「翔ちゃん、翔ちゃん、僕のお姫様」
そう言って、涼太は笑う。
翔太の頭にはシロツメクサで作った花の冠。手先の器用な涼太があっという間に編んでくれた。妹にせがまれてよく作るから、こんなの簡単だよと、はにかんで笑う。
「ありがと///」
白く柔らかい頬を赤く染めた翔太は、俯いてぎゅっと涼太の園服を掴んだ。
出会った時から恥ずかしがり屋の翔太。
嬉しい時も、泣きたい時も、素直になれなくて何も言えずに涼太に抱き着く。
そんなふうに抱き着かれるたびに、涼太の中に翔太への『好き』が溜まっていく。
いつのまにかそれは、涼太の小さな胸をぱんぱんにしていて…涼太の中の『愛しい』は、溢れて、弾けて、こぼれていくようだ。
「ねぇ、しょうらい、僕と、ケッコンしよ?」
「ケッコン?」
オトナたちがよく言うんだ。
ケッコンは、大好きが溢れたふたりが、ずっとずっと一緒にいるために結ぶ約束なんだって。
ほら、小指出して?
ゆびきりげんまんだよ…?
「わかった。翔ちゃん、ずっと涼ちゃんと一緒にいる」
「ちゅーしていい?」
「うん///」
満開のシロツメクサが咲いた広い広い原っぱで、涼太と翔太はどきどきしながら、ちいさな唇を重ねた…。
初めての感触。
柔らかくて、あたたかな感触。
ふたりはどちらかともなく抱き合って、ころころと草むらに転がった。
小さなふたりが緑の絨毯にふんわりと包まれて、そのまま青く澄んだ空を見上げる。
………気持ちいいねと笑っていると、遠くでふたりを呼ぶ声がする。
『翔ちゃーーーーん』
『涼ちゃーーーーん』
くすくすと笑うふたり。
ーーしばらくここに隠れていようか?
息を潜めてくすくすくすくす。
お互いにぷっくりとした柔らかいほっぺを、優しくさすったり、時には優しくつねったりしていると、見つかった翔太が先生に抱き上げられた。 涼太もつられて起き上がる。
「こら。そろそろ帰りますよ」
「「はぁい」」
「本当に仲良しね」
「「うんっ」」
少し小柄な翔太を抱っこして、抱っこされるのがあんまり好きじゃない涼太とは手を繋いで、園長先生はなんのお話をしていたの?とニコニコと聞く。
翔太が答えようとする前に、涼太がないしょ!と慌てて言った。
その様子がなんだかとっても可愛くって、先生はつい笑ってしまう。
「しーっ。翔太、内緒だよ」
「うん、涼太。でも約束だよね?」
翔太は、園長先生の腕の中から下りて、涼太とぎゅっと手を繋いだ。先生、翔太、涼太で仲良く手を繋ぐ。大好きなふたりに囲まれてご機嫌な翔太。
バスではゆり組のお友達が待っている。
最後のふたりを乗せて、バスはゆっくりと走り出す。楽しかった春の遠足ももう終わり。心地よく揺れるバスの中、手を繋いで寄り添う、双子の天使のように仲良しのふたりが、微笑ましく眠っていた。
コメント
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これって続き、ありますか?
えぇ良すぎん🥹🥹❤️💙 可愛すぎるーーー🤦🏻♀️🤦🏻♀️🤦🏻♀️🤦🏻♀️