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いいか、これが一通り
他の孤児院となんの変わりもない1日の生活と孤児院の話だ
ここからはお前が行く孤児院の話だ
さっきも言ったが
孤児院には職員的な立場の人間が数人存在している
そして、お前よりも前に孤児院に入った人たちだ
これは大体話せる言語ごとに分けられるが1・2週間もすればここの言語に慣れてどんな人とでも会話ができるようになる
だから孤児院ではこの国の言語が当たり前だ
最初は苦労するかもしれないけど徐々に慣れるはず
これが前提でお前の言語と孤児院についてはもう少し話しておかなければいけない
お前が話せる言語を習得している人は少ない
それでも数人いる孤児院に入れるようにはできたが…..
….
……遠回りに言おうとしてます?
何があるんですか
同じ話をぐるぐると繰り返すので思わず口を開いた
….
お前が行く孤児院には”やつ”がいる
職員側ではない
保護対象として入れた側の人間だ
秀才で頭がいいが
制御する気がないのかなんなのか….
….まぁ職員全員が手を焼いているのが現状だ
手が出る人ですか
そうだ
沈黙が続いた
何歳なんだろう
どんな人なんだろう
秀才であるのに制御がないって
手が出る人って
どんなふうに周りから見られてきたのだろう
まあそういう奴がいるんだ
孤児院では特別1日1人部屋が当たり前
保護の対象ではあるから好き勝手出れるようにはなってる
….そいつに手を出されたやつは多いが大体すぐに職員が止めに入って大事には至らない
同じ棟になった時には関わる確率は増すから危険度も上がる
そいつの見た目は特徴的だから
伝えておこうと思ってな
目が綺麗だと
思った
ふらりと近づく彼の表情が
はっと変わった
眉間に皺を寄せた彼が俺に近づきつつ口を開いた
お前
え
やっぱりそうだ
もしかして年も俺と近いのか?
“秀才であるのに制御がない”
『そんなはずがない』
うん
君も、小さいね
うるせえよまた殴られたいのか
いやだよ
俺は会話ができる人がいて嬉しいだけだから
……
彼は俺の顔をまじまじと見て口を開いた
Lass dich hier auf keinen Fall verschlingen
ねぇ、シャークんって言うんでしょ?
そうだよ
君、すごく頭がいいでしょう
そんな顔で見るなって…
そのせいで苦労することも多いんだよ
どこ出身なの?
君は小さいけど俺と違うでしょ
あぁあぁ
小せえ小せえって
お前一言余計なやつだな
俺はお前の国から見た南にある国の出身
元は政治的軍事介入による孤児だよ
どうやってここにきたの?
軍事介入に裏から手を引いていた奴らが国の端にいた俺を変に拾ってこの近くに捨てたんだよ
ふーん
年齢は?
お前聞いてばっかだな…
年齢は19
今年20の年だけどな
お〜
本当に近いんだね、年
俺今年19なんだよ
ふーんそっか
お前、名前ないだろまだ
ないよ
元の名前は?
言えないよ?
w
流石に話は聞いてきてるか
本名の開示はしない国なんでしょうすごく面白いじゃん
お前も機会があればすぐだろうな
ねぇ、あの子おかしいよ
なんであんなのと仲良くしてるんだ
似たもの同士仲がいいんだろ
あいつも手が出るんじゃあない
あいつ東からだってよ
うわどうりでだね
おい、部屋行くぞ
肩を叩かれ目を開き後ろを振り返る
緑髪の彼が俺をまっすぐ見ている
うん
俺らとそれと数人にしかわからない言語
安心感は大きかったと思う
なぁ
部屋に入ってマフラーをほどきつつ彼が言った
お前もう聞き取れてるだろ十分に
かもねぇ
なんなら日常会話くらい余裕なんじゃないか
ふふ〜
かもしれないね
お前まだふわふわしてんなあ…
それが素なの?
そう言った彼は俺の前髪を掴んで顔を覗き込んでくる
数秒経って
気が済んだのか
はらりと数本俺の髪が床に落ち彼が離れる
むかつかないのか?
あんなんひと殴りすれば
しなくていいって
言ってるでしょ
それにシャークんが俺を受け入れてくれてるじゃんか
俺は口が悪くても心が綺麗な人と一緒にいるよ
そう目を見て行っても彼の言葉は返ってこなかった
孤児院に入って1週間と数日が経っていた
今日で2週間が経つね
そう俺に言ったその人は立ち上がる
だいぶ慣れたんじゃない?
はい
誰とでも会話できると思いますよ
ここまで呑み込み早い子も久しぶりだったからこっちも力を入れすぎたかもしれないね
わかんないことは今まで通り聞いてくれればそれでいいから
今日でこの勉強の時間は終わりにしようかなと思ってる
それでいい?
はい、ありがとうございました
そう言って俺は部屋を出た
ねぇ、何を読んでるの
ねえ外に出て遊ぼうよ
寒いけど着込めば大丈夫だよ
俺に君の言語を教えてよ
お前そう言って俺の時すぐに飽きてただろ
俺と一緒に楽器をやらない
2週間経って自然と人と人との間の分厚い壁は消えた気がする
ただ俺が馴染めることはなくいつも不特定多数の人と遊び固定的な友達になることはできない
おい
肩を叩かれる
振り返れば
ほら
シャークん
部屋行くぞ
もう?
あの2人、部屋で何してるんだろうね
初めてだよね
あいつと同室
でも最初はあいつも1人部屋だったよな
なんであんな奴の部屋に入り浸ってるんだろうね
わからないね
耳につくひどい言葉は徐々になくなっているようにも感じる
お前、今日棟に戻ってくるの早かったな
うん
もう授業は終わりだって
あぁそういうこと
俺もこっちの言語で話した方がいいか?
いや、シャーくんは変えなくていいよ
ふーんわかった
ねぇ今日もやらせてくれるの?
そのために呼んでるも当然なんだから
やろうぜ
シャークんの部屋は他の部屋と少し違う
多分長い間ここにいることが決められているからだ
シャークんがごそごそとテレビ裏を探る
引っ張り出したのは“ゲーム機”
最初見た時には仕組みがわからないことを理由にぐっちゃぐちゃになった
が、今では俺も大好きな遊び
ほら、そんなとこで突っ立ってないで早くこっちこいよ
そう手招きされて
シャークんが座るソファに近づいた
生産年齢と言われる年齢を超える人は皆午前中に軽い勉強をする
基本的なことばかりであまり楽しくはない時間だった
この国に来てから3週間と少し
その日は日が登るのが遅くて朝起きた時に違和感を感じた
横に眠るシャークんから布団を剥ぎ取り畳む
あ”あ….
さ”む”……….
起きて、時間だよ
わかってるって…
こいつはひどく寝起きが悪い
無理やり起こそうと近づけば殴られもするから
声をかけるだけにした
なんかてんきわるい…?
かもね
よく見えないけど
小さい窓から入る光は常にごくわずか
それにしても暗い外を2人は重たい瞼をあげて見ていた
朝ごはんを皆と食べている時だった
静寂に食べるのが決まりのここの朝ごはんで
突如遠くで敷地の重い扉が開く音がする
皆がぴくりと反応した
でも口は開かない
黙々と教えられた姿勢で順で食べている
もっと歳の小さい子達の部屋からは声が聞こえる
何を話しているのかはわからない
少し視線を変えればシャーくんの表情
特にいつもと変わった様子はない
それでも俺は今日が何か違う日なのだと思っていた
食べ終わった後はいつも通り全体行動の棟に入れられる
俺の後にもこの孤児院に入ってきた人は数十名
それもあって最近ではここが窮屈に感じて仕方がない
なあ
顔を覗き込んできたシャークんはいう
お前多分名前をもらえるぞ
今日
あ、本当に?
1ヶ月に1回くらいお国の人が来るそうだ
俺をここに送ってくれた幹部よりも一個位の低い人
そのとき、名前を預かる
それだけだと聞いている
そんなことのためにわざわざ孤児院まで足を運ぶのも何があってなんだと少し思ってしまう
ただ名前がない期間が長かった俺は
呼ばれることも少なく孤立する時間も少なくなかったからすこしわくわくしている
シャークんはいつものようにお気に入りの“もの”を出癖のようにいじっている
そのとき、最年長の女の子が部屋の外から名前を呼ばれる
その声は知らない人のもの
始まったな
シャークんがそう言い面倒くさそうな顔をしている
でもあの人は名があるよね
そうだな
ただこの行動の意味を悟られないようにするために全員に行うだけだと思うぞ
俺は名前付けられる以外の時は適当な雑談だけだったしな
というかどちらかといえば説教
いつも通りじゃん
そう笑みをこぼせばシャークんの眉間に皺がよる
うるさ
お前もすぐだと思うよ
きっと俺の後とかじゃないか?
ふーん
ま、いつでもいいや
変なとこ無関心だよな、お前
もうシャークんにお前って呼ばれないね
それはどうだろな
シャークんは人が出ていく部屋の出入り口を静かにみていた
『◯⚪︎◯◯◯』
呼ばれたな
じゃ行ってくる
うん
そう見送り出す
彼が見えなくなってから部屋を一周見渡す
呼ばれた人は帰ってきていない
小さい子たちがこの機にと走り回っている
角で本を読んでいる子もいる
皆自分よりも小さい子
俺はここでの暮らしが始まってから体重が増え、この年齢にして身長が伸びた
シャークんを追い抜かしたが筋肉量ではとんとん
物運びも特段うまくいかない
ここからは外の暮らしが見えない
あの国のような働く環境が
このような体格を手にして働いていないのはあちらじゃとんでもない
この体格ならあの重みにも楽勝なのに
1人だとどうしてもあの国のことを、断片的な記憶を、思い出してしまう
ただ、いくら思い出そうとしても思い出せないあの国境の間での出来事
どうやって俺はこちらにきて
『東の国の名のなき者』
…丁寧な発音だと思った
子供のような舌ったらずでも
訛りが混じるわけでもない
俺はある日に買ってもらった本を大切に抱えて立ち上がった
俺の番だ