ライブリハを終えた夕方、楽屋にはゆるやかな時間が流れていた。
「太智、この動画見た?めっちゃヤバいって、これ!」
「えっ、なにそれ、あ、佐野さんちょっと待って再生押すの早いって!俺まだ見れてない〜!」
 スマホの小さな画面をふたりでのぞき込みながら、肩を寄せ合って笑い合う勇斗と太智。その楽しそうな様子に、近くで水を飲んでいた仁人は、つい目を細めた。
 (……なんであいつ、あんなに楽しそうにしてるんだよ。てか距離近すぎ)
 じっと見つめていると、ちょうど太智が笑いながら勇斗の肩にぽすっと頭を乗せた。
 その瞬間、仁人の中で何かがぷつっと弾けた。
 「……はぁぁ?」
 低く漏れた声に気づいたのは、たまたまその場を通りかかった舜太だった。
 「じんちゃん!今めっちゃ怖い顔してたけど、どうしたん?」
 「別に……」
 「うそや〜!絶対してたって!」
 満面の笑みでそう言うと、舜太は仁人に勢いよく飛びついた。
 「な、なに、いきなりっ」
 「なぁ、じんちゃんのあの歌い方って、裏声にしてから地声に戻るとき、どうやってるん?真似したいんやけど、教えてくれん?今ここで!」
 ぴったりと抱きついてきた舜太に、仁人はあたふたとしながらも、内心少し嬉しい自分に気づいていた。
 (……ったく、なんで俺がこんな)
 そして、そのやり取りをこっそり見ていたのは太智だった。
 (……は?)
 仁人にぴとっとくっついて離れない舜太。笑いながら話してる仁人も、あきらかにまんざらでもなさそうで。
 「…………仁人なんであんなに楽しそうなん」
 ぼそっと太智が呟いたのを聞いた勇斗が、動画を止めて太智を見た。
 「ん?太智、なにか言った?」
 「えっ?あ、ううん!なんもない!……なーんも!」
 そのわりにはスマホの画面から視線を外し、じっと仁人と舜太のほうを見つめていた太智の頬は、じわじわと膨れていた。
 (なんで俺、こんなモヤモヤしてんねやろ)
 誰が誰を好きなのか、誰が誰に嫉妬してるのか。
入り乱れる気持ちを誰も言葉にできないまま、M!LKの楽屋は今日もにぎやかに過ぎていった。
続くかもしれないですけど、この先のこと何も来んがえてないので何か案などがあればコメントしていただけるとありがたいです!
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!