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にま

2,309
しゃけ
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19
GB「……ッ?」
明るすぎる天井で目が覚める。時刻は午前2時。
起き上がると、見慣れない部屋がそこにはあった。
綺麗に整頓された本棚に、アンティークな置物。
化粧台に置かれたランプは淡く光っている。
誰の部屋だろうか。見当がつかない。
全く見たことのない…はずの部屋。
でもどこか、懐かしい感じがする。
GB「変な人じゃなきゃいいですが……」
??「誰が変だって?」
GB「ひゃっ!?」
急な声に肩が跳ねた。でも聞き覚えのある声。
私より落ち着いている、少し大人びた温かい声。
懐かしさの正体は____正しかったようだ。
IE「まったく…何道端で倒れてんの」
美しい翠玉の目を持つアイルランドが、そこにはいた。
かつて私が植民地として抑えていた国。
その傷がきっと一番癒えていない国。
IE「仕方ないから助けたけど、イギリス、お前……」
GB「…あはは、」
相手がアイルランドだと分かった瞬間、英国紳士としての笑みを作る。
嘘でも何でも相手を騙せれば、私を健康に見せられればそれでいい。
GB「すみませんね。迷惑かけたでしょう?」
終末旅行なんて死んでもバレてはいけない。
GB「わざわざ嫌いな国なんて放置すればよかったのに____」
どうして助けたんですか。どうして私なんかを助けたんですか。
一番憎んでいるであろう国のこと。見捨てればよかったのに。
IE「別に。嫌いじゃないよ」
GB「へ?」
IE「お前のこと、嫌いじゃないって」
私と同じくらいの身長の彼。目線が自然とあった。
その目の奥にあるものを、私はもう見透かせない。
自分が嘘を重ねすぎたせいで、他国のことも信じられない。
GB「…過去の過ちは消えませんから、ね?」
私は特にそうだ。どんな国の中でも群を抜いて過ちの数が多い。
私がでしゃばらなければ、平和な世だった。
WW1もWW2も起こらなかった。
アメリカに迷惑をかけなかった。
フランスにも迷惑をかけなかった。
戦争犠牲者を減らせた。
産業革命で人が死ぬこともなかった。
社会主義も生まれなかった。
だから、だから。
全部、私のせいなんだ。
GB「…早く、外へ出してくれませんか」
絞り出した声はなぜか掠れていた。
自分でも不思議だった。早く出たいはずなのに。
それを見兼ねて彼が言う。
IE「外出たいなら勝手に出ていいけど…。今の状態で大丈夫なの?」
彼の目線が体に落ちる。そして私の肩へ手を伸ばした。
少し大きくて、暖かい手は心地がいい。
頭を撫でられたことない私にとっては、少なからず。
殴られないだけでもそれは「暖かい手」なのだ。
IE「…体、滅茶苦茶震えてるけど」
GB「……ぇ」
それは初耳だった。自分の体の状態なんて知らない。知る由なんてない。
IE「”体調管理も自己責任”」
過去に私が放った言葉。面倒だからとその後結局適当な治療で済ました。
今思えば最低で最悪だ。恨まれても文句は言えないのも当たり前。
そうだ、今の私も自己責任、治療してもらう権利も義務もない________
だからこそやっぱり早く、居なくならなくちゃ_____、
IE「…と言いたいところだけど、今の状態を見るにそうとも言えないな」
GB「いえ、お気になさらず____」
すぐに英国紳士スマイルを作る。
IE「うっさい。いいから早く寝ろ。隈酷い」
……通用しなかった。
GB「へぁ…、は、はい…(?)」
怒っているような口調のアイルランド。少しだけその表情が硬かった。
なぜ彼は私に此処までするのだろうか。
GB「…(狸寝入りでごまかしましょう)」
IE「狸寝入りすんなよー」
なんでわかるんですか此奴
GB「……寝れないんですからしょうがないでしょう」
そういうとアイルランドの顔が少し怖くなった。こちらを冷たい目で見てくる。
その目が少しだけ、お父様に似ていた。
体がこわばる。
IE「…寝れてないなら俺の独り言でも聞いてくれ」
そう言いまたどこか遠くを見つめる目をした。疲れているような、寂しい故のような。
IE「イギリス、お前に植民地支配されてからずっと____距離が近くに居た。正直恨んでたし、嫌いだったよ。」
GB「……」
当たり前だ。ジャガイモ飢饉と言い酷いことを沢山してきたのだから。
そんなの分かっている。承知の上。だから泊まりたくなかったのに_____
IE「でもさ、お前の無理してるみたいな目を見るたびになんか…罪悪感っていうか」
IE「それと同時に…優しいお前の性格の根本に…惹かれたっていうか」
GB「……私に?」
あまりの衝撃につい口を開いてしまった。私はあんなに酷いことをしたのに?
IE「…ようするに叶わないのは分かってるけど…好きだったんだ、イギリス、お前のこと」
GB「………ありがとうございます。受け取れなくて申し訳ないですね」
好意を裏切ってしまったことが申し訳ない。
IE「いいや、俺こそごめん」
IE「でも……フライギ…いいよな(ボソッ)」
GB「へ?」
上手く聞き取れなかった。なんか大事なことを言ったような…
IE「なんでもない、ほら早く寝ろ」
IE「寝込み襲うほど俺は変態じゃないしな」
GB「なッ…⁉///」
そんな会話をしたからだろうか。体からはすっかり力が抜けていた。
そのまま、ゆっくりと___安らかに眠りへと落ちていく。
体は自然と布団に包み込まれていった。
GB「んぅ…」
IE「寝れたかい?一応俺も隣で寝てたんだけど」
GB「ええ、ある程度は…ッ」
こんどは笑えなかった。嫌、笑う必要を感じなかったのほうが近いだろうか。
荷物はアイルランドがまとめてくれていた。
キャリーケースが窓からの朝日に照らされている。
IE「本当はもっと泊まってほしいけど…、その感じを見るに無理だろうな」
GB「……、よくわかってるじゃないですか」
IE「まぁいいや、またな」
IE「何かあればいつでも此処に来いよ」
GB「ええ、ありがとうございます」
外に出ると、変わらず冷たいオスロの空気があった。
だいぶ回復した体調。このままの気持ちでどうか、無事に最期まで行けますように。
それだけを祈って観光名所へと歩き出した。
コメント
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わかる、フライギいいよな
フライギでツボってしまった…
読了しました。第7話、とても胸に響きました。 イギリスが「英国紳士スマイル」で必死に自分を隠すシーン、そしてアイルランドがその震えを見逃さず「寝ろ」とぶっきらぼうに言う流れが、二人の関係性をよく表していて好きです。それでいて「フライギ…いいよな」の呟きが最後にさらっと入ってくる構成、さりげないけど効いてますね。過去の植民地支配への罪悪感と、それでも向き合ってくれる相手への戸惑い——感情の描き方が丁寧で、設定の重みを感じました。