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「ただ…勢いでここまで来てしまったので、どのような石かわからない。ジル殿、すまないが調べてもらえるだろうか」
俺は青い石を握りしめて聞く。
そうなのだ。フィル様を助けたい一心でイヴァルからここまで走り抜けてきた。デネスに着けば何とかなるという軽い気持ちもあった。常に準備を怠らない俺が、とんだ失態だ。俺という人間は、フィル様が絡むと途端に|腑抜《ふぬ》けになる。フィル様の尊さが、俺を常人以下にしてしまう。
ジルは「任せろ」と胸を叩いて出て行った。
ゼノと二人で残された部屋が|静寂《せいじゃく》に包まれる。しばらく無言で、俺とゼノは通行証の石を眺めていた。
その日の暗くなる前に、山の|麓《ふもと》に着いた。
先に着いていたジルが、祖父の所有している家だと言って、石造りのきれいな建物に案内してくれた。国内のあちらこちらに、こういう建物を所有しているらしい。かなり裕福なのだなと俺が聞くと、商売が上手なんだと笑った。
親族が集まれるよう作られたのだろう。三人で泊まるには十分な広さだ。
外で食事を済ませていた俺達は、各部屋に入って身体の汚れを落とすと、一番広い部屋に集まった。
長方形の机の三辺にそれぞれが座ると、俺とゼノに挟まれたジルが、机の上に紙を広げた。
「これが探している鉱石か」
「そうだ」
俺は少し身を乗り出して紙に描かれた石を見た。金なのか銀なのか、よくわからない不思議な色に見える。
ゼノも同じように思ったらしく、ジルに向けて首を傾けた。
「変わった石だな…金…いや、銀?」
「不思議だけどきれいな色だろ。見方によっては金にも銀にも、そして日に透かせばガラス玉のようにも見えるらしい。薬としてはかなり貴重なものだ。そしてこの見た目から、宝石としても一級品だそうだ」
「なるほど」
ゼノが深く頷く。
俺も頷き目を閉じる。
そのような貴重な石を、果たして他国の者が手に入れることができるのか。入山の許可証はもらったが、俺たちが石を見つけた時点で殺して石を取り上げるのではないか。
悪い考えが胸の中に湧き上がる。しかしここまで来たのだ。フィル様が元気になられるなら、俺は何だってする。殺されそうになったら、意地でも逃げ切ってやる。
俺はもう一度頷くと、ジルに聞く。
「かなり貴重な石ということは、見つけるのも難しそうだな。どのような場所にあるかわかるのか?」
「わかる。普通の人には難しいだろうが、俺には秘策がある」
ニヤリと笑うジルに、ゼノが「秘策?」と訝しげな顔を向ける。
俺は早く見つけることができるなら何でもいいと、再び紙に目を落とした。