テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
341
まくら
135
みおん
5,265
33
コメント
1件
おおっ…第76話、めっちゃゾクゾクしたよ…!「もう一人」って存在が写真に映ってて、しかも青いリボンがキーホルダーとリンクしてるの、鳥肌たった…。それに「忘れたから」って返信、怖すぎるし切ない。だって事故で記憶を失っただけじゃなくて、約束も箱もその人自体も忘れてたってことだよね…こわい。最後の矢印、次が気になりすぎるよ😭💦
第七十六話 もう一人
『もう一人、そこにいた』
知らない番号から届いたメッセージを、
彼は何度も読み返していた。
「……誰?」
彼女が小さく尋ねる。
「分からない」
彼は首を振った。
「俺の記憶には、いない」
事故の直前。
雨の中、一人で階段を下りていた。
それが彼の中に残っている記憶だった。
けれど、それは本当に正しいのだろうか。
「写真を見てみよう」
彼女が鞄から、これまで見つけた写真を取り出した。
二人で一枚ずつ並べていく。
駅。
店。
病院。
そして、さっき見つけた古い建物。
「……この写真」
彼女が一枚を持ち上げた。
事故前日に撮られた写真だった。
二人が店へ向かう途中の道が写っている。
彼は写真を覗き込んだ。
「何かある?」
「右端」
彼女が写真の端を指差した。
小さく、人影が写っている。
顔は見えない。
ただ、手元に何かを持っている。
「……これ」
彼の表情が変わった。
「箱じゃない?」
写真を拡大する。
確かに、小さな四角いものに見える。
けれど、それだけではない。
その人物の手首に、青いものが見えていた。
「青いリボン……」
彼女が呟く。
二人は顔を見合わせた。
あのキーホルダーと同じ色。
今まで何度も見てきたものだった。
「じゃあ、この人が……」
「分からない」
彼はすぐに答えた。
「でも、事故の日にもいた可能性はある」
写真をもう一度見る。
人影は、二人から少し離れた場所に立っている。
まるで、二人を見ているようにも見えた。
「この人、ずっと私たちを見てたのかな」
「……それなら、箱のことも知ってる」
彼はそう言った。
その瞬間、スマホが震えた。
また、知らない番号からだった。
『写真を見つけた?』
彼女が画面を見せる。
彼は少し迷ってから返信した。
『この人は誰?』
しばらく既読もつかなかった。
やがて返信が届く。
『まだ、分からない?』
「……」
彼は画面を見つめる。
続けて届いた。
『その人は、事故の前から君たちを知っていた』
彼女が息を呑んだ。
「私たちを……?」
『そして、事故の日にも会っている』
彼の胸がざわついた。
「じゃあ、どうして俺は覚えてないんだ」
その問いに対する返信は、すぐには来なかった。
数分後。
たった一言だけ届いた。
『忘れたから』
彼はその文字を見つめた。
事故によって失った記憶。
それだけだと思っていた。
でも、もし違うなら。
自分が忘れたのは、事故そのものだけではない。
誰かとの約束。
箱。
そして、その人物の存在まで。
彼女が写真を見つめながら言った。
「……もう少し調べよう」
「うん」
二人は写真をもう一度確認した。
すると、彼女が突然手を止めた。
「待って」
「どうした?」
「この人の後ろ」
写真の建物。
そこに、小さな看板が写っていた。
古い文字で書かれた店名。
「これ……今の建物と同じじゃない?」
彼は写真と、先ほど撮った建物の写真を並べた。
間違いない。
同じ場所だった。
そして、その看板の下には――
小さな矢印が残されていた。
矢印の先は、建物の裏側。
「……行ってみよう」
二人は写真をしまった。
今度は、何かを探すためではない。
あの日、自分たちのそばにいた
「もう一人」を知るために。
二人は建物の裏へ向かった。
まだ、その人物の顔は見えない。
名前も分からない。
ただ一つ確かなのは――
その人が、事故の日を知っているということだった。