見ながら考える。

(今考えても意味のないことだ。いずれ分かる)

今日は久々の学校のせいか、ドッと眠気と疲れが押し寄せた。

部屋の明かりを消し、ベッドに倒れるとそのまま寝てしまった。


私は部屋に散らばる、書き殴られた紙を片付けながら明日のことを考えていた。

ジュプエとルザネは私の初めての友達だ。やっと念願の友達が出来たのだ、出来れば変なことで手放したくない。

(うーん、ルザネは多分大丈夫だと思うけどジュプエはなんか地球関連のことは苦手そうだからな、何に気を付けて何を話すのか考えなくちゃ)

「地球に悪い人なんていないんだけどなぁ…」

まぁ仕方がない。地球は元々暇潰し、というか神々が作ったものに少し興味がある程度で研究していたのだった。

でも、色々と生体を観察しているうちに地球には研究価値はある、と気が付いた。

地球に存在する生体たちは私達より短い寿命にある。つまり、その生体たちが滅ぶ瞬間を捉えることが出来るのだ。

(寿命が短いことを逆手に取って、観察してみることで未来を知ることが出来るかもしれない…)

「でもまぁ、疲れたし今日はここまで。明日また早起きすればいい」

ふあぁと大きな欠伸をした。

書類を退け、その場に寝転んだ。良い夢が見れるといいな。

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