〘 藐 視 点 〙
壁の向こうで、れるちの泣き声が小刻みに震え、
こえくんの低めの優しい声がそれを包み込むように響く。
今日も眠れなかった。
毎日、薬に頼らなければ寝れない日々。
さすがに毎日薬を飲むわけにはいかないから
1週間で3日くらいは眠れずに起きてる。
病院には行ってないけど、不眠症あたりだと自覚している。
兄弟には、不眠症のことを言ってない。
俺は次男だから、兄はこえくんだけ。
弟に頼るのも申し訳なくて、こえくんはれるちのお世話で忙しいから。
迷惑はかけられない。
夜のれるちのお世話をしてあげられたら、こえくんが少し楽になるかもしれない。
でも、否定されるのが怖くて話せない。
兄弟すら信用できていない自分に腹が立つ。
……前はもっと、なんでも話せたのに。
こえくんと笑い合った夜が、ふと頭をよぎる。
いつからこんなに距離ができたんだろう。
目の奥が熱くなる。
息をするだけで胸がつまる。
壁越しに聞こえるれるちの泣き声が、心をえぐるようだ。
藐 ⌒ 俺 、 こ こ に い る の か な ……
自分が存在しているのかすらわからない。
ここにいる意味はあるのか、ということが頭をよぎる。
誰かの役にも立てないし、必要ともされてない。
部屋で1人、時間の流れに身をゆだねる。
息をする以外、何もしていない自分に気づく。
夜はまだまだ終わらず、静けさだけが延々と続いていく。
時刻は午前4時。
こえくんはきっと寝ている。
朝のご飯や大体の準備はこえくんがやってくれるので、俺はなにもすることがない。
手伝いなどはできるが、兄弟全体が最近気まずい。
俺が話しかけることなどできなくて、なにもできない。
…ほんとに俺、いらないんじゃないかって、苦笑いながら泣いてしまった。
ただ〃泣くことしかできない俺は
どうするのがいいんだろうな…。
……でも、このままじゃきっと壊れる。
俺も…、兄弟も。
なにかしなきゃと 胸が焦げつくように痛い。
息を吸うのも、吐くのも重い。
震える手を握りしめ、何もできない自分に苛立つ。
そんな俺を置いて、 朝日は無情にのぼっていく。
部屋を満たす光が眩しすぎて、俺の存在の薄さを、さらに実感させる。
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