テラーノベル
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4.クラゲドーム
360度ミズクラゲが漂う水槽は内側に入って見られるようになっている。
たまに人の出入りがあるが、イルカショーに向けみんな気持ちが逸っているのかしばらく見ると去っていく。
最近の多忙はありがたい事ではあるけど、やはり少し息が詰まる。ここで頭を空っぽにしてただクラゲに包まれる時間は非日常で、日々の喧騒から逃れられる。
クラゲをただ見ているのが好きという人が多いのもわかる気がした。
💙「なぁ」
翔太の不機嫌そうな声がした。
向こうはもう飽きてしまったらしい。
💚「ん、クラゲのソーダ買おう」
売店で夜間営業限定のクラゲソーダを注文する。翔太のリクエストで、バニラアイスを乗せてもらってフロートにした。
ストローにクラゲの飾り。中には光るキューブが入っていて、夜の暗い水族館の中できらきら光っている。
それを眺める翔太は嬉しそうだ。早く飲みたかったんだな。
もう少しクラゲを見ていたかったけど、翔太の機嫌が良くて緩んだ顔が可愛いのでまぁいいかと思うことにした。
💚「あ、見て」
💙「んー?」
売店の天井にはクラゲの風鈴がいくつも飾られていて、壁際にレジンで作られたハンドメイドのクラゲのアクセサリーが販売されていた。
💚「ほら。ピアス、綺麗」
💙「ほんとだ、俺っぽくないけど」
💚「浴衣着た時とか敢えてこれ可愛いんじゃない?買ってあげるから着けてよ」
💙「えぇー」
乗り気でない返事をした割に、翔太は1つずつ模様が違うクラゲたちを真剣に見比べ、最終はちゃんと青と緑のマーブル模様の入ったのを選んでくれた。
💙「阿部ちゃんはこっちだな」
💚「どれ?…あっ、いいね」
翔太は『これもください』とクラゲのペンホルダーを追加した。
支払い俺なんだけど。
コメント
4件
なんだか男臭い阿部ちゃんだな