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スピカが部屋から出てから少し経った。
窓を見ると空はもう真っ暗だった。
__と言うか魔界の空は基本的に暗いのだが。
今思い返せば魔王になったばかりなのにたくさんの人と出会った気がする。
転生してなかったらずっと家に引きこもってただろうな。
ベッドに寝っ転がりくるくる回ってみる。
このベッド、とてもふかふかで気持ちいい。
良いところのベッドなのだろうか?
ごろごろとゆっくりしていると、部屋にノックがかかった。
「入れ」
部屋から出てきたのは、レイチェルだった。
「失礼します。陛下、お体はもう洗いましたでしょうか?」
忘れてた。
そういえば転生する前は1週間お風呂に入らない時がよくあったが、今は女の子だし入らないと危ない。
「まだお風呂に入ってないから、もうすぐ入る。」
「かしこまりました。ごゆっくりどうぞ。」
あれ?そういえばどこにお風呂があるんだろう?
クローゼットを見てみたら寝巻きはあったのだが…
そういえばこの部屋には外に出るドアの他にもう一つドアがあった。
気になったので開けてみる。
「すっげぇ……」
思わず出たその声は、少し響いていた。
そのドアを開けてみると、超豪華な浴槽があった。
分かりやすく言うと、豪華なプールの水を全部お湯に変えた版みたいな感じだ。
棚にはタオルが置いてあるし、早くこのお風呂に入ってみたい。
よし、入ろう!
ドレスを脱いで、棚に掛けられていた薄い服を着て、早速足を踏み出した。
奥にはシャワーがあり、台の上にシャンプーやリンス、ボディーソープがある。
まずは頭を洗うことにする。
シャンプーを手に出してみると、それはとても美しい花の匂いだった。
見てみると金木犀の匂いらしい。
転生する前は髪の毛を切っていなかったので、前髪が顔を覆っていたり、腰まで髪の毛が長かったので、今はそんなに長くないので洗いやすい。
シャワーで洗い流すと、次はリンスに取り掛かる。
リンスもまた良い匂いで、これも金木犀の匂いだそうだ。
しっかり髪の毛の先端から塗ってゆき、リンス用のくしがあったのでそのくしで髪をとかす。
とかすのが終わったので、シャワーで洗い流す。
髪の毛はとてもさらさらで気分が上がった。
体と顔を洗い終わり、次は浴槽に入る。
浴槽には花びらが浮かんでおり、とても心地がいい。
浴槽も花の良い匂いがするので、これも気分が上がった。
ロアは花が好きだったのだろうか?
浴槽のお湯は、とてもお肌がしっとりして満足感があった。
「魔王さいこぉ〜」
このお風呂に毎日入れるのはめちゃくちゃとても嬉しい。
体が温まってきたので、そろそろお風呂をあがる事にする。
棚に置いていたバスタオルで体を拭き、保湿クリームがあったので塗っておく。
パジャマをクローゼットから出し、着てみる。
パジャマはとても動きやすく、快適に睡眠をとれる。
色は黒と赤で、所々ドレス要素もあるのでおしゃれを楽しめる。
歯ブラシがあったのでなるべくきれいに歯を磨いて、ふかふかなベッドに寝っ転がった。
「極楽だなぁ〜」
何回も思うが、転生してよかったと思う。
交通事故に巻き込まれて、亡くなってしまい親に悲しい思いをさせてしまったのはとても申し訳ないが、転生して今はとても幸せだ。
ふかふかの布団を被り、幸せそうな表情で目を閉 じた。
朝になった。
魔界の朝は夜のように暗いが、気にしないでおく。
布団から出て立ち上がり、背伸びをする。
魔法で水を出し、顔を洗う。
そしてクローゼットに片付けておいたドレスに着替える。
パジャマを脱いで、ドレスを着る。
鏡を見て、問題がない事を確認すると、小さく頷いて朝食が来るのを待つ。
しばらく待っていると部屋にノックがかかり、妖精メイドが朝食を届けに来た。
スピカではなかったが、このメイドも可愛かった。
妖精はみんな美人なのだろうか?
朝食に出されたのは、フランスパンのようなパンと、ヨーグルトだった。
バターも添えてある。
健康的で良い食事だ。
フランスパンのようなパンに黙々とバターを塗って食べる。
ヨーグルトも美味しかったのですぐに完食した。
妖精メイドは食べ終わった皿を片付け、「失礼します」と言い、部屋から出ていった。
窓を見てみると、外には何やら運動をしているラグレスがいた。
興味があるので見に行く事にする。
そういえば翼を出せるので、危ないかもしれないが、窓を全開にして翼を出してギリギリの間を通って窓から外に出てみる。
「っわ…自由に飛べる……」
風がとても気持ちいい。
ラグレスの近くを狙って下りる。
普通ならば何やってるんだと怒られるところだが、魔王だし怒られないだろう。
と言うか飛ぶなんて吸血鬼の中では当たり前のようで、窓から見える限り吸血鬼が飛んでいるのが見えたので魔王じゃなくてもセーフだと思う。
地面に着地すると、ラグレスが振り向いた。
「おっと、陛下。おはよう御座います。」
「おはよう。ラグレスは何をしていたんだ?」
当たり前だが挨拶をされたので返す。
この世界でも挨拶をするのは感動。
「私は強くなるための訓練をしておりました。私は、人の姿を保っておりますが本来は人ではないので…」
なるほど、訓練か。
ってえ?本来は人じゃない?
「人の姿を保っているというのが気がかりになる。どういうことだ?」
この質問が失礼だったら申し訳ない。
だがとても気になる。
「あぁ、私は希少種、鬼族なのです。鬼族は姿が人によって変わるので魔獣のような姿になることもあるのです」
なるほど…?
よく分からないがここはファンタジーな世界だしとりあえず受け入れることにする。
「なるほど…そういえばラグレス、訓練すると言っていたな。」
「ええ、強くなりたいので。」
さっきラグレスが訓練をしていると言っていたことを思い出した。
そういえば戦った事がない。
魔王だし戦闘経験は豊富じゃないとだめだろう。
ということで、ラグレスと戦ってみることを提案してみる。
「ラグレスが良いのであれば、我と戦ってみないか?」
もし自分が弱くてボロボロになってしまったら怖くてもう戦えないだろう。
しかし弱い魔王でいてはだめだ。
こっちも強くならないと…
「良いのですか?陛下。」
「勿論だ。体を動かせてちょうどいい。だが、本気を出させてもらう。」
適当にかっこいいことを言う。
「かしこまりました。では、条件をつけさせて頂きます。」
条件がないとどちらかが不利になるし仕方がない。
こっちは戦闘経験ないし。
「スキルを使っての攻撃はなしにします。大きな差が付きますので。代わりに攻撃方法は何でも大丈夫です」
スキルというのがあるのは初耳だった。
スキルが弱い人や強い人などバラバラなのだろうか?
確かにそれは大きな差が付く。
「分かった、じゃあ始めるとしよう。ラグレスから行って良いぞ」
「分かりました、陛下に殴りかかるのは申し訳ない気持ちですが……」
ラグレスが攻撃をし始めて戦闘はスタートした。
ラグレスの拳を避け、こちらも攻撃を仕掛ける。
精一杯の力を込めてラグレスに蹴りかかる。
容赦なんかしない。
ラグレスが攻撃を仕掛けようとしたので攻撃が来る前にラグレスの頰を殴る。
ラグレスが吐血して、一瞬ロアの動きが止まる。
ラグレスがそれを狙い腹を殴る。
その拳に気づきこちらも腹を殴る。
思いっきり体重をかけてラグレスを倒れさせると、動けないように優雅にラグレスの上に座った。
「やはり陛下の力は偉大です。私も強くならないと…」
戦闘はとても楽しかった。
怪我させてしまったらどうしようと焦ってしまうが、そんなことで焦っていたら敵にすぐにやられてしまうだろう。
改善点を見つけ、次に生かす事にする。
「我は楽しかったぞ、またやろう。」
「はい。」
ラグレスは微笑み、屋内に入って行った。