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〜仲杜視点〜
僕は東京から宮城に来た。今は初夏だから少し蒸し暑いはずなのに宮城は涼しい。最高。
東京の前は宮城にいたし実際今住んでる家に住んでた。家は山の中だから学校まで自転車で30分ぐらいかかるけどその分小学校の知り合いとかはこの学校にいないし少し気楽だ。
クラスの人たちは面白い人が多い感じ。先生は静かな真面目さんって感じがするから当たりクラスなんだろう。馴染めるかどうかは置いといて。
んで、問題は部活なんだよね。
前の高校ではバレー部だった。というかバレーは7年ぐらいしてるからここでもバレー部に入るべきなんだろう。でも放課後の時間は少しでも多い方がいい。だから正直部活はもう入らなくても良いかなとも思う。
…でもバレーは僕にとって特別なものだ。バレーがあったから友達とか兄ちゃんと仲良くなれた訳だし。それもあって続けたいと思う。まだずっとやっていたいし、そんなバレーを毎日できるのはとても嬉しいことだ。
「きみ、どうしたの?」
急に声がしてびっくりした。その方向にはとても綺麗な人がいて、重そうなドリンクをたくさん持って体育館に向かう通路に立っていた。多分マネージャーさんなのだろう。でも人がいるとか思ってなかったしまさか話しかけられるだなんて!?という感じなので返事につまる。
「あの、えと…バレー部、入れますか。」
言っちゃった。まだ悩んでるのにー…。
「問題ないと思うけど…今の時期から入部?珍しいね?」
「あ…今日転校してきたので。」
「あー、なるほどね。チョット待ってて!先生呼んでみるから。」
あ、この人すごくいい人だ。今の時期だと期末前だ。部活も一時期休みになるから、入部だなんて聞いても部活が大詰めの中こうやって受け付けてくれる人は割と少ないんじゃなかろうか。
あー、宮城でもやっぱ暑い。ここの体操服分厚いんだよな。なんで長袖着てんだよ僕。立ってるだけでちょっと汗かいた。
そんなことを考えていると体育館に行っていたマネージャーさんが出てきた。ちょいちょいっと手招きをしているので多分許可が出たのだろう。いよいよだ。僕はごくりと唾を飲み込む。怖い人たちじゃ無いといいな。そう思いながら体育館に入った。
「君が入部を希望してる人?」
短髪の眼鏡といういかにも優しいの具現化という感じの人がきいてくる。この人が顧問の…武田先生?って言ってたっけな。バレー部にいると感覚が麻痺するせいもあるだろうが少し小さめに見える。
「あ、はい…」
この「あ」っていうか癖やめよ。どもっちゃって恥ずかしい。
「入部届けとかってある?」
え、好き。優しい。何このバレー部いい人ばっかりじゃん。絶対入ろう。確か入部届はバックの底の底にあった気がする…
そうして少しくちゃくちゃな入部届を武田先生に渡した。武田先生が入部届を見ている間少しだけ部活の中身を見てみる。あ、マネージャーさん2人いるっぽい。さっきの綺麗な人とちっちゃい子。お母さんと娘って感じで微笑ましい…。
ドコッッッ…
え…何今の。黒髪の人とオレンジ髪の人…速攻?早すぎる。なにあれ。っていうかオレンジさん今斜めに跳んでたし、黒髪さんはそれを見越したトスだった。すごい…三年生とかかな?信頼関係というか、只者じゃ無い感がすごい。
「よし、仲杜さんね。よろしく!この部活は女子はマネージャーなんだけど、大丈夫?」
武田先生に聞かれる。…多分女子だと思われてる。そらそうか、学ランじゃ無いし、髪も女子並みに長いから。ってことは僕可愛いってことじゃん。よかったよかった。
「あの、僕男です。選手としてプレーしたくて」
この言葉に先生やマネージャーさんたちも目を丸くする。
「あ、そうなの!?ごめんね!あんまり可愛いものだから僕てっきり女の子かと!」
「慣れてるので大丈夫です。それに女の子みたいって言われるのは嫌じゃないので。」
そう。すっごい何回も言われるほど僕は女子っぽい。っていうか女子っぽくしてる。だって女の子って可愛いじゃん??やっぱ役得ってもんがあるよな。
「んじゃ、とりあえず入部に関しては問題なし!今みんな集めるから、その時ちょっとだけ自己紹介してくれると助かるな。ほら、ポジションとか!」
え自己紹介まじ?やんなきゃダメなやつ?当たり前か。僕も誰1人知らない…し…、あれ。あの白髪の人…こうちゃん、かな?いや…さすがに違うよね。だってこうちゃん前に入院しちゃったし、バレー続けられてるはずない。
「でも…そうだったら。」
元気そうで良かった。としか言えない。これ以上はゆうべきじゃない。とにかく今は自己紹介だ。
「えー、皆さんにお話があります!」
「先ほど入部した新入部員の仲杜さんです!では、自己紹介をよろしくお願いします!」
はっや。そんなスパン良く僕に任せるの?思ったより放任主義なのかなこの人。
「え、えと1年1組の仲杜明希です。身長は156で、ポジションはリベロです。今日転校してきて、前は東京の学校に行ってました。」
こんなもんでいいでしょ。リベロだし到達点とか得意技的なの言わなくていいし。
「お、お前もリベロか!!やっぱかっこいいからか!?それとも身長で選んだのか?」
誰…えほんとにだれ。頭つんつんしてるし前髪黄色…この学校って髪染めいいの??
にしても…リベロの理由か。なんとなくだったな。セッター以外のどこでも良かった。僕がバレーを始めた理由はこうちゃんだった。こうちゃんはセッターだったから、一緒にやるには他のポジションになる必要があった。割とそれだけだったけど…こうちゃんが言ってたこと、結構好きだったな。
「…リベロがボールを綺麗に上げさえすればそのボールは必ずセッターがボールをセットしてくれるんです。そしたらきっとスパイカーが点をとってくれる。リベロが上げるだけで、です。リベロがいる限り点は取られないし、点は取り続けることができる。これって凄いことなんだって…小学生の時の友達に言われたんです。」
今考えたら、凄いことを教えてくれたなって思う。この言葉がなかったら多分僕が引っ越してからもバレーを続けるなんてことはなかった。
「ちょっとよくわかんなかったッスけど!俺とか影山が入部した時に月島たちと試合したじゃないっすか!あれ仲杜はしなくていいんすか?」
オレンジ髪の人だ。敬語で話してる感じ、2年か1年だったのかな。それなら…黒髪の人もそのぐらいなんだろう。それなら尚更凄い。
「そうだな…どうする?今回も前とおんなじ感じで3:3でするか?」
…主将さんかな。体の鍛え方というか、そういうのが違う。凄い努力してきた人、というようなオーラがする。
「今回は4:4でしてみね?だって仲杜リベロだし。3:3は流石にきついべ?」
こうちゃん似の人。やっぱり年的にはこうちゃんと一緒だ。やっぱり…
「そうだね〜、チーム分けは…」
ひげ…ひげだ。
Aチーム
西谷 日向 影山 山口
Bチーム
仲杜 月島 田中 菅原
「こんなんでいいんじゃない?」
ひげさん。優しい声だった。思ってたのと違う…
「一年は全員入れるとして、俺が仲杜と一緒でいいのか?影山とかと合わせてみるべきなんじゃねーの?」
一緒なんだ。名前は多分…見た目的には菅原ーって感じの見た目だ。菅原さんでいいか。
「旭にしては結構いいんじゃないか?影山はセッターとして有能すぎるから、仲杜の実力を見るならスガがちょうどいい。それに田中なら攻撃とかも合わせやすいだろうからな。」
「ちょっと俺にしてはって何さ!?」
ひげさんファイト…。
試合が始まった。とりあえず名前だけ覚えた。
向こうにはさっきの速攻2人、日向くんと影山くんがいる。そして元気なリベロの西谷さん。のやっさんというあだ名からして元気の塊。そしてサーブの山口くん。
こっちには最長身の月島くんと2年エースの田中さん。そして例の菅原さん。なんかスガさんって言われてるみたいだからスガさんって呼ぼう。
最初は影山くんのサーブ。スガさんが言うには1年で一番才能持ちなのは影山だそうだ。スタメンも取られたって。そんなやつのサーブどんなもんだろう。
ギュキュッ、ドンッ…!
ボールがこっちに向かって飛んでくる。すごい曲がり方だ。僕を狙ってくるあたり負けず嫌いだ。でもね、影山くん。僕が今まで取ってきたサーバはこんなもんじゃ無いんだよね。
トッッ
うん。上出来。いい感じにAパスになった。スガさんのフォーム的には田中さんに上がるだろう。ブロックくるかもしれないから一応その後ろには待機する。
ダンッッ!!
田中さんのスパイクの威力は凄い。日向は速さ重視でそれはそれで圧倒されたけど、田中さんはまだ2年だという。来年が怖い。
…みんなの視線がおかしい。さっきまで応援してくれていた主将さんや縁下さんの声も止まってるし、みんなこっちを見ている。もしかしてのやっさんより下手だっただろうか。
「…すみません、ちょっと短かったですかね。」
「いや…、いやいやいやいや、何今のレシーブ。王様のサーブ一発で綺麗にあげれるのおかしいでしょ。」
「そーだぞ!今の俺ならぜっっっ対にあげれねぇわ!」
「…今年の一年どうなってんだべ???」
…思ってた反応と違う。責められるかと思った。いや自分でも相当手応えはあったけどあんな雰囲気怖く無い方がおかしい。
「それなら良かったです。」
少しやりづらい。まだ様子見だからなんだろうけど、こう…観察されてるって感じだ。ま、勝てればいいか。勝てれば僕はもっと上手になれるはずだし。
試合が終わった。僕たちが勝ったけれど、こちら側から見た2人の速攻はすごかった。それにどれだけ打たせてものやっさんはたくさん拾う。で、僕も結構拾う。凄い耐久戦だった。疲れた。
「お疲れ。レシーブ上手だったね。凄いよ。はい、タオル。」
「あ、ありがとうございます。」
フカフカのタオルを渡される。やばい。体力ないから足がマジで動かない。そう思って体育館の隅に行く。そんでタオルを頭に掛ける。前先輩に「温泉上がりかよー!」って言われたけど別に気に入ってるし落ち着くからいいや。
そんなことを思いつつドリンクを飲んでいたら目の前に山口がしゃがみ込んできた。
「す、凄いね仲杜さん!小さい頃からバレーしてたりしたの?」
「小さい頃は…さっき言った友達がね、バレーうまかったから少しだけ一緒に遊んだりしてただけだよ。10歳ぐらいからは東京の親戚の兄ちゃんもバレー凄く上手だったから一緒のクラブとか部活とか入ってたよ。」
「10歳から?それより前はそのお兄さんとはバレーしてなかったの?」
「…元々はこの辺に住んでたんだよ、僕。でもその時ぐらいに東京に引っ越したんだ。それからその兄ちゃんと暮らし始めたから、正直それ以前は存在すら知らなかったかな。…それじゃ、僕帰るね。家のことしなきゃだし。」
そう。僕は忙しいんだ。今僕の家はすごく…すごく汚い。お母さんどれだけ掃除とかしてなかったんだって感じでさ。まだ6時30分ぐらい。今から帰って7時。そっから宿題とか色々して掃除して…急ごう。どんどん寒くなっちゃう。
そう思い先輩たちに一礼してから体育館を出る。
そのあと体育館が少しガヤガヤしていたし、色々聞こえてたがもう聞いてないことにした。めんどくさいし。
そうして僕は自転車に乗り、薄暗くなった山道を登る。あ、そういえば朝練ってあるんだろうか。まぁ…七時にきたら間に合うでしょ。
そうして僕の部活生活が始まった。